序章
いつも、彼のことを考えていた。
とはいえそれは別段、恋とかそういうものじゃない。ただ、どうして? と疑問に思っていただけだった。
どうして、いつも一人なのだろう。どうして誰とも交わろうとしないのだろう。
どうして、どうして……? と。そんなことばかりが、頭の中でぐるぐるしていた。
彼はいつも無表情で、つまらなさそうで、退屈そう。
教室の片隅で何をするでもなくボーッと外を眺めて、放課後もクラスのみんなが楽しそうにおしゃべりしたりしている横をスッと通り過ぎて、帰ってしまう。
取っ突きづらそうで、愛想がない。笑っているところは愚か、誰かと会話をしている姿を私はついぞ見たことがなかった。
精々、クラスで合同でやるようなイベントの時に事務的な会話をしているくらいだ。あとは先生とちょこっと。それ以外は、本当に一人。一人ぼっち。
私だったら、絶対に寂しいと思う。どうしようもなく寂しくなって、我慢できずに誰かに話しかけてしまうと思う。内容なんて何だっていい。とにかく何か、誰かと繋がっていたい。
心の繋がりが欲しいのだ。
だから私は生まれた時から……というのは言い過ぎだとしても、物心ついた時から、というのも盛り過ぎか。けど、感覚としてはそれくらい昔から。
そんな大昔から、私は誰かの顔色を伺って生きてきた。ずっとそうだったし、これからもずっとそうなのだろう。
だけど、それは別段恥じるようなことじゃないと私は思う。誰だってそうしているし、大人になるにつれてそういうのが段々上手くなっていくものだから。
少なくとも、私はそう思うから。
だから私は今の私が嫌いじゃないし、なんだったら誇りに思ってすらいる。
けど、彼はどうなのだろう? 彼は彼自身のことが好きなのだろうか? 気になる。
誰とも交わらず、自分のことさえ好きでいられないとしたら、人生はたぶん地獄だ。
ただ同じことを繰り返すだけの日々なんてつまらない。そういう友達は大勢いる。けど、実際に現実を捻じ曲げるような行為をする人間なんて希。
ほとんどの人は大抵の場合、退屈で投げ出したくなるような人生でも賢明に生きている。私だってそうだ。
なぜならそれは、家族や友達や恋人がいるから。そういう人たちがいるから、退屈でも何でも、少しでも幸福を感じることができるのだ。
そういう意味では、私はすごく幸せ者なんだろう。だって友達も家族もいる。恋人は……これから作る予定。だけど未来は無限に広がっているのだから、今から焦る必要もなしだ!
でも、あの人は……どう、なんだろう?
私は今日も、彼の背中を目で追っていた。
この不思議を、解き明かしたくて。
いかがでしたでしょうか? 登校が途切れがちになって申し訳ありません。これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします!