87
後編回です。
しばらく待っていると、クラマスと副マスがやって来た。
「ジュウザク、ガラタスお疲れ!」
「うっすクラマス」
「依頼通りに捕まえてきました…というか…」
「ああ、その辺りは聞いている。
…が、とにかく、ありがとう。
2人はもう休んでいてくれ」
「「分かりました」っす」
返事をして自分たちのテントに帰っていく。
この件に関して気になるが、これ以上起きているとデバフが出て来て明日の防衛に響くから仕方ない。
―タイチョー視点―
「それにしても多いな…」
「それだけ、仲間を増やしたいんだろう…。
2回目のクランイベントでの頭数を1人でも多くな…」
参謀のウラスが檻を見ながら呟く。
「まあ、どこもそれに備えて動いてはいるが…これは、やりすぎだな」
「ああ…」
「……にしても、捕まえたは良いがこれからどうする?」
「そうだな…いくつか案は出たが…」
「どれも、結局はクラン同士の争い事の火種になるな…」
"コロナ"の幹部の数人での話し合いでいくつか案は出た。
出たは良いがどれも1歩踏み外せば、争いになる。
争いになれば、いくら"戦闘系クラン"の俺達でも"Queen"のような大人数のクランを相手にしたら、勝ち目が少し…いやかなり少なくなる。
さらに、九尾はほとんどのプレイヤーから人気がある…下手に騒げばこちらがつぶれる…。
そして何より、この件に関わっているのは"Queen"だけじゃない…気がする。
そもそも、狙われていたベン君は"Queen"以外に"幻獣の休場"も目をつけられていた。
もし、争いになれば奴らは"Queen"に味方するかもしれない。
第1回クランイベントで3位をとっているクランと戦うことになれば、俺達は負ける…。
「……どうすれば…」
「あれ?タイチョーさん?」
「こんばんは~」
「ん?」
突然後ろから声が聞こえたので振り返ると、女の子が2人居た。
「ああ、こんばんは、リリーちゃんにシャイニーちゃん、もう防衛は終わったのかい?」
「はい!」
「もちろん!」
「そうか、それなら良かった」
「……!
……クラマス…彼女らに味方してもらえれば…」
ウラスが小声で話してきた…。
ウラスの言いたいことは何となく分かる。
この2人はベンと交流があり、リリーは攻略クラン"頂"、シャイニーは"エンジョイ"のクラマスで第1回クランイベントでも俺達のクランより上で1位と2位だ……。
「…頼んでみるか…2人とも、少し「な!ここはどこだ!」…起きたか」
タイミングの悪いことに隊長格のファブニールが起きて騒いでしまった。
このまま、騒がれたら厄介だ。
「?どうしたんですか?」
「ちょっと頼み事をしたいんだが、ウラス頼んだ、俺はとりあえず黙らしてくる。」
「ああ、分かった。
2人とも、こっちだ」
とりあえずウラスに2人の相手をしてもらって、俺は檻に近づいていく。
「おい!タイチョー!これはなんの真似だ!」
「何のって…そりゃあ、犯罪者を檻に入れるのは当然だろ?」
「な!ふざけるな!!」
ファブニールは背中に手を回すがなにもないことに気がついて、こちらを睨みながら。
「私の武器をどこにやった!!」
「こっちで預からせてもらっている。
とりあえず、黙ってくらないか?
他のプレイヤーは寝ているんだぞ?」
「ふざけるな!!こんなことをしてただで済むと思うなよ!!」
「それは、こちらの台詞だ…お前らこそ、初心者の勧誘…もといPKをして、ただで済むと思うなよ…今度は、きっちり証拠があんだからな」
「!…………」
「やっと黙ってくれたか…」
ファブニールが騒ぐのをやめたから、ウラス達の元に向かうと、ちょうどウラスが2人に話終わったようだ。
「…という事で今、捕まえているんだ」
「そうなんですか!?」
「お兄ちゃんを襲うなんて許せない!
