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一方、その頃

今回は視点変更山盛りにゃ



「お、フウ待たせてごめんね」


無事異世界に戻ってこれた僕たちを待っていたのはフウのお腹への頭突きだった。

独りが辛いのはこれまでの経験上痛いほど見にしみてわかっている。


けれど、フウを地球に連れて行くのはどうしても危険があるから反対だった。

ヒルデはまだ人になれるからいい。

だけど、フウがもし魔物の状態で見つかったら政府は確保しに向かって来るだろう。

そしてもしそうなってしまった時、今の僕にフウを守るだけの力がないこともまた事実だ。


魔物が人と一緒にいることも普通ではない。

前にヒルデも言っていたが上級の魔物ならともかくゴブリンレベルの魔物にそんな知能など存在しないからだ。

そして、上級の魔物は人に従うなどといったことを良しとする事はほとんどなく、また人の方も討伐することで経験値を得ようとするだろう。


そしてその常識はこの異世界にも存在する。

結局フウが気兼ねなく外を歩き、飛ぶことができる場所は現時点ではどこにも無いのだ。


……そんな常識が、いつかは崩れると思っているだけじゃいつかなんてやってこない。


「お腹も空いたでしょ。美味しい料理買ってきたから家の中で食べよっか。といっても僕たちはもう食べてきちゃったんだけどね」

「私はまだ食べれるぞ」

「ヒルデは逆に食べすぎだよね」

「キュ、キュ〜」


押し付けてくる翠色の柔らかな頭を撫でながら家の中に入った。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


時は遡り、真尋がエピドールから去った昼過ぎ。

ルドルとサーシャはベッドに寝転がりながら話し合っていた。


「それで兄ちゃんがいない間どうするんだ?」

「そうね……ジャックさんはもう私たちのことをここの領主に伝えに行ってるはずよ。この都市最高戦力からの通告を無視する筈もないから、既に私たちの情報は渡ってると考えたほうがいいわ」

「成る程ね。じゃあオレ達は目立たない方がいいのか?」


サーシャは少し悩むように考えてから言う。


「いえ、どちらにせよマヒロお兄さまがエピドールから出て行ったことは遅かれ早かれ知られるはず。私たちは道中で拾った奴隷っていう設定で相手に伝わってるからそこまで親密な関係ではないと思ってるんじゃないかしら。だから普通に行動しても問題はないと思うわ」


せっかくマヒロお兄さまがお金も置いてくれている事だし、と机の上に置いてある貨幣を見る。


「何ヶ月ぶりかの人が住む都市だし、取り敢えず情報を集めましょう。マヒロお兄さまの為にもね」

「りょーかい。じゃあオレはいつも通り護衛でいいのか?」

「ええ、頼むわ」


部屋のキーを取り二人は部屋から出て行った。


そしてその数時間後、夏の日差しが地平線に消えた頃。

二人は疲れた顔をして部屋に戻ってきた。

そのまま倒れこむようにしてベッドに横になる。


「途中からめっちゃ暑くなったな……」

「ええ、マヒロお兄さまの魔法がかかっていたのをすっかり忘れてたわ……」


それでも、必死に聴き集めた情報をもう一度振り返る。


「政変が成功していたなんてね……」

「ああ、結局第二皇子の一人勝ちになってたんだな。いや、既に皇帝か」

「ええ。それに今はまだ戦争にはなってなかったけど来春には戦争を仕掛けるっていう噂もあるみたいね」

「そんな準備期間、あいつが用意させると思うか?」

「いえ、十中八九攻めて来るならこの夏が終わってからすぐのはずよ。冬は兵糧が集まりにくいから短期的な戦にも向いてるし」

「だよな。でもそれはこっちも分かってる筈だぜ」

「そうね。でも、連合にとってこの戦争はかなり不利よ。なにせ戦争に全戦力を注げないわ。これまでの周期からして氾濫が起こる可能性が高い。だからエピドールは後ろにも注意を向けとかないといけない」

「でも、その氾濫ってヒルデの姉さんが潰したやつじゃない?」

「ええ、でもそれを信じさせることが出来ると思う?寧ろこの都市に私たちみたいな不審者が入れただけで奇跡よ」

「そっか……戦争負けて欲しくはないんだけどな」


ルドルはまるで最早結果は見えてるとばかりに言う。


「勿論私も帝国なんかに負けて欲しくはないわ」

「せめて氾濫の対処は必要ないってことを知らせられるだけでもだいぶマシになると思うんだけど……ジャックさんが出張るだけで戦力もだいぶ増えるだろ」

「そうね」


そう言ってサーシャは壁の方にちらりと視線を向けてすぐに元に戻す。

そしてその後も話し、夜は更けていった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「……と、元奴隷の二人が会話をしておりました」


月が上り、街が寝静まった頃。

領主の館、二階の一室で全身黒服の人が喋っている。

高い声から女性と見受けられる、監視の者からの報告にバルダーは髭に手を当てた。


「ふむ……お前。バレてたか?」

「いえ、少なくとも個人としての存在に気づかれてはおりません。しかし壁の方を一度見たので推測で監視が付いていることは判断した可能性はございます」

「そうか。よし、今日は下がっていい。引き続きあいつらの監視を頼む」

「了解致しました。では失礼致します」


そして部屋から文字通り消えたのを確認し、頭をかいた。


「氾濫が潰されてる、か。嬢ちゃんが監視に気付いた上でオレに伝えようと思って言ってたのはまず間違いねえ。それに戦争についても正確に認識してるな。奴隷になる前の素性も気になるが……一度会ってみるのも有りかもしれん。しかし、残りの二人は何故エピドールから出て行ったのだ?残った二人の会話からすると近いうちには戻ってくるらしいが、寧ろそっちの方が不安だな。……こんな時お前がいてくれたら良かったんだがな、カズヤ」


再び思考の渦に入り込んで行ったバルダーは結局今日も夜が更けるまで仕事に打ち込むことになった。



今週は色々と忙しかったため次の更新は水曜か木曜あたりになります……にゃ

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