ヒルデとお買い物
にゃは
剣虎の横に降り立った僕は動かなくなった彼に一礼し後ろに振り返る。
二人とも当然とばかりに頷いて拍手した。
「凄いじゃないか」
「ええ、魔力に差はあるでしょうが魔力操作に淀みがなかったですね。流石は真尋です」
手放しに褒めてくれるのに頰を掻いて笑う。
「近接戦闘は拳闘士型にしたんですね。てっきり私は魔法を使って倒すのかと思っていました」
師匠に教わっていたのは座学、さらに言えば魔法分野のことばかりで逆を言えばそれ以外は教わっていない。
師匠は今の時代には珍しい、魔法特化の魔法使いだからだ。
今の時代、地球の魔法使いの大半は近接戦闘も行えるように訓練している。それは、魔法を鍛えるといっても鍛えれる場所は知識と魔法操作に限られていることが理由に挙げられる。
魔法分野の知識は確かにあるだけで役に立つ。
だが、僕達の相手は同じ地球人だけではない。
魔力が人より多く、魔力操作に長けたエルフや身体能力が極めて高い獣人、更に上を見れば悪魔や天使といった想像上の生き物までこの地球には存在している。
そんな奴らを相手に、もたらされた魔法技術のみを手に戦い勝てるわけがない。
エルフ相手ならば魔法そのもので負け、獣人相手ならば魔法を撃つ前に身体能力の差で地面にキスする事になる。
そうならない為に、今の時代の魔法使いは身体を鍛え近接戦闘の技術を磨き、魔法を撃つ為の時間を稼ぐタイプが主流となっているわけだ。
もちろん、それとは逆に近接戦闘中心で戦い、魔法は補助に徹する使い手もいるがそれはまた別の話。
「師匠が撮影した映像は誰の手に渡るか分からないですからね。自分の魔法属性含めて、隠せるものは隠しておいた方が今後のためになりますから」
「流石だな。全ての行動が今後に活きてくるのだ」
僕がいった言葉にヒルデがうんうんと頷く。
「ええ、その通りですね。では私は卒業の手続き等をしに校長室へ戻りますので名残惜しいのですがここでお別れです。明日の朝には準備しているので、卒業証書を取りに来てください」
「はい、今日はありがとうございました」
僕の頭を軽く撫でて、師匠は時空魔法で帰っていった。
「よっし!これで卒業も出来るし師匠っていう協力者も増えたわけだからこれからの行動が楽になるぞ!」
「もう直ぐ夜になるわけだが、向こうの世界に帰るのか?」
「いや、ショッピングモールでサーシャに頼まれてた食材とその他欲しいものが見つかったら買おうと思ってるよ。フウを向こうの世界に残してきたのは心苦しいけどもう少しだけ待ってもらおう」
そうして僕達はショッピングモールまでやってきた。
ヒルデは巨大な建物の中に無数の店が並び、そこらじゅうに光が散りばめられている光景に眼を見張る。
やっぱり最初はみんな驚くよね。ルドル達もはしゃいでたし。
「これは凄いものだ。人類の可能性を見た気がするな」
「あはは、確かに向こうの世界よりかは確実に文明が進んでるからね。今日は時間もないから手っ取り早く行くよ」
そして向こうの世界にはない調味料や非常食、お菓子などを買い物かごに片っ端から詰め込んで会計を済ませる。
こういう時、魔法鞄のありがたみが実感できる。
「ちょうど今福引きをショッピングモールでやってるので、お帰りの際ぜひチャレンジして見てください」
と会計のレシートと共に福引き挑戦券が5枚渡された。
挑戦券には『猛暑に負けるな!勝利を掴め!』というキャッチフレーズとイラストが描かれている。
「へえ、10000円で一回福引きができるのか……それだけあって景品も豪華だね」
「福引きというのはなんだ?」
「ほら、イラストで福引きの機械があるでしょ?この中にたくさんの小さな玉が入ってて、この機械を回すと一つ玉が出てくるんだ。その玉の色によって景品が貰えるんだよ」
その後もショッピングモール内を見回ったが、特に欲しいものも無かったからフードコートで夜ご飯を食べる。
僕が頼んだのはローストビーフ丼。薄く切られたローストビーフが重なってその頂点に卵の黄身が乗せられている。
黄身を箸で縦に割くと、中からはとろりと君が溢れローストビーフの赤を塗り替えていく。
ヒルデが頼んだのは牛丼にラーメン、ハンバーグなど実に様々なものだ。
それぞれを大きな口でバクバクと放り込んでいく様子はむしろ何処か小気味よいものですらあった。
というかヒルデの食事代だけで5000円もかかってしまったよ、とほほ……
食事を済ませた僕達は出口に向かった。
そこではちょうど先ほど言っていた福引きが行われていて、人が数人並んでいる。
そして福引き台の後ろの垂れ幕には、
特等 (黒色) 100倍拡張魔法鞄 1本
一等 (赤色) 最新レジャーセット 1本
二等 (青色) 商品券50万円分 2本 (済)
三等 (黄色) 家電カタログ 3本
四等 (ピンク色) 液晶テレビ50インチ 4本 (済)
五等 (緑色) 商品券5000円分 10000本
六等 (白色) 商品券1000円分 1000000本
と景品が記載されている。
(済)って書かれているのはもうあたりの玉が排出されてるってことだろう。
にしても、特等はかなり景品としては豪華なんじゃないだろうか。
確か100倍で200万くらいしたはずだ。
折角だから僕らも福引きの列に並ぶ。
暫く並んでいると、福引きのスタッフさんが手持ちサイズの鈴をカンカラカーン、と振った。
「おめでとうございます!三等の家電カタログが当たりました!」
と言っているからどうやら僕らの前にいた人が三等を当てたらしい。
頭をペコペコ下げながら薄茶の髪のサラリーマンぽい若い男性が横のテントに移動していった。
そして三等の横に新しく(済)と赤いペンで書かれる。
「これは当たらないかもね」
特に欲しいわけではないが、カタログは見て見たかった。
一応、目玉の魔法鞄と一等のレジャーセットは残っているしできる事なら当てたいんだけど……
「ヒルデ引く?」
「良いのか?」
「良いよ、やってみたい感じの顔してたし」
僕がそういうとヒルデは顔を横に背けた。
それに、こういう時の僕はとにかく当たらない。
以前商店街で同じ感じの福引きがあったけど、30連で五等が当たった時はスタッフのおばちゃんも同情してう○い棒をオマケしてくれた。
あの時のう○い棒は美味しかったなぁ
「おっ、これは当たりじゃないか?」
僕が暫く昔のことを思い出し感傷に耽っていると、ヒルデの声で現実に戻ってきた。
いつのまにか僕達が最後の福引き挑戦者らしい。
まあ、もう閉館間際だし仕方ないかな。
そういえばヒルデは何を……と思い僕は彼女の方に目をやり、福引き台に視線を落とす。
するとそこには、三つの白い玉の隣で黒と赤の玉が一つずつ、白のトレイの中に浮かぶかのように存在した。
ねえ、知ってる?
こういうガチャとか福引き、主人公補正が存在するんです。
区切りどころ見つからなかったので、ぶっつん。
次の投稿は木曜かにゃぁ




