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ルベリルさんの視点回です。
少しだけ、時間が遡っています。
ベン君の案内をセスに任せて王城へ馬車を走らせる。
「やっぱり、王様もあの報告を知ったからお呼びだししたのかしら」
「そうだと思われます」
「フフ、そうよね、王様の驚いた顔が目に浮かぶわ」
今の王様、クレシルーク陛下はお爺様の弟子の1人でした。
そのため、お爺様が亡くなられたと聞いたとき…。
『信じられん、今すぐ先生の亡くなった場所を言え、何がなんでも…』
『それはなりませぬ、あの場所に陛下を向かわせてしまえば、誰がこの国を治めるのです』
ムース大臣に引き留められ、説得の言葉に渋い顔をしながら涙を流し悲しんでおられた。
その後も、何度か向かおうとしてはムース大臣に引き留められた。
ムース大臣もお爺様との親交もあった方の1人で、お爺様の死を悔やんだ。
そんな事を思い出しながら馬車は王城へ向かう。
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謁見の間ではなく、王の執務室に案内された。
案内した兵士がドアをノックする
「クレシルーク陛下、ルベリル・マリーナ伯爵を連れて参りました」
「入れ」
失礼します、とドアが開けられると、
資料の山に囲まれたクレシルーク陛下が資料に1つずつ目を通していた。
「すまないが2人で話したい、退室してくれ」
「は!失礼します」
そう言って案内した兵士が退室し、クレシルーク陛下も仕事を中断した。
「ルベリル伯爵、あの話は本当なのか」
「はい、陛下、本当にございます」
「そうか…、先生は亡くなられていなかったのか…」
クレシルーク陛下が感無量といった感じだが、すぐに立ち直り、切り出した。
「しかし、従魔になっていると聞いたが…」
「はい、お爺様は禁忌の魔法を使いワイトとなり、ダンジョンに閉じ込められていたところに冒険者のベン君が助け出したと」
「ん?ベン君?」
「はい、ベン君はプレイヤーの1人で…」
「そんな事は知ってるんです!」
「クレシルーク君口調が戻ってるよ」
「それは、ルベリルさんもですよ…まあ、ここは2人だけですし良いじゃないですか」
「そうね…でそのベン君がどうしたの?」
「知らないんですか!?…この資料にまだ目を通してないんですね」
「え、いや~、魔法の研究してて…」
「しっかりしてくださいよ、貴族なんですよ」
そう言いながら1枚の資料を持って見せた。
そこには、"主神復活祭"と書かれた計画書で全ての国へ神殿から送られたものだ。
「クレシルーク君、これってすごいことじゃない!」
「そうですよ、主神が今年復活してそれを世界で祝うんですが…」
「ですが、どうしたの?」
「…そのベンと言うプレイヤーが復活させたんですよ」
「え……」
言葉を失った、いや、え……、どう言うこと…。
「そうなりますよね…、しかもですよ…」
「な、なに?」
「…主神に…名前をつけたんですよ」
「ええええええええええ!!!???」
「どうなさいましたか!陛下!!」
「問題ない!下がれ!」
いきなり大声をあげてしまった。
でも、誰だってそんな突拍子の無い事を言われれば驚くに決まっている。
それより、本当かどうかベン君に聞かなきゃ。
「陛下、申し訳ありませんが…」
「まあ、待ってください、本人に聞きたいのは分かりますが、少し待ってください」
「何、今からベン君のもとへ行きたいんだけど」
「待ってください、その事でもまだあるんです」
「他にもあるの!?」
「はい、なのでとりあえず座ってください」
「ええ、分かったわ」
そう言ってまた座るが、他に何があるのだろう…。
「これは、あまり知られていないんですが、魔導ゴーレム生産計画あったじゃないですか」
「ええ、それはお爺様の研究の1つだったもの今でも造っているけど良いものができてないわ」
「はい、それには僕も手伝っているので知っています」
「それにベン君がどう関わってくるの?」
そう聞くとクレシルーク君はまた違う資料を取り出した。"従魔リスト"と書かれている。
「これは従魔ギルドからの定例報告書です、そこの2ページ目を見てください」
資料をめくって、目を通すとそこにはワイトのつぎに魔導ゴーレムと書いてあった…って
「どう言うことよ!これは!!」バンッ
「陛下!!」
「問題ない!!下がれ!!」
また、やってしまった、けれど、どうして従魔のリストに書いてあったの!?
「驚くのも仕方ないですが、落ち着いてください」
「そ、そうね、でもどうして?」
「それが、どうやら例の事故があった現場がダンジョン化しており、暴走を起こした魔導ゴーレムがボスとなっていたところを…」
「いたところを?」
「どうやら、そのベン君が"従属化"したみたいで、その事を聞いて我々も"従属化"をしたところ見事成功しました」
「ええええええええええ!!!???」
「陛下!!!」「問題ない!!!」
驚きの連続である。
ベン君って一体何者なのよ…。
「はあはあ、もう驚き疲れたわ…」
「僕も疲れました…」
2人ともが疲れていると、ドアがノックされた。
「陛下、ご報告が」
「入れ」
「失礼します」
「それで、なんの報告だ」
「例の冒険者、ベン様が神器の保有者でした」
「なんだ、そんな事か」
確かに主神にあっているのなら、武器・防具が神器となっても可笑しくない、しかし、報告に来た兵士がさらに告げる。
「いえ、それが…」
「ん?どうした?」
「その神器が神からの献上されたという事で…」
「「!?」」
「しかも、鍛治の神が最初に創った物とか…」
「「ええええええええええ!!!???」」
「陛下!!!!!!」
今日は1日中驚きっぱなしで本当に疲れたわ。
…でも、魔導ゴーレムの計画が無事完成して良かったわ…これからは、魔導ゴーレムの使用規制法を整えないと…。
これからも、忙しくなるわ…。
まあ、ベンの魔導ゴーレムはオゾレクスの創ったもので、クレシルークの造った魔導ゴーレムより強力にできています。
理由としてはクレシルークの魔導ゴーレムは一般魔物でありベンの魔導ゴーレムはダンジョンボスのため、実際は持っていないスキルがあったり、オゾレクスさんの魔法で創っているため、想像以上に強くなってしまったからです。
次回は、1日目の終了とリアルの回です。