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二十話 さよなら (後編)

「んじゃお手並み拝見といかせてもらうぜ! はああ!!」


 バチバチバチ……!! バチッバチバチチ!!


 (くすのき)が能力を発動させると、その身体が一瞬のうちにして電光に包まれた。


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 俺も能力を発動させ、両手にありったけの光を集めた。


「随分威勢が良いな! どれどれぇ!!」


 ビリビリィリィィィ!!


 楠は人差し指で俺を狙い済まして、その指先から何かを撃った。

 すると、鋭い電撃がもの凄いスピードで俺に向かってくる。


「うぉ……!!」


 ビリビリィィィ……バチィィィン!!


 間一髪で電撃をかわした。

 その電撃が直撃したコンクリートの壁は黒く焦げ付いている。


 俺も負けじと左右の手で一発ずつ光弾を放った。


 ヒュゥゥ、ヒュゥゥゥゥゥン……ズドドォォォォン!!


「……けっ! やってくれるじゃねぇか」


 光弾は楠に当たったがあまり効いてる感じではない。


 くそ、どうしたらいい……。


 古宮(こみや)の時もそうだったが、相手が能士だと途端に戦い方にあぐねいてしまう。


「見ての通り、俺の能力は雷電(らいでん)だ! お前のようなやわ男にはちと刺激が強すぎるぜ!」


 楠はそう挑発して両手に電気をためはじめた。


 バチバチバチバチバチバチバチバチバチ!!!!


 く、くる……!!


「くらえ!! 魁偉雷火(かいいでんか)ぁぁぁぁ!!!!!」


 バチバチバチバチィィィィィィズドォォォォォビリリリリリィィィィ!!!


 身構える俺に楠の放った巨大な稲妻が直撃した。


「……すごい迫力だな」


「お、おま……!! ありえねぇ……!! 効いてないってのか?!」


 俺は光の盾を使って楠の放った雷電をあっさりと防ぐことが出来た。


 もしかしたら俺たちの能力は似た性質で、それがぶつかるとダメージが緩和されたり跳ね除けあうのかも知れないな。


 そう推察した俺は楠に直接攻撃を仕掛けることにした。


「おらぁぁぁぁ!!」

「こ……、このぉぉぉぉ!!」


 バシィィ!! バシィィ!! ビリィリィ!! ビリィリィ!!


 俺たちは交互に光撃と電撃のパンチを打ち合っていく。


「……く、この!!」


 意外なことに楠は防戦一方だ。あまり肉弾戦に慣れていないのだろうか。


 メシィィ!!!!!


 俺は楠の防御を跳ね除け、ボディーブローをくらわせた。


「お……おぉ……」


 楠がよろけた。


 よし……いまだ!!


 俺は両手で力一杯圧迫した光弾を楠の懐で開放し破裂させた。


 バゴォォォォォォン!!!!!!


「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! うぐ……」


 爆発をもろに受けた楠は血を吐いてダウンしている。


 その隙に俺は強力な光弾を撃つため身体中から光を集める。


「はああ!! 砂塵(さじん)ガン!!」


 …………なに?!


 バババババババババババババババババ!!!


