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十四話 掟破り

 銃弾が伊舞(いまい)の額に直撃した。

 そして、そのまま倒れて動かなくなった。


「リカク……!! なにごと?!」

「く、紅蘭(くらん)!! 来るな!!」


 パァァァァァァァァン!!! パァァァァァァァァン!!!


「うぐ……」


 様子を見にきた紅蘭にベレー帽の男が銃弾を連射した。

 紅蘭は二発ともまともに銃弾をあびて即死した。


「おぉい!! 女には傷つけるなっていったじゃろが!!」

「んな気にしとられへんわい!」


 伊舞……!! 紅蘭……!!


 ちくしょう……!! ちくしょう……!! ちくしょぉぉぉぉ!!!!!


「おまえら……!!! よくも二人を……!!!!」


 俺は涙をぬぐって高瀬(たかせ)たちをにらみつけた。


「このこわっぱも随分と意気がよかね……!」


 ベレー帽の男が俺に銃口を向けた。


「…………うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


 パァァァァァァァァン!!!


 パラッチチチチ…………


「あぁぁ?! どうなってるんじゃ!!」


 俺に命中したはずの銃弾はアスファルトに転がっていた。


「……ぜったいにゆるさねぇからな!!」


 怒りと自責の念が頂点に達した俺の身体には濁った光のエネルギーが充満していた。


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


 ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥン……ドゥゥゥゥゥゥゥ……バァァァァァァァァァァン!!!!


 俺の全身から放出された巨大な光の波動が工事現場を包み込む。

 そしてそれは筒状の光柱となり炎のように激しく燃えあがって昇天していった。


「はぁぁ……、はぁぁ……、はぁぁ……」


 工事現場には五人の死体が丸焦げになって転がっている。


「違う……、違う……! 違う……!! 違う!!!!!!」


 俺は頭を抱えて吹き抜けの鉄筋が入り混じった夜空へと叫ぶ。


「こうじゃないんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」


 サァァァァァ――――






「もう止めなさい! あなたたちの悪事はわたしが許さないから!」


 怒りのままに伊舞が工事現場の中へ突入した。


「リカク……!! どうしよ……ってリカク?!」

「俺がみんなを守るんだ!!!!」


 集中しろ……!! 集中しろ……!!


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 俺は身体に光の渦をまといながら工事現場に飛び込んだ。


「伊舞!! あの女の人のことは任せたぞ!!」


「ぺっ。おたくら何の真似かしらねぇがわいらに喧嘩ふっかけるなんててぇした度胸や」

「うへへへへ。最近のこわっぱは意気がえ……」


 ヒュゥゥゥゥゥズバァァァァァァァン!!!!!!


「うへぇ……?」


 光弾がベレー帽の男をかすめて近くの鉄筋コンクリートに直撃した。


「おぉぉぉい!! な、なんなんじゃあいつは!!!」


「ぐけけけけけ……!! 蜂の巣にしてやんや」


 ベレー帽の男はそう言うと、懐から銃を二丁抜いて俺たちに乱射してきた。

 俺は意識を集中させて光を操り二人の身体に盾を作る。


 パァァァァァァァァン!!! パァァァァァァァァン!!! パァァァァァァァァン!!! パァァァァァァァァン!!!


 俺たちに銃が何発も命中する。


 カチ……カチ……

 シュゥゥゥゥゥゥゥ…………


 弾切れとなった。俺たちは無傷だ。


 その間にベレー帽の男に接近した俺は男の真下から拳を思いっきり打ち上げた。


「うおぉぉぉぉ!!!!」


 ドォォォォッォォッッッッッーーーーベシャ!!


「ぐほぉぉぉぉぉぉぉ……!!!!! …………!! くは……」


 俺のアッパーカットを喰らったベレー帽の男は上に二十メートルほど吹っ飛び鉄筋に直撃した。


「高瀬!!! 次はお前だ!! 観念しろ!!!」


「ま、待てや……!! こいつがどうなってもええんか!!」

「ち……!」


 高瀬は女にナイフを突きつけて人質にとった。


「えぇぇぇぇい!!」


 バコォォ!!


