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馬車の中で…回です。
街を出て何時間経ったのだろう、正直誰も喋らない。
オゾレスクさんは本を読んで、ユーマとシーナもオゾレスクさんが渡した児童文学書を食い入るように見ている。
俺は俺でミーミルを膝の上で永遠と撫で続けて、時折外の様子を見るがまだまだ木々が通り過ぎていくだけで全く変化がない。
どうしたものかと考えていると不意にオゾレスクさんから声がかかる。
「そういえばベンよ、魔術の方はどこまで進んでおる?」
「え、あー、そうですね、今のところ”プチ“、”ミニ“、”ショット“、”スピア“、”ボール“、”ウォール系“まで覚えて、空間魔術の方が“引き寄せ”、“吹き飛ばし”、“シールド”ですね」
「ふむ、前より覚えたのも多いがまだまだ魔法に進化するまで先は長いのぉ」
「そうですか、実際のところ魔術でどこまで覚えるんですか?」
「そうじゃのぉ、魔術で覚えるものはまだあるが、実際は魔術と魔法は威力が違うだけで規格自体は同じなのじゃよ」
「というと?」
「そうじゃのぉ……例えで言うのであれば、魔術は1対1もしくは10くらいを相手にできるのに対し、魔法は軍対軍となる」
「軍対軍?」
「そうじゃな、確かこの辺りに…おお、あったあった、これを観るが良い」
そう言っていつもの“空間収納”から水晶玉を取り出して魔力を流すと何もない空間に映像が浮き出てきた。
映像では荒野で100人くらい…いや、それ以上の人が居た。
「これは、今から90年程前にあった戦争を偶然通りかかってのぉ、丁度良く記録晶が残っておったから孫に見せようと取っておいたのじゃ…ほれ今から魔法が出るぞ」
そう言うと片方の軍の後方から遠くからでも大きく見える火球が20、いや30以上生成されてもう片方の軍隊に雪崩れ込む。
しかし、その火球はそのもう片方の軍の後方から広がっていく風によって軍隊の前線ギリギリで防がれている。
「こっちの使っていた魔法は火属性魔法のプチファイア、そしてそれを防いだのが風属性魔法のストームウォールじゃな」
「え、あれでプチ!?」
「うむ、プチ系ですら魔法になると恐ろしい威力を持つようになるが、勿論火属性魔術のプチファイアと違い魔力の消費量は大体ファイアスピアの5倍ほどである。
「スピア系の5倍…はぇ…」
「勿論、軍対軍とは言ったが、強力な魔物…例えばゴブリン系の上位種と対峙するのであればプチファイアくらいであればなんとかなるであろうが、さらに上位種となれば属性相性も戦略に入れねば苦戦するであろう」
「まあ、流石に魔法をゴリ押しでそう言う最上位種?とかと対峙はできませんよね…」
「いや?儂位となればそれこそミニファイアだけでゴブリンエンペラーやオーガエンペラー位はちょちょいのちょいじゃわい」
「ええ…」
「それに人であった時であれば苦戦していたドラゴン種ですら、魔物となった今では余程長生きしていなければ少々被害は出るが倒すことは容易にであろう」
流石世界一の魔法使いって言うだけあるな…。
まあ、そんなのとはあまり対峙したくないけど……て言うことはオゾレスクさんって魔物の生態系で上位の魔物になるのか………改めて考えると序盤から、いやまあ、今も序盤だが、ユニーク種の中で相当高いレベルの仲間を手に入れたんだなぁ……まあ、ミーミル以外のテイムしてる奴らってタロースとゴーギャスも序盤から仲間入りしたらやばい奴らなんだよな……。
「まあ、今のお主であれば、儂の力なぞ借りずに古龍種辺りですら倒すであろう」
「え、いやいや、それはないですよ!その種族名からしてヤバそうなドラゴンなんて一瞬で死にますよ!」
「ほほほ、何を言っておる、その剣と外套さえあれば、その気になれば一瞬じゃわい、カッカッカ」
「えぇ…」
そう言って軽快に笑い飛ばすオゾレスクさんを見て、戸惑いはするが、まあ、多分できるんだろうなぁ…。
『古龍種デスカ?おもしろそうですわね?喧嘩売られたら買ってあげて差し上げて下さいまし?』
『同意、敵の攻撃は主に届く事すら叶わぬ』
『動く前にkillですわ!』
「(いや、戦わないからね!絶対目立つからそうなったら逃げるからね!)」
『oh!意気地なし度胸なし、そんなことされたら某悲し』
『困惑、脅威は排除しなくては安全は訪れませぬ』
「(ぐ…と、兎に角、極力戦闘は避けて戦う時は全力で目立たないように終わらせるからな!)」
『これが英雄願望のない英雄ですか』
『御意、主の御心のままに』
はぁ…本当に俺みたいなのが英雄で良いのかなぁ…。
頭を抱えているとミーミルが頬を擦り寄せて慰めてくれる……うぅ、俺の癒しはお前だけだよぉ………。
ボール系
内容: ファイアボール ウォーターボール ウィンドボール アースボール ライトボール ダークボール
説明:ミニ系、プチ系の最上位
消費MPはプチより多い
ウォール系
内容: ファイアウォール ウォーターウォール ウィンドウォール アースウォール ライトウォール ダークウォール
説明:正面に属性障壁を創る。
なお、厚さは最初に消費したMP分厚くなる
(最低10MPから1MP増えるごとに10cm厚くなる)
消費MPは10〜 1分ごとに最初に消費したMP分減る
吹き飛ばし
半径1m以内の敵を吹き飛ばす。
込めた魔力分吹き飛ばし力が上がる
クールタイム:1分
シールド
他者の攻撃を透明な盾で自動的に防ぐ
込めた魔力分強度と耐久性が上がる
ただし使用してから10分すると消える
クールタイム:30分
いつも最後まで読んでいただきありがとうございます。
次回もゆっくりお待ちください。