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“英雄”として…回です。
とりあえず近くにある机から皿を取って適当に野菜とお肉を取って席に座りたいが…あそこで良いか。
「ああっと、ベン、こっちだよ君の席は」
「え?」
椅子に手をかける前にマシューさんに呼び止められ、そちらに体を向ける。
マシューさんが言った席はグラムさんとテネルさんが既に座っており、圧迫感がすごい…。
とりあえず近づいて話を聞いてみよう。
「俺の席って決まっているんですね?」
「?…ああ、そう言えば言ってなかったね、そうだよ、この椅子にあるマークが君のだからね」
そう言って椅子を引いて見せてもらうと、神様からもらった外套にあったマークと同じだった。
「なるほど…」
「まあ、今回はベンと他の英雄との交流も兼ねているから、いつもと違う形式を取らせてもらったけど、とりあえずこの椅子が君の席だから覚えておいてね」
「はい、分かりました」
「それじゃあ、さっきできていなかったお話でもしようか」
と言ってマシューさんも座ったところでテネルさんから声が上がる。
「さて、私からで悪いが、一つ礼を言わせて欲しい」
「え…?」
「まあ、食べながらで良いが、私はエルフ族と神族の血を持つハイエルフでね、親…まあ、神の方の家業を継いで事象を守っているのだよ。
継いだのは良いが、昔からずっと欠落している事象があってね、それのせいで世界のバランスが崩れて、邪神が活発になりあちこちで英雄達が駆り出されてね、ここに居る英雄達も例外なく色々な「テネルさんテネルさん、他の方の話す時間がなくなっちゃいますから…」おっと、そうだったね、まあ、とにかく君…ベンのお陰で世界のバランスが元に戻り我々も通常通りの生活に戻れたんだよ、そのことでお礼が言いたくてね」
「…なるほど…」
「さて、それとこれは英雄になった者には必ず伝えなくてはならない事があってね…」
と言って少し間を置いた途端、テネルさん…いや、他の人達の雰囲気が急に重くなるのを感じ取れた。
「…例え街や国が滅ぼうとも決して自ら干渉せず、例え邪神が降臨したとしても決して自ら干渉せず、例外を除き常に神託が下ったその時干渉する事…これを誓って守るか?」
「……どうしてですか」
当然の疑問だった…自然と口から出た疑問だった。
何故、そんな…
そう続けようとしたが、横からマシューさんの声が上がる。
「簡単な事さ、ベン…もし君が僕を差し置いて邪神を倒したとしよう。君であればあっさり邪神すら消滅させる事もなんなら従える事だってできるだろう」
「い、いや、それは」
「否定したいだろうけど、それが真実なんだ。
たしかに被害を殆ど出さないのは最も良い事だ…だがそれは被害者にもそれ以外にも悪影響しか生まないんだ」
「え……」
「一回でも例外ではなく、自分の思うがままに動けば、その時には君の自由がなくなり、英雄としてしか生きる事を許されなくなる」
「自由が…なくなる……」
そんな…ゲームなのに…そう言いたくなった。
「残念な事に、この中…もちろん今日来ていない2人を含め、君以上の力を持つ者は居ない…そして、君以上に被害を少なくする事もできないんだ。
そんな君が、もし神託なしに、そして例外ではなく動き被害なく悪を倒せば、どんな悪にでも向かって同じようにしなければ公平性がなく、そこに住む者が悪意なき不満を君に吐き出されるんだ」
「そんな…」
「驚くのも無理はない…しかしながら、神からの救いの手として動かない限りは人はいずれそうなるんだ」
「それにもし君がその重圧に耐えたとしても、被害が少なければ少ないほど、人は甘え弱くなり、いずれは何もかも英雄頼りになってしまうのだよ、皮肉なことに邪神や悪との戦いで敗れ倒れた英雄と同じくらい英雄頼りの弱くなった人よる悪意のない言葉に倒された英雄がいる」
「………」
「では改めて言うが“英雄”ベンよ、今ならば戻れるが、この誓いを守る事ができるか?」
「……………」
言葉が出ない、答えられない……いや、改めて自分の立場の重さが掛かってきた。
何しろ、降って沸いた立場で、望んだわけでも、手に入れようとした訳でも無い。
…それでも…降って沸いた立場でも、望んだ力でなくとも、あの時、無かったら今頃何もできず悔しくて泣いていただろう……。
「……俺は…自分にそんな大きな力はないと思っています、でも、それが俺の力の評価なのであれば、もっと使いこなして俺の自由を…守りたいモノを守ります」
「………」
そう言ってマシューさんとテネルさんに答える。
2人は少し間を置いてニッコリと微笑み
「…なるほど、流石は序列1位様、試した事をお詫び申し上げます」
「良かった〜、君の…ベンの言葉が聞けて」
「……え?」
急に重い雰囲気がなくなり、初めの方の明るい雰囲気に戻る。
「ああ、さっきのはね、新人英雄なら必ず通らせる言わば関門さ」
「かん…もん?」
「ああ、色々あるけど、序列決めの力比べはそもそもなかったからこの一つしかないけどね」
「いやはや、父から聞いておりましたが、自身を良く見ておられる」
「いや、そんな」
「謙遜せずとも良いですよ、それとグラム、君がこう言った雰囲気を好まないのを知っていながら巻き込んですまない」
「…いや、一位の言葉が聞けたから良い」
何がなんだか分からないが、とりあえず“英雄”として認められたのか?
「あ、じゃあもし納得できない言葉だったら、“英雄”の称号って剥奪される予定だったんですか?」
「いや、それは我々には出来ないし、そもそも主神が与えた称号だ、それに…」
「それに?」
「……いや、何でもないさ、さてそろそろ席を譲るとするか」
「確かにそうだね、他の皆もベン君と話したいだろうし」
「じゃあ、これからよろしく頼むよ」
「…その志を忘れず、精進すると良い」
「は、はい、“英雄”として頑張っていきます」
「それじゃあ」
と言ってマシューさんが指を鳴らすとテネルさんとグラムさんが消え、その位置にラーグルさんとララドゥマさんに入れ替わった。
2人とも座っていても顔の位置が高い…。
「うむ!良い宣言じゃったな!」
「主神サマ、認メタ、納得」
「え、は、はい、ありがとうございます」
「あれくらいの志を我の子にも堂々と言えるくらいにはなって欲しいんじゃがなぁ」
「あはは、ラーグルの子ってまだまだ幼いじゃないか?」
「何を言っておる、我が幼い時など山を…」
「ベン、ラーグル、イツモ、話長イ、今ノウチ、ニ、食ベレルダケ食ベテ、オケ」
「は、はい」
と、とりあえず、料理が冷めないうちに食べておくか…。
にしても英雄って、大変だとは思ったけど、神託がないと動けないってなんだかなぁ………。
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次回もゆっくりお待ちください。




