五話 鬼神の正体
国会議事堂の前に二十体ほどの鬼神が出現した。
その状況に指揮官は戸惑いを隠せない。
「隊員が鬼神に……?! これは一体どういうことなんだ!!」
ブギャァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!
鬼神が雄叫びをあげて暴れ始めたが、経過を目の当たりにした機動隊員は攻撃を躊躇っている。
「し、指揮官!! どうされますか?!」
「く……、くそ!! 全隊!! 鬼神を撃退せよ!!」
ドォォォォン! ドォォォォン! ドォォォォン! ドォォォォン! ドォォォォン!
ブギャギャギャギャギャ!!!!!!
指揮を受け、機動隊員が一斉に鬼神に向けて砲撃を行った。
数体の鬼神はダメージを受けている様子だが、数が多いこともあり、集中砲撃作戦は功を奏さない。
バシィィィィィィィ!! バシィィィィィィィ!! バシィィィィィィィ!!
「うがぁぁぁぁ……!!!!!」
鬼神が巨大な足で数百名の機動隊員を力のままに蹴散らす。
頑丈な装備で身を固める機動隊員が次々に踏み潰され、無残に吹き飛ばされていく。
「怯むな!! 撃て!! 撃て!!」
「こ、このままでは全滅してしまいますよ!!」
指揮官はやけくそ状態で機動隊員の指揮系統は早くも残酷なものと化した。
「ご覧ください!! 今まさに鬼神が国会議事堂で暴れまわっています!! 機動隊員が鎮圧に当たっていますが……」
マスコミが上空からヘリでその模様を中継している。
しかしリポーターは機動隊員が鬼神に嬲られている悲惨な状況に言葉を失った。
「な、なんということでしょう……! 鬼神の進撃に機動隊が手も足も出ていません……!! 絶望的な状況です!! って、え……きゃあ!!」
マスコミのヘリが強風にあおられた。
「ジェットレインボー!!」
バン!! バン!! バン!! バン!! バン!!
麻倉が上空から放った強烈な気砲が鬼神に直撃していく。
攻撃を受けた二十体の鬼神は機動隊から麻倉へと注意を切り替えた。
都鳥はその隙に鬼神の集団の中に走りこんだ。
「魁惟! 御階さん!!」
バキュゥゥン! バキュゥゥン! バキュゥゥン! バキュゥゥン!
グギャ……! グギャ……! グギャ……! グギャ……!
都鳥の合図で猿渡と御階が鬼神を左右から銃撃で挟み撃ちにした。
金剛の銃弾は効いているようで、鬼神は痛みにもだえて反撃してこない。
二人はそのまま撃ち続け二十体の鬼神を一ヶ所に集めた。
「いまだ芽來!」
「おっけぃ!! いっくよぉぉ!!」
麻倉は一ヶ所に固まった鬼神の周りをぐるぐると回り始めた。
すると、二十体の鬼神を取り囲むように気流の輪が出来上がった。
「芽來、もう良いよ! はぁぁぁ! 錬金!!」
都鳥が気流の輪に触れると、それが一瞬にして金の輪に変わった。
「おぉぉぉ!! 金焼き!!」
熱された金の輪が縮んで二十体の鬼神の身体をまとめて締め付けていく。
グギャァァァァァァァァァァァ!!!!!
金の輪に拘束された鬼神たちは動くことができずに奇声をあげる。
「やったね! 作戦大成功!!」
このSPAGの活躍によって鬼神の暴動は収まった。
「みんな頑張ったね! お手柄だよ!」
都鳥の言葉にSPAGの面々は嬉しそうに顔をほころばせる。
「へへっ! ここにSPAGありって感じっすよ!」
「まぁ僕も含めて個人の実力が優れていますからね」
メンバーが歓喜の声をあげる中、都鳥は拘束した鬼神を見て頭を悩ませる。
「うーん。この鬼神たち、どうにかして元の機動隊員に戻してあげないと」
「そうはさせませんよ」
SPAGの前に古宮が忽然と姿を現した。
「あなたは天人族の……」
「古宮ですー! こんなにあっさりと鬼神を鎮圧してしまうなんて驚きです。おかげで狙いが外れてしまいましたよ」
「古宮さん。この鬼神は元は人間だったんです。この間のようなやり方は殺人行為ですよ」
都鳥にそう指摘された古宮は腹を抱えて笑い始めた。
「はーっはっは! そんなこと分かってるに決まってるじゃありませんか! こちらも事情がありますので、証拠隠滅ってとこです」
「な……! あなた方はそれを分かってて……!! こんなの人間のすることじゃない……!!」
古宮は憤る都鳥をよそに能力を発動させ、頭上に大きな暗黒の気玉を作り始めた。
「はぁぁぁぁ!! ディストゥラクションボール!!」
「させない! 金覆!!」
バジバジバジバジィィバジィバジィィィィィィ!!
古宮が鬼神に向けて放った気玉を都鳥が飛び上がって受け止めた。
「グラビティフォース!」
ズシィィィィィィン!!!
「ぐはぁぁっっ!! んぐぁ……! ぐ……!」
「み、珠伽班長!!」
蓬条の能力で都鳥に強い重力がのしかかった。
都鳥はそのまま地面に叩きつけられ身動きが取れなくなった。
「ふん! にぃやの邪魔するからよ!」
「そういうことだ! ここからは俺たちが相手してやるぜ!」
楠と蓬条、そして菟上が現れてSPAGに戦闘態勢をとる。
バキュゥン!
「く……、いったぁ……!!」
「は、班長を離せ!」
猿渡が撃った銃弾が蓬条の肩に命中した。
すると蓬条の気が途切れ、都鳥は重力から開放された。
「あんた……! よくもうちの綺麗な身体に……、ぶっ殺してやる!!」
蓬条が流血する自分の肩を押さえて絶叫する。
その様子を見た楠は笑いを堪えきれない。
「なはははは! 自意識過剰なババアだな」
「……お前ももれなく殺すかんな」
「三人とも後は頼みましたよ。私は鬼神の処理に当たりますので」
「待ってください! あなた方の目的は一体……!!」
「冥途の土産に教えてあげましょう。我々の目的、……それは人類の真なる支配ですよ」
その言葉を聞いた都鳥にある記憶が蘇った。
「珠伽班長?! 大丈夫!?」
麻倉が気抜けした都鳥を心配して上空から舞い降りてくる。
「よそ見してんじゃねぇよ! 魁偉雷火!!」
バチバチバチィィズドォォォビリリィィィィィィィィィィィィ!!!
楠の放った巨大な稲妻が都鳥の身体に直撃した。
「きゃぁ!!」
稲妻の衝撃で都鳥に近づこうとした麻倉が空高く吹き飛ばされた。
ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥ……
立ち上がっていた煙が消えて都鳥の姿が見えてきた。
「けけっ、死に顔を拝んでやるとするか! って嘘つけや!!」
都鳥は楠の攻撃をものともせず平然とそこに立っていた。
「みんな、任務は終了だ。僕はこの人たちに用があるから先に拠点に戻っていて」




