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ぶらり散歩?回です。
長いです。
オゾレクスさんは"隠者のローブ"のフードを被って、姿を曖昧にして俺の横を一緒に歩いて、明日の予定を話していた…。
「それで、明日の朝に戻って狩りをしたいんですよ」
「何じゃ、狩りならどこでもできよう」
「できますが少々レベルが高くないですか?」
「う~む、確かにここらの魔物レベルは高いが魔法は効きやすいからのぉ」
「そりゃぁ…魔術の練習にはなりますが、もう少しすると10日間はサバイバルするので、野宿に慣れるためにもレベル帯の低いあちらで慣らそうかと」
「なるほどのぉ、あい分かった、では明日の朝に戻るとしよう」
「ありがとうございます、オゾレクスさん」
「カッカッカ、何、大したこと……ん?」
「どうしました?」
オゾレクスさんの足が止まった…どうやら、裏路地を覗いているようだ。
俺も覗いて見たが、行き止まりだった…。
「ベンよ、行き止まりに見えるじゃろう?」
「え?そうじゃないんですか?」
「カッカッカ、では確かめに行くとしよう」
「え?…分かりました」
とりあえず、行き止まりに来たが…。
ん?風が壁から抜けている…これって……。
「オゾレクスさん…これって…」
「うむ、どうやら気付いたようじゃのぉ…
これは"幻影魔法"じゃな、しかも人払いのおまけ付きじゃ…」
「そんなものが何故?」
「分からんが、行ってみるか?」
「う~ん……気になるので行きますか」
「うむ、では行くかのぉ」
そう思い立って裏路地に進んだ………。
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結構進んだが大通りに抜ける気配が全くない。
しかし、所々で横路はあるがそちらも長そうだ…。
「長いですね…」
「まあ、王都はベンの居った町の10倍は軽くあるからのぉ」
「うひゃ~、それはでかいですね」
そんな事を話していると少しだけ開けた場所に出た…。
ここは住民の広場なのか小さい噴水があった…。
「開けましたね…」
「うむ…王都にはこういった場所が所々点在しておるからのぉ」
「ここで一休みしますか」
「そうするとしようかのぉ」
長い間歩いていると中々に疲れる…。
一休みついでにミーミルを出そうとした時…。
「誰か!助けて!!」
「待ちやがれ、この獣どもが!」
俺たちが来た方向と真逆の方向から獣人の少年少女2人と、どう見ても悪党のような男たち7人が入ってきた。
こちらに気付いたのか獣人2人が駆け寄ってきて、悪党(仮)に囲まれてしまった…。
何人かは武器を出している。
「へへ、兄さんよぉ大人しくその獣をこっちに寄越しな」
「そうすれば、命だけは取らねえでやるよぉ…ひひっ」
「た、助けてください!」
「…(潤んだ目でこちらを見ている)」
困ったな…助ければ命を取られるし、助けなくても命以外が取られる…。
しかも、どう見てもレベルはあちらが上だな…。
仕方ないここは…。
「タロース出てこい」
シュンッドスーン「オヨビデスカ、マスター」
「な…なんだこいつは!?」
「とりあえず、こいつらを捕縛しろ…1人生き残っていれば後は構わん」
「イエス、マスター、超咆哮ヲ使用シマス」
「了解、オゾレクスさん!」
「あい分かった"バリア(魔)"!!」
オゾレクスさんの"バリア(魔)"によって俺らを包んだ後、周囲の被害を無くすためにこの広場一体を包んだ。
「何を出そうが術者をやればいい!やれ!」
「ひゃっはー!!」
「"超咆哮"」
バリアの向こう側にいたタロースが"超咆哮"を使用すると、悪党7人全員が気絶して倒れる。
まあ、至近距離で喰らったらそうなるわ…。
「オゾレクスさん、何か捕縛用の魔法ありますか?」
「いくらでもあるが、これでいいじゃろう"空間牢"」
オゾレクスさんの魔法で悪党が一部に密集させられて真四角の空間に納まった…。
後は…
「オゾレクスさんありがとうございます、
…それで君たちの名前はなんだい?」
「僕の名前はユーマ、妹はシーナ」
「…(お辞儀している)」
「…なるほど」
「うむ…どうやらこの子達は孤児のようじゃ」
「そうなんですか?ユーマそうなのかい?」
「うん…」
「なるほど、ありがとねユーマ」
「きっと、あやつらは奴隷商の仲間じゃろう…しかも違法じゃな…」
どうやら、奴隷商にも合法はあるらしい…もちろん気分の良いものではないと俺は感じる。
さらに詳しく聞いてみたが、妹は奴らの呪いによって声が出せなくなっているらしく、兄のユーマの方にもかけようとしたところで逃げたようだ。
「なるほど…オゾレクスさん、その奴隷商は違法なんですよね」
「うむ…しかし表で訴えようと逃げられるじゃろう」
「だったら、叩きますか…どうやら、1人起きたようですし」
「この野郎!出しやがれ!!」
「う~ん、面倒ですし…オゾレクスさん"精神操作"できますか?」
「残念じゃが、そこまで覚えておらんのぉ」
「じゃあ僕がかけますね」
「何ごちゃごちゃ話してやがる!!さっさと「"精神操作"」………」
「おお、成功しました…MP消費量は50か…」
スペル:精神操作
MP消費量:50
レベル差があるほどかかりにくかったり
かかりやすかったりする
相手の精神状態によっても
