109
戦闘回1です。
その場から走り出して目の前に居た、黒いオーラを纏ったイカもどきに突っ込み、相手は触手をこちらに伸ばしてきた。
「“スラッシュ“!!からの“魔力弾”!」
近くまで迫ってきた触手を短剣で斬りつけ、牽制として魔力弾を放ったが、全く効いてない。
やはり、レベル11で倒せる相手ではないのだろう…でも、剣で斬ることができるのなら、とにかく斬ってダメージを与えてやる!
「うおおおおおおおお!!!」
「GYUYYYYYYY!!」
雄叫びを上げて自分を鼓舞しながら、突っ込む。
それに応えるように相手も触手を差し向ける。
今できる技は少ない、気力操作でできるだけ動きやすく、そして少しでもダメージ量を上げ、隙を狙っては魔術を使って攻撃する。
相手の攻撃は一撃でも当たれば、俺の体は瀕死…いや耐えることはできないかもしれない。
油断できない戦闘、これこそ俺が求めていた本当の戦いなのだろう……。
「これでどうだあああああああ!!!」
「GYUYY……………」
相手の触手を全て斬り落とし、最後に残った本体を思いっきり斬るとさっきまで大声で叫んでいた声が断末魔にかわり、その姿も消えていき、アイテムをドロップした。
《wave1が終了しました》
《次のwaveまで1:00:00》
《全waveが終わるまで経験値の配分はありません》
「……ふぅ…」
「ベン様、どうやら先ほど倒されたのが最後のようです」
「…そうですか」
バタリ、とその場で座り込む…いや〜疲れた…本当に…というか、経験値が貰えないのか…ん?
どこからかピーピー…という音が聞こえる、確かこれは…。
「もしもし?シャイニーか?」
『兄ちゃん!』
「うぉ!?」
メニューからフレンド通信を開いて通信を繋ぐと、シャイニーの声が聞こえてきた。
『今ね!』
「ベン様、今よろしいでしょか?」
「え…あ、ちょっと待ってください」
多分ヴェルスさんの用件はクエストについてだろうから、今のうちに聞かないとな。
「シャイニーすまんが今手が離せないから、後でいいか?」
『え?』
「だから、今大事なクエストやってるから後でいいか?」
『うん……うーん、今すぐは無理?」
ぐ…そんな寂しそうな声を出さないでくれ……。
「今すぐは無理だなぁ」
『えーーーー』
「クエストが終わったらすぐ行くから、じゃあな」
とりあえず、これ以上お願いされると困るので無理やり話を終わらせた。
はぁ…まあ、リュウザン兄さんが居るだろうし問題ないだろう。
とりあえず今はクエストに集中するか。
「ヴェルスさん何のようですか?」
「はい、ただいま相手の第一陣を退けたようですので、ベン様のHPとMPの回復をさせて頂きます」
「あ、お願いします」
そういえば直撃で攻撃を喰らってないけど余波だったり、掠ったりして結構体力が削られてたっけな…あれか、アドレナリンが出てるから痛みが少ないのか…。
ヴェルスさんが短く呟くと、俺の体が光に包まれて、あっという間にHP、MPが全開した。
「ありがとうございます、ヴェルスさん」
「いえ、それより少し仮眠をとられますか?」
仮眠…そういえば今は深夜だったか…寝ないとデバフでキツそうだし。
「そうします、護衛をお願いしても?」
「もちろんです…それではごゆっくり…」
「はい、おやすみなさい…」
近くにあった木にもたれ掛かり、目を閉じる…。
いつもご愛読ありがとうございます。