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怪我の予防法

昔、ベテランの組立作業者である伊勢さんに一個教えてもらったことがあります。

何かといいますと、物の持ち方です。

クレーンを使うまでもない、ちょっとだけ重たい荷物を、

自然にこう、両手で持ち上げて、それをテーブルの上に置くときです。

このとき、ともすると指を(荷物の底と、テーブル面で)挟んでしまいます。

それを未然に防ぐために、伊勢さんは、物を持つとき、こう、指をちぢこまらせて、極力、下敷きになる確率を減らすようにして持つ、と言ってました。

それ聞いたときは、見えない所に、なんて細かい配慮をするものだ、と感じ入りましたが、

そんな伊勢さんが指を怪我した。


どんなベテランが、対策を用意してても、怪我する時はするのだと思わされましたが。


実は、持ち方という、この話を聞かせてくれたのが、まさに、その怪我をしたときなのです。

こんな注意をしてたのに、怪我してしまったよ、という話の流れで、教えてもらった。


自分が怪我してしまってから(例えば指を欠損してから、あるいは死んでから)怪我の予防法を教わっても遅いのですが、でも。

これ、伊勢さんが怪我してなかったら、私は教わらずじまいです。

そう思うと、なんか不思議な気持ちがします。


安全第一とか、安全には注意しましょう、とはよく見たり聞いたりするフレーズで、つい聞き流してしまいがちですが、

これ、実際に怪我した先人が事前に私に忠告してくれてるんだよ、と捉えなきゃならん、と思います。


なるべく、専用の装置を使い、手作業をなくしましょう。

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