かかりやすさが変わる
かかれば魔法を解くまで
ずっと操れるぞ
とりあえず素性と奴隷商の場所を聞き出すか…。
「質問に答えろ、まずお前らはなんだ」
「俺達はゴウヨに雇われたごろつきです」
「ゴウヨの居場所はどこだ」
「ここから西側の門の裏路地に居ます」
「分かった、オゾレクスさん行きますか…」
「カッカッカ、そうじゃな…」
とりあえず、ごろつきどもを途中で会った兵士に受け渡し奴隷商ゴウヨの居場所に行く…。
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裏路地には案の定"幻影魔法"があった。
オゾレクスさんが言うには大抵"幻影魔法"がある場所はこういったことに使われているらしい。
進んでいくと、いかにも違法なものを売ってます感が出ている店が見えた…ドアを開けると…。
「ゴウヨ商会へようこそ、初めての方ですね、おや?そちらの獣をお売りに?」
はい、確定~一撃で捕縛したいが護衛が2~3人いて全員殺気を飛ばしてきた…。
「ふ…冗談はよせ…どうせ分かってんだろ…」
「おや…命が惜しくないようで……」
「………」
「やれ!!」
「"目隠し"」
ゴウヨの合図で2人が抜刀と同時に1人が呪文を唱えた。
しかし、オゾレクスさんの"バリア(魔)"に全て阻まれた…。
「「!?」」
「………」
「何をしている!さっさと殺らんか!」
「…まだやるかい?正直戦ってもいいが、命を散らすことになるぞ…」
「っ!」
「"魔力弾"」
1人はこっちに向かって剣を振りかざして何度か攻撃をいれる…早いな…。
さらに、"魔力弾"の方も俺より大きい…。
1人は戦う意思が無くなっていた…。
よく見ると2人の首には黒い首輪がある。
「オゾレクスさん…あの首輪って…」
「うむ…"奴隷の首輪"じゃな」
「なるほど、ならば…」
2人は相変わらず攻撃をしているが戦意は無さそうだし、こういう時は術者だけを殺るか…。
そう思い短剣を取り出しながらゴウヨに近づく。
「な!?来るな!ひいいい」
「…………」
「か、金か?いくらでも渡す!だから…「命だけは…か」そうだ!頼む!!」
「生憎……悪党の言葉に耳は貸さん…」
「ひいいいいいいいいいい」
「天誅!!!」
そう言って短剣を振りかざして…。
「"精神操作"よし、かかったな」
「………」
まあ、裁くのは俺じゃ荷が重いからな、後で兵士に受け渡しする前に…。
「とりあえず、あの2人の"奴隷の首輪"を解け」
「はい、分かりました」
ゴウヨは奥に向かって行ったのでついていき、引き出しの中から紙を2枚取り出し破る。
どうやら、破れば解けるものらしい。
その証拠に先ほどまで居た場所で3人が喜んでいる…3人組だったのか…。
引き出しは3つあり、全て埋まっている…。
「全て奴隷の契約書か」
「はい」
「他の奴隷はどこだ」
「こちらです」
ゴウヨはもとの場所を通ってもうひとつのドアを開ける。
そこには、老若男女様々な種族が牢屋の中に10人ずつ居りその牢屋も10以上ある、近くには地下への入り口もある…こいつは中々の悪党だったんだな…。
「オゾレクスさん…これは…」
「うむ…中々多いのぉ」
中を覗くとほとんど全員意気消沈で下を向いている…これは、ヤバイな…。
「とりあえず、あの紙燃やしますか…」
「そうじゃな…すまんがやっといてくれ、ルベリルを呼んでくる」
「お願いします」
そう言ってオゾレクスさんの姿が消えた。
俺は俺でやるか…。
戻って燃やしていると、3人が話しかけてくる。
「あのー…」
「何ですか」
「助けていただきありがとうございます」
「あのまま殺されると思いました」
「2人の命を助けていただきかたじけない」
上から魔法使いの女性・奴隷の首輪が着いていた男性・何でもない男性の順である。
…しかし、思ったのだが、この3人って刀持ってるし和風系の人かな?
「一応、無駄な殺生はしたくないので」
とりあえず差し障りのない事を言う…。
「戻ったぞ、ベン」
「お爺様、いきなり出たら…あら?」
「来ましたか」
「ベン君、この方々は?」
「さあ?知りませんが奴隷だっただけですよ、俺の知ってることは」
「そうでした、私は天月です」
「某は太郎棒」
「某は次郎棒」
女性の方は格好こそ一般的な魔法使いだが作法が貴族のそれだし、太郎棒と次郎棒は見分け方が分かりにくい…。
「そう…まあいいや…これで最後っと」
「天月…聞いたことあるような…」
「別に良いでしょ、この3人が何者なのかは、とりあえずこれで奴隷の人は自由ですが…」
「そうね、一応応援は呼んであるからこれで問題ないですし、大手柄ねベン君」
「そうですね、じゃあ応援が来ましたら帰りましょう」
「待ってください、お礼を…」
こういう時のお礼ってめんどくさい物か、ヤバイものだよなぁ…断るか…。
「拒否します」
「え!?ですが…」
「欲しくない」
「え…でも…」
困っているが、俺だってこれ以上厄介事を後回しにしたくない…ユーマ達のこともあるし…。
「ああ!思い出した!!」
「!?どうしましたルベリルさん?」
「天月ってここからずっと東側にあるサクラギク大陸のオオヤシマ国の天月姫じゃないの!!」
「あ…」
「………」
長いので切ります。
後、大陸の名前は日本の国花(桜・菊)で国の名前は日本の昔の呼び名らしいです。