 空き地の細かい砂が凄まじい勢いであちこちから飛んでくる。

 その威力たるやまるで銃弾並だ。


「うがががががががががががががが……!!!!!」


 俺は機関銃で撃たれたかのごとく蜂の巣状態にされた。

 そのうちに光の盾も破られ、生身でダメージを負ってしまった。


「……ち、ちくしょ……う……」

「悪く思わないでね。うちら仕事でやってんの」


 身体中から血が吹き出ている。立っているのがやっとの状態だ。


蓬条(ほうじょう)!! 余計なことすんじゃねぇ……!」

「あらぁ? 楽勝だってあれだけイキってたのはどこのどいつだった?」


「けっ……! これで身の程を分からせてやる! サンダーボルケーノォォォォ!!」


 ドドドドドドドドドド……メキ……メキ……


 俺の足元に少しずつ亀裂が入っていく。


「……な、なんだ? 地面が……」


「おおぉ!! 電雷よ!! その地に吹きあがれぇぇぇぇぇ!!!」


 ズゴゴゴゴゴゴ! ビリィリィ! ビリィリィ! ビリィリィ! ビリィリィ……


 楠の号令とともに、俺の立っていた地面から何発も何発も電撃が突きあがる。


「あが……ぐあがががぁぁぁぁぐが……ががぁぁぁぁぁ……!!!」


 その強烈な電撃を受け続けた俺は瀕死状態だ。


「ハァ……、グオッ……ウ……、ハァ……、ハア……」


 俺は全身をズタズタにされ口から何度も吐血した。

 もう反撃する余力など微塵も残っていなかった。


「アホが!! いくらなんでもやりすぎだ!! にぃやに殺すなって言われてるでしょ!!」

「やっちまったもんはしょうがねぇだろ! てか言ってお前の攻撃も酷いもんだったからな!!」


 二人が揉めはじめたところに誰かが近づいてきた。


「君たち、また派手にやってくれましたね。そこまでにしましょうか」


「アニキ!!」

「にぃや!!」


 古宮だ。

 頭から流れてくる血のせいでよく見えないが、その聡明な喋り方で分かった。


「なかなか見所のある青年だったでしょう? 柊吾(しゅうご)もただでは済んでいないようですし」

「けっ……! ちょっと油断しちまっただけだ!!」


「にぃやは何でここに? ミスターからの例の任務でいないはずじゃ」

「リカクさんに肝を入れた人間ですので、つい気になって抜け出してきちゃいました。てへ」


「どうせアニキ、俺たちのことが任務に手がつかないほど心配で駆けつけてくれたんだろ! カッコつけすぎだぜ!」

「あんた馬鹿ね! そこがにぃやのミステリアスだけど実は超優しいっていう偉大なとこでしょーが!!」

「ははははは、相変わらずかわいいやつらですね。こりゃ目に入れても痛くなさそうだ」


 動くことすらままならない俺は、その気の抜けるようなやり取りを黙って聞いていた。


「さて、もう決着はついたようで、状況も理解されていると思うので、私から熱い言葉をここで」


 そう言うと古宮は俺の耳元で穏やかに語りかけてくる。


「先ず、天人族(てんじんぞく)は決してリカクさんの思うような悪魔的組織ではないのです。それに関しては追々分かってくると思うのであえて割愛しますね。兎にも角にも私はあなたを見込んでいます。希少な神光の能士であることもそうですが、リカクさんには揺るぎない信念と燃えたぎる情熱が羨むほどに備わっています。その才覚が我々には必要なのです。是非、天人族で活かしてください、そして我々を助けてください。伊舞(いまい)みかこさんとはお別れになりますが、今のあなたならそれを望むはずです。何故なら、それが彼女の幸せのためであるから」


 そんな人たらしの勧説を聞かされた俺は空を見上げながらよく考えた。




 天人族のことなどどうでもいい。だが、伊舞については……。




「さて、最後にもう一度だけ、聞かせてもらいますよ」




 伊舞は俺の愛おしい彼女だ。


 自信を持って言える、心から愛していると。


 愛すべき大事な人を、何があっても守り抜く。


 それが彼氏の一番の役目ってものだよな。




「リカクさん、我々の仲間になってくれますか?」




 その役目を自力で果たせないのなら、どんな悪手だろうが別の手段を選ぶしかない。




 この先、伊舞が辛い思いをしないのであれば


 …………それだけで俺は幸せだ。




「……あぁ、分かった……。そうさせてもらう……」




 間違ってない、これで良いんだ。




 さよなら、みかこ。

第二部も最後まで読了して下さいましてありがとうございました。

良かったらご感想やご評価などいただけたら嬉しいです。

あすから第三部のスタートです。引き続き神顕す能士リカクを宜しくお願いします。


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