今すぐにそのファブリーズを殴ってくる!」
「まあまあ、落ち着いてくれシャイニーちゃん」
「でも!」
「別に殴るなとは言わないが、今は抑えてくれ」
「む~……分かりました~……」
不服な顔をしているが分かってくれたようだ…。
「ですが、このままではないんですよね?」
「ああ…もちろん落とし前をつけさせるが…そのために協力して欲しいんだが…」
「「協力?」ですか?」
「ああ、実は…」
・
・
・
・
「なるほど…分かりました、クラマスに頼んでみます!」
「私もメンバーに話してみる!」
「ああ、お願いする……ウラス、掲示板の様子は?」
「思っていた通り、情報が流れていて騒いでいるようです」
ウラスの報告と同時にいくつかの足音が聞こえてきた。
そちらに顔を向けると、案の定、九尾とその護衛の何人かがこちらに向かって来た。
「タイチョーさん!これはどういうことですか!」
「見ての通り、九尾さんのクラメンに俺達の仲間が襲われたから返り討ちにして捕らえただけですが?」
「嘘を言わないでください!また冤罪で私達の邪魔をするんですか!」
「そう言われても、本当の事だ」
「九尾様!助けてください!!」
「九尾様!」「九尾様!!」「助けてください!」
…ッチ…九尾が来たことによって捕まえている奴らがまた騒ぎだした……前にベン君がいっていた通り面倒なことになったな……だが…。
「タイチョーさん!」
「誰がなんと言おうが、これは犯罪行為をした者への罰だ」
「ならば、私達の仲間はなにもしていません!」
「そうだ!」「俺達は何もやってない!」「さっさと出せ!」
「彼らもこう言っています!」
「………じゃあ、聞くがここまでどうやって来たか説明してみろ」
「それは……お、お前達が連れてきたんだろ!」
「なら、それを見たプレイヤーがいるはずだよな?
嘘じゃないのなら」
「それなら、門を防衛しているプレイヤーに聞けば分かりますよね?」
俺の言葉にウラスが合わせて言った。
それと同時にさっきまで防衛をしていたリリーちゃんとシャイニーちゃんが…。
「それなら、私は見ていませんね」
「そうだね~黒いもやもやに運ばれて来たのは見たよ~」
「ど、どういうことですか!?」
2人の証言に少しだけ動揺した九尾が捕まっている仲間を見る。
「そ、そんなはずはない!
九、九尾様!そいつらはグルです!」
「その通りです九尾様、こやつらは九尾様を騙そうとしています、お気をつけください」
ファブニールの言葉に後ろに居た眼鏡をかけた男が合わせて言う。
「そうなんですか?」
「ええ、そうに決まっています。
九尾様、こやつらの事は放って置いて仲間を連れ出しましょう」
「そうですね…皆さん、私達の仲間を助けてください!」
「お、おい!あ、く!」
"Queen"のメンバーが九尾の言葉に従って檻に向かって走りだし、その波で俺は押し出されてしまった。
「クラマス大丈夫ですか」
「ああ…なんとかな……しかし…」
檻を開けられてしまった。
そして、九尾が俺に向かって。
「タイチョーさん!」
「………なんだ」
「私はあなたのしたことを許すことができません!」
「…………」
「ですので、私は…私達"Queen"は"コロナ"に対して宣戦布告します!」
「やっぱりか…」
「このイベント中はなにもしませんが、終わった後に必ずあなた達を倒します!」
「はぁ……」
やっぱりこうなってしまったか…。
帰っていく九尾と"Queen"を見ながら途方にくれる…。
「…クラマス…まだ、想定内です……が…」
「ああ…とりあえず、2人とも無理は承知だが…」
「分かってます」「分かってるよ~」
「…ありがとう…」
…本当に申し訳ないが、"Queen"とやりあうなら少しでも人数を増やさなければ…。
「はぁ…」
「クラマス、今日はもう休みましょう…」
「……そう…だな…では、また」
「はい!」「おやすみなさ~い」
自分のテントに戻ることにした…。
今回出てきたプレイヤー紹介
・ウラス
緑髪のエルフ
戦闘系クラン"コロナ"の副クランマスター兼参謀
タイチョーとは幼い頃からの親友である。
武器はイベント産の弓
防具は魔鉄鋼製の軽装に身を隠すためのローブ
・眼鏡をかけた男"クラミツ"
レア種族の吸血鬼
"Queen"の幹部の1人
武器は無い
防具はタキシードと黒いマント
ファブニールってファブリーズに似てるから間違えるのも仕方ないことです。
(そういうことにしてください)
いつも色々とありがとうございます。