奴隷からの解放
短いにゃ
それぞれが身分証明書となるプレートをしまい、冒険者ギルドを後にする。
「じゃ、次は奴隷商人の所だったな」
奴隷商人など薄汚い路地裏で店を開いているのだろうと思っていたけど、足を止めたのは冒険者ギルドから3分もかからない位置にある、南通りの店の一つだった。
先ほどの冒険者ギルドと同じように看板がかかっており、檻に入った人間の絵が彫られている。
「ここだ。話をつけて来るから少し待っていてくれ」
ジャックさんはそう言って店の中に入る。
中でどんな話をしていたのかは知らないが割とすぐに彼は出てきた。
「丁度この店のオーナーが空いていたぞ。奴隷を解放することは伝えて来たから、後はそっちでやってくれ。終わったら後は取ってある宿に向かうから逃げるんじゃねえぞ」
「逃げませんって。信用ないなぁ」
「念のためってやつだよ」
苦笑いしながら入れ替わるように中に入った。
店の中は小さな受付が一つあり、そこで次に行くべき場所を教えてもらう。
今さっきジャックが僕達のことを伝えたようで、直ぐに7番の部屋に行くように伝えられた。
廊下で部屋の番号を確認しながら進んで行く。
どうやら一番奥の部屋のようで、ノックをしてからノブを回した。
「失礼します」
部屋にはソファが二つ、向き合う形で置いてあったがそれ以外には何も置いていない。
そして向こう側のソファに座っていた、丸メガネを付けた細身の男性がすっと立ち上がりこちらに一礼した。
「初めまして。私はこの奴隷商店のオーナーをしております、ラチノースと申します。以後お見知り置きを」
「これはご丁寧に。僕はマヒロ。しがない商人をしております」
「ええ、話は先ほどジャック様からお聞きしております。まずはお掛けください」
勧められたとおりに僕が椅子に座ったのを確認してからラチノースさんは浅く腰掛ける。
他の3人は僕の後ろに立ったままだ。
「それで、本日はそちらの少年少女の奴隷二人を解放しに来たということで間違いありませんか?」
あくまで念のため、といった感じに聞いてくる。
まあ、連絡は通っているのだろうし当然だろう。
「ええ。彼らには様々な面で助けて頂きましたから」
「成る程。それでは手数料の方がこちらになります。お確かめください」
そこに記載されていた金額は一人当たり金貨5枚。
二人分で日本円にして100万円といったところか。
ここは安いと思うべきなのかわからないけど、幸いにもお父さんの置いていた金額からすれば余裕で足りるから直ぐに二人分、金貨10枚を出してテーブルに並べる。
彼はそれを恭しく数え上げ、右脇のポケットに収納した。
「はい、確かに頂戴させて頂きました。それでは、そちらの魔法を解除させて頂きますのでお二人をこちらに」
「さ、行っておいで」
ソファの後ろにあった少しのスペースの上に二人が入る。
ラチノースさんがそれぞれの首に指を当てると、指から魔力が流れ込んで行き首にあった紋様の色がどんどん薄くなっていき、最後にはパリンと小さな音を立てて首元から完全に消滅した。
魔法式の構造なんかは見れなかったのは残念に思ったけど、それ以上に二人が奴隷という身分から解放されたという事を嬉しく思った。
二人が首元に手を当てて確認している中で、ラチノースは先に僕に声をかけてくる。
「おめでとうございます。これで無事お二人の身分は奴隷ではなくなりました。私はお先に失礼いたしますが、奴隷がご入用になったら是非当店をご利用下さい。それでは失礼させて頂きます」
「いえいえ、心遣い感謝します」
終始柔かな笑顔を浮かべていた彼は一礼をして先に扉から出ていった。
「兄ちゃんっ!」
「有難うございます!」
ルドルとサーシャの二人が他に誰もいないのを確認してこちらに抱きついて来た。
ドッと僕は二人の衝撃を受け止めて抱きしめ返す。
二人の目には軽く涙がたまっていた。
「二人ともとっても頑張ってくれたからね。それに、これからも一緒にいるでしょ?何か目的があるっていっていたけど、僕も力になるから頑張って生きていこう」
「勿論です!」
それから暫くはお互いに抱きしめあっていたけど、いつまでもここにいるのは待たせているジャックさんにも店にも迷惑がかかるのでさっさと店を出ることにする。
まだ外は明るく、太陽はようやく中天に差し掛かった頃だろう。
店から出て来た僕達に気が付いて店の端に立っていたジャックが近付いてきた。
「お、早かったな」
「奴隷から解放するだけでしたから。お待たせしてすみません」
「全然待ってないから大丈夫だ。そっちの二人は無事奴隷の身分から解放できたんだな。二人ともおめでとう」
店の前で話していると、空腹を訴えるかのように小さく僕の腹の虫が鳴いた。
それを聞いてか、ジャックさんは少し笑って言った。
「宿はここから近いからもう少しだけ我慢してくれよ。じゃ、そろそろ移動するか」
次の投稿は木曜日にゃ




