死神の鎌。
真剣に読まないように。
今話、ギャグ路線かと。
(´゜з゜)~♪
─── ナゼだ。
たったひとりの女性に歯が立たない。
その美貌は狂おしいまでにわたしの心を蹂躙してゆく。
数多の敵を屠った鎌は、突き付けられた視線に怯えていた。
そう。
私は彼女に見つめられただけで指先ひとつ動かせず、その身が鉛の如く固まってしまったのだ。
こんなことは、今までに味わったことがない。
彼の王者『一本角』でさえ、私には手も足もでなかった。
彼の暴君『二本鋏』でさえ、私には手も足もでなかった。
彼の魔王『虎柄』でさえ歯が立たず。
況してや私はヤツを頭からガジガジと齧り、喰らい尽くしてやったものだ。
なのに、何故……。
注がれる陽差しが躰をじりじりと焼き付けてゆく。
灼熱が我が身に襲い掛かるも。
わたしは目の前のたったひとりの女性の仕草を具に見ては、じいっと。
まるで電柱のように、無機質に聳え立つ。
やがて、興味がなくなったのか。
そんなわたしを無視した彼女はそっぽを向き、その場を去ろうとした。
ダメだ。
行かないでくれ。
わたしは此処にいる。
お願いだ。
この想いを聴いてくれ。
わたしは貴女を愛しています。
抑えきれない衝動は自然と、重くなっていた躰に鞭を打ち。
背後から、彼女を激しく抱き締めてしまった。
愛の抱擁。
彼女は決して何も言わず。
唯ひたすらに、募る想いを受け入れてくれた。
コトを逐えたわたしはすかさず彼女から飛びずさる。
振り向く彼女。
迸る殺気を眼に宿し、嬉々として睨み付けられる。
その眼光には最早、わたしを餌として認識しているようであった。
いまだかつて無い衝撃を身に覚えてしまい、全身を激しく震わせて。
絶え間なく発されてくる恐怖心に、わたしは畏れ戦慄く。
これまでか ─── 。
そう、覚悟した時。
大きな影がわたし達ふたりを包み込む。
刹那、最愛の彼女は鋭い嘴で捉えられ、ぶちりと断絶された。
私はその光景を目の当たりにしてしまい、呆気にとられ茫然と立ち尽くす。
次々と、その美貌を失いつつある彼女。
それを食む黒い怪物。
狂乱の輝きを眼に宿した怪物はやがて全てを喰らい尽くし。
私には目もくれず飛び去っていった。
助かった……。
最愛のひとが亡くなったというのに、自分の命が優先されてしまうという。
自然界というのは、斯くも厳しい世界なのだと、改めて己に突き付けるのだ。
だが、それは一瞬でしかなかった。
ふさふさとした毛並みの。
生涯で絶対に出会いたくないヤツのひとりが、私をその眼に焼き付けて。
死神の鎌を振るった。
──────
「おかあさ~ん! ○○ちゃんがなんかもってかえってきた~!」
「あらやだ、またこの子ったら……て……いやあああああっ!!」
猫の口許には、カマキリのぐったりとした死体が。
にっこりと微笑んでいたのであった。
前話。
台無しだ(爆)
(;゜∇゜)
ちなみに、筆者は過去。
カマキリの卵をスッカスカの虫籠に入れて持ち帰り。
惨劇を目の当たりにしました。
((( ;゜Д゜)))