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森の中をかける馬車の中にて…回です。
馬車が街を出ると外壁から少しして森林に入っていった。
森を見ていると立派な角を生やした鹿や普通より少し大きな兎とかがこちらを見ていた。
流石に速度が出ていたので“鑑定”出来なかった…。
「む、どうしたんじゃ?」
「え、ああ、不思議な動物が居たので“鑑定”しようと思ったんだけど、この速度じゃちょっと難しいかって…」
「どうぶつ?どこどこー」
「ん?えーっと、あ、あれとか」
「わー、おおきなおおかみ!」
「ほぉーありゃあフェンリルじゃったかな?」
「フェンリル?」
「やはり聖獣様方もお越しになられているのですね」
「聖獣?」
なーんか、ファンタジーモノでヤバい部類の上位に入る単語が二つ飛び出てきたんだが…。
「聖獣というのは、大昔に人々が狩りでいくつもの獣の種を絶滅に追い込んだのを守るために獣神ガナド・ガラムド様から命を受けた獣の事です。
ただこの国の場合は先程お見受けになられたフェンリル様が国王ゼネラル二世様の盟友として招かれており、狩りも森の生態系を保つための最低限しかしておりません」
「なるほど」
「なお、先程お見受けになったのは盟友であるフェンリル様のお子様だと覚えております」
「え、あれで子供?」
普通に俺くらいの身長はあったよな?
あれで子供ってことは、大人のフェンリルって…。
「直接会った事が2度程ありましたが、お子様の体の3倍以上の大きさに加え、そこに居るだけでドラゴンの成体程であれば軽く捻れるかと思うほど力を感じましたね」
「神の力の断片を持つと云われておるからのぉ、その気になればやれるじゃろうな」
「へー……そういえばユーマとシーナは神獣ですけど、その聖獣と親戚とかそう言った類いなんですかね?」
「し、神獣!?」
あ、いや、まあ、どうせ知られる事だし、何か起こる前になんとかすればいいし、起こったら頑張って対処するしかないか。
驚くロメアスさんを置いておいてオゾレスクさんが応える。
「ふむ、同じかどうかと言うのであれば似て非なるモノじゃな。
聖獣は神が直接命を下し、下した命が尽きればそのモノの子か居なければその都度生み出される。
それに対して神獣じゃがこっちは先祖返りが多い」
「…多い?それ以外にも事例が?」
「うむ、儂も噂でしか知らぬが突然加護を受けて生まれる時もあると言うのでの?儂はユーマとシーナはそれではないかと思うのじゃ」
「…そういえば親が…」
「うむ、まあ、加護を手にしたからと言って神が常に助ける事は稀じゃ、持ってればラッキー程度に考えておけばよい」
「そんな身も蓋もない正論を…」
「カッカッカ、どうしても気になるのであれば本人たちになり、神になり聞くといいじゃろう」
「……面倒そうですし、ユーマとシーナに聞くのも気不味いので気にしないことにします」
そう言って窓の外を見るユーマとシーナを見る。
…あんな楽しそうにしているのを邪魔したくないし、聞いてどうにかできる訳でもないから知らぬが仏か…。
「っと、そろそろロメアスさんを戻さねば、ロメアスさーん!」
「……っは!な、なんでしょうか!」
「あ、いや、なんか固まっていたので」
「あ、ああ、す、すみません、少し驚きましたので…」
「まあ、なんか驚かせて申し訳ございません」
「い、いえいえ、こちらこそ驚いてしまい申し訳ない」
「え、あ、えーっと、あ!そういえば1日程度で王都に着くんですよね?」
「はい、このペースで行ければ明日の昼前には王都に到着します」
「そうですか、で王都に着いてからの予定ってあるんですか?」
「予定ですか…そうですね、天臨祭当日までは王都の王城にある一室で待機ですかね」
「なるほど…王都とか観光してみたいんですが、良いですかね?」
「そうですね……多分一応護衛がつくとは思いますが問題ないかと」
「あ、あー、まあ、それならいいか…分かりましたありがとうございます」
「いえいえ、こちらとしても拘束まがいの事はしたくないので…そういえば既に何人か英雄様方がお目見えになっているそうなので交友するのもいいかと」
「へ、へー…か、考えときます」
マジか…いやまあ、そりゃ来てるよなぁ…。
でもまあ、あまり会える機会とかないだろうし挨拶くらいはちゃんとしとかないとな。
外の綺麗な森を眺めながら馬車は王都へ向かっていった………。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回もゆっくりお待ちください