3話 絡まれるとか、めんどくさい。
スピカは医務室で目を覚ましたものの、まだ体調が優れないのか早退することになった。
先生に帰りの馬車を呼んでもらい私は教室に戻る。ちょうど昼休みに入ったところで戻るなりスピカを心配するクラスメイト達に囲まれた。
「スピカ様は大丈夫なのですか?」
「お加減が悪いのに気が付かないなんて、ステラ様は本当にスピカ様のお姉様なのですか?」
「まさか具合が悪いのに気が付いていながら無視されていたなんてことは……」
「ステラ様、答えてください!」
うちの妹は大変人気者である。
お姉ちゃんは鼻が高いです。
不穏な言葉も聞こえた気がするけれど可愛い妹は朝から元気でした。朝食でもパンを三つおかわりしてたしね。
「皆さん落ち着いて下さい、スピカは大丈夫です。意識もはっきりしていましたし……一応念のため早退させましたから」
安心してもらおうと言葉にするがクラスメイトの視線は冷たい。
私の事を疑うものまで現れる始末だ。
特に気にしたことはないが昔からこうだった。
私が愛想のない子供であることも関係して、回りには『愛される妹に嫉妬し、身内を蹴落とそうとしている極悪な姉』に見えるらしい。
そんな事は全くしていないのになぜだろうと疑問だったが前世の記憶を思い出し答えがわかった。
いわゆる物語の強制力の様な力が働いているのだろう。
転生なんて不可思議な事が出来る世界だ、他に未知の力が働いていたとしても不思議はない。
面倒だし、わざわざ訂正しようなんて思わないけどね
実害がない以上、好きに言わせておけばいい。
そう思いながら私は鞄を手に取るとクラスメイトに背を向けて、昼食を取るべく教室を出た。
昼食はいつもお弁当だ。
スピカが一緒だと食堂で食べるけど、私一人の時は混雑する食堂で席を確保するのが面倒なので食堂と反対側にある裏庭で食べることにしている。
ベンチに腰をかけてお弁当箱を開ける。
うちの料理長のご飯はいつも美味しいので困る、食べ過ぎてしまうのだ。
今日は甘い味付けの卵焼きが入っていた、私の好物だ。ありがたい。
帰ったら美味しかったとお礼を言おう、そんな事を考えながらお弁当を食べる。半分ほど食べたところで女子生徒達がきゃいきゃいと騒ぎながらやって来るのが見えた。
彼女達は私の姿を見るとわざと聞こえる様に私の悪口を言い出す。
スピカが倒れたのは私に苛められて心労が溜まっているとか、私が食事に毒をいれたから具合が悪くなったとか。
想像力豊かだねぇ…君達なら小説家とかになれるんじゃないだろうか
悪口を言われたからといって突っ掛かっていくのも面倒だし、この程度で傷付くようなガラスのハートでもない。
私はお弁当を食べ終えると鞄から本を取り出して読書を始める。
集中してしまえば雑音も聞こえなくなる、そう思ったのだけどそんな私の態度はなぜか彼女達の気に触ったようだ。
リーダーと思われる女子生徒が近付いてきたかと思えば私の手から本を叩き落とした。
「聞いてますの!?貴方の事でしてよ、ステラ・カークラ!」