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ちょっとシリアス回です。
周りがほとんど見えない暗い森を抜けて、昨日の砂浜に出ると波の音と焚き火の音が聞こえた。
「あ、やっと来た~遅いよ~」
そして、昨日聞いた気の抜けた声が聞こえたのでそちらに顔を向けると焚き火の前に座っていた。
「全く~寒いんだよ~?」
「ん…ああ」
どうやら待たせてしまったようだ…そう思いながら俺も焚き火に近づいてPKの正面に座る。
「あ、座るんだ…」
「?…そりゃあ座った方が話しやすいだろ?」
「あ~……君って思ってたより天然なんだね?」
「?」
至って普通のことだと思うが…と首をかしげる。
「まあいいや~…とりあえず、自己紹介するね?
僕の名前はフリージア、君は?」
「ああ…俺の名前はベンだ…」
「なるほど…それで聞きたいことがあるんでしょ~?」
「ああ、昨日襲ってきただろ?
あれって誰から依頼を受けたんだ?」
そう言って真剣な顔で聞いてみる…。
「依頼?そんなの受けてないよ?」
「??なら、何で昨日襲ってきたんだよ」
「昨日はたまたま海辺を散歩してたら、たまたま君を見つけて、この前のリベンジ?みたいな感じで襲っただけだけど?」
「は?」
「そう言えば、昨日はここで何かあったの?」
「あ…いや……まあ…その~…」
「なんだよ~、はっきり言ってくれなきゃ伝わらないことがあるって言うだろ~?」
「いや、昨日ここで果たし状?を受け取ってここで戦う予定だったんだよ…」
「へ~…と言うことは最後に飛んできた矢がその張本人?」
「お前じゃないなら、そうなんだろう…」
しかし、確証がないから実際こいつと同じでたまたま見つけたから…という線もあるから断定はできない。
「…ね……ねぇ……ねえってば!」
「ん?」
「僕の話聞いてる?」
「いや?全然聞いてないが?」
「む…じゃあちゃんと聞いてよ~」
そう言いながらいつの間にかPKが横まで来ていた。
「んああ、分かった、分かったから引っ付こうとするな。
……で、なんだよ」
「僕とフレンドになってよ」
………ファ?
フレンド?
「何でだよ?」
「いや~話すと長いよ~」
「……簡潔に頼む」
「りょうか~い…僕って、トップPKを目指していた時期はあっただけど、しっかり準備したにもかかわらず~最初の相手が~君だったんだよ~。
で~返り討ちに会った後~僕は思ったんだ。
『正直、僕ってPKに向いてないのかな~』って」
「そうだな」
「む~また即答して~僕の心は繊細なんだよ?
まあ、話を続けるけど…その後準備した装備のお陰でソロだけどそこそこ攻略して、色々とあってこのイベントに参加できたんだけど……」
急に言葉が詰まりしおらしい顔になる…。
「どうした?」
「…少し話を戻すけど…君を襲ったあの日…実はPKKに見られてたんだ…それで更にこのイベントで最初に船に乗ったでしょう?