 高瀬の背後にまわっていた伊舞がその後頭部を鉄パイプのようなもので打ち付ける。


「あああああ!!! いでぇぇ!!」


 痛みで絶叫する高瀬はナイフを放り投げて逃げ出した。


「逃がすかよ!!! おぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 俺は拳をグッと握り光を集め、逃げる高瀬に向かって光弾を放った。


 ヒュゥゥゥゥゥズバァァァァァァン!!!!!!


「ぐぎゃぁぁぁぁ!!!!!」


 光弾をまともにくらった高瀬はピクリとも動かなくなった。


「リカク……!! なにごと?!」


「紅蘭! 終わったぞ!!」






「それじゃはじめよっか」


 そう言うと伊舞は持ってきたお祓い道具を取り出した。


 はじめににおいのきついお香を焚く。 

 そして高瀬を仰向けで寝かせ、両手を合わせて数分間祈り続けた。


 次に小さいひょうたんの栓を抜いて中に入っている液体を高瀬の頭から足の先まで満遍なくふりかけた。


「これは?」

「ただの真水だよ。わたしが一度口にふくんでるからばっちいかもだけどね」


 続いてお経が書かれた紙を取り出してたどたどしくそれを読み上げた。


 最後に高瀬に塩をふってお祓いは終了した。


「お疲れ様。これで呪いは解けたのか?」

「うん。すごい数の生霊が呪っていたからさ、別の形でもきちんと供養してあげないと」


「まっ、このままこいつらを警察に突き出しちゃえば、みんな少しは浮かばれるんじゃない?」


 紅蘭が勇ましくそう言った。


 無事に呪いを解いた俺たちは警察に通報してその場を後にした。

 高瀬たちの悪行は女が洗い浚いぶちまけてくれるだろう。


 長内の家に戻ると、ピンピンした長内の母親が俺たちを迎えた。

 暗暗としていた長内家に笑顔が戻ったようだ。


 これで一件落着。俺たち探偵団の出番はおしまいだ。






 紅蘭は長内の家に一晩泊まっていくとのこと。

 田島には念のために病院へ行かせた。


 諸々一段落してから俺は伊舞と帰途につく。


「そういえば菟上(うなかみ)くんさ、自分で能力使えるようになったんだね」

「どうなんだろ? さっきは無我夢中だったから」


「そしたらわたしの役目なくなっちゃうな……」


 伊舞が寂しそうにポツリと漏らした。


「役目か……。ずっと元気な伊舞でいてくれたら俺はそれで嬉しいけどな」


「……ありがとう。菟上くんはいつも優しいよね」

「そうかな? 自分ではドライな性格だと思ってるよ」


 そこで急に伊舞が足を止めた。


「あのさ……。前に菟上くんが“俺たちの運命”って言ってくれてさ、すごく嬉しかったんだ」

「そ、そっか。ちょっとこっぱずかしいな」


「それってさ、そういう意味だよね」

「あ、あぁ、えっと……」


「わたし、きちんとした言葉で聞きたいな」



「伊舞…………」




 …………ダダダダ


「…………ん?」


 ダダダダダダダダダダッ!! ズテッ……!!!


「あったたたたたぁぁぁ……」


 真剣に見つめあう俺たちの真横を何者かが猛スピードで駆け抜けて、そして盛大に転んだ。

 こういうお邪魔虫は青春時代のお約束なのだろうか。


「おぉぉぉ菟上リカク殿!! めっけたのですぅぅぅ!!!!」


 そこにはニーハイ短パンで今どきな格好の女がいた。

 年齢は俺たちよりも少し年上くらいに見える。

 金色の髪が美しく、その瞳は吸い込まれそうなほど綺麗だ。


「あー……菟上くん。こちらの方は?」


 伊舞の声のトーンが恐ろしい。


「え……えっと……、どちらさまでしたっけ……?」


「ミサキですよぉぉ!! 会いたかったぁぁぁぁ!!」


 ミサキはそう言って俺に抱きついた。

 俺は気まずさのあまり伊舞の顔を見れなかった。


「掟破りは重罪なのっすよぉぉぉ!! 連行しまっすぅぅ!!」

「お、おい!!」


「あっ、え?! 菟上くん?! ねぇちょっと!」


 俺はそのままミサキという謎の女に連れ去られていった。

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