…それで……」
「……なるほど…そのPKKとばったり出会ったんだな…」
「…そういうこと…その後…というより…今の今までずっと1人で島の外周をうろうろしてたんだ…幸いスキルの"釣り"と持ってきていた釣竿のお陰で食べ物に困ることはないし、見通しが良いからPKや魔物から襲われることは無かったけど……」
「けど…どうしたんだよ」
「…その乗り合わせたPKKが他のPKKに知らせたせいでこのイベント中ずっとやられてたんだ…」
「………」
ずっと…つまりこの5日間襲われっぱなしか……。
…その光景を考えるだけで俺まで憂鬱になる…。
「それで…良かったら……」
「ああ、お前が言いたいことは大体分かった…フレンドになろう」
「ほ、本当!」
俺が言い終わると同時にさっきまでのしおらしい顔が消え、明るい声と表情が出た。
まあ断る理由もないし…それに…
「ああ、それにお前…フリージアが本当にPKじゃ無いならそれこそPKKに襲われないように、俺から何かしら言った方がいいと思うし…」
「やった~!ありがとう~!」
そう言うと俺の目の前にフレンド申請のインターフェースが出てきた…もちろん【OK】を押した。
「わ~い!」
「そんなにはしゃぐな……と言ってもしょうがないか…それより、これからどうするんだ?」
「う~ん……ここに居ても寒いだけだし~ベンのテントに泊まらせてよ~」
「俺のテント?あ~それは無理だな」
「何で~良いじゃん~」
「良かねぇよ…俺のテントは一応広いが俺の他に人が居て、そこそこ人見知り?だからな…」
「む~」
「と言うか一応まだ拠点に空きスペースがあるし、そこにテントをたてれば「ないよ」…は?」
「だから、テントなんか僕、持ってないよ?」
「マジか…」
「だから頼むよ~僕たち運命共同体でしょ~」
そう言いながらまた引っ付こうとしたのでするりと避けようとするが、速の値で負けているから引っ付かれた。
「速いな…」
「ふっふ~ん、一応、速にはかなり振ってるからね~」
「………まあいい…こんなこともあろうかとテントは予備に持ってるからそのテントで「本当!ありがとう!やっぱり持つべきものはフレンドだね!」……現金なやつめ…とりあえず拠点に帰って、一応リーダーにフリージアの事を話すが…良いか?」
「いいよ~」
「じゃあ帰るか…そろそろ寝ないとデバフが出そうだ…」
「りょうか~い♪」
拠点に戻るために来た道を戻る……。
・
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道中何事もなく、しっかりと拠点まで戻ってきた。
とりあえず、タイチョーさんを探そうと拠点の門をくぐろうとすると…。
「おや?こんな夜更けにどこに行っていたんだい?」
「あ、タイチョーさん、ちょうど良かった」
「?」
どうやら、タイチョーさんがたまたま門の近くで作業をしていて、たまたまこちらに気づいてくれた。
「実は…」
「ん?ベン君、そっちの少年は確かP…」
「わわ!タイチョーさん少し待って!」
「ふぐむまむなく…」
危なかった…タイチョーさんはリーダーだからそりゃ知っていると思っていたけど、他のプレイヤーに知られたら面倒だと思い、つい口を塞いでしまった。
「あ、すみません」
「ぷはぁ…急に口を塞がれると喋りにくくなるのは本当だったのか…それで何があったんだい?」
「それが……」
・
・
・
「…ということがありまして、今は一般プレイヤーなんですよ」
「なるほど……君…フリージア君、それは本当に本当のことかい?」
「は、はい!」
その返事を聞いたタイチョーさんは少しフリージアの顔を見つめた後ニコッと笑って。
「分かった、君を信じよう!」
「あ、ありがとう、ございます!」
その後、フリージア用のテントの設置の許可を貰い、さらにタイチョーさんからフリージアについてPKKに報告してくれた。
「何から何までありがとうございます」
「ありがとうございます!」
「はっはっは、これくらい当たり前のことだよ…それじゃあ」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみなさ~い」
タイチョーさんと別れて、たまたま俺のテントの前が空いていたのでオゾレスクさんの"空間収納"からテントと寝袋を出してもらって、テントを設置して…。
「これでよし…ついでに寝袋も持っていけ」
「本当~?何か悪いな~」
「そう思うなら、明日の朝の拠点防衛でも手伝ってくれ」
「ん?りょうか~い、じゃ、その時間になったら起こしてね~おやすみ~」
「あ…まあいいか……ふぁ~…俺も寝よ…」
自分のテントに戻って、オゾレスクさんと少し話して寝袋に入って…目を閉じて………。
いや~間違いだらけすぎて、改めて自分のIQの低さが分かる。
今回出てきたプレイヤー紹介
・フリージア(男性)
綺麗な白い髪のヒューム
武器は猛毒を仕込んだ短剣だったがPKKに折られて今はサバイバルナイフ
防具はローブのみ
変わった遊びが好きで、掲示板で極振りや悪役のPKというプレイを知って面白そうだからやってみただけ
ちなみに、フリージアは花言葉がキャラクターに合っていたから使っただけで、別に機動○士ガンダ○ 鉄○のオル○ェン○のEDで流れている曲を聴きながら~…とかではないので悪しからず。
遅くなってしまいすみません。
2つめの小説もそうですが、次も遅れます。
いつも色々ありがとうございます!