僕達も今日から冒険者
にゃはは
都市エピドールの南通りは喧騒の熱気に包み込まれていた。
先程ジャックさんが言っていたようにエピドールのさらに南には魔素の森しか存在しないため、必然的にエピドールの南半分はそう言った業者が多く存在している。
酒場に屋台、武器屋に娼館といった店が立ち並んでおり、南通りを通る者は風貌からして荒くれ者が大半を占めるのだ。
「あー、ここはいつもこんな感じなのですか?」
昼間なのに酒場で樽型のジョッキを持って乾杯をしているテーブルを見ながらジャックさんに聞いた。
「まあな。その分北通りはかなり綺麗な街並みになっているぜ。ここの住民は大半が冒険者か、冒険者相手に儲けようとする奴だから自然とこうなっちまうのさ」
「成る程。冒険者ギルドもここの近くに?」
「そりゃそうだろ。後5分もすれば着くさ」
そう言って屋台が立ち並ぶ通りを抜けていく。
周りから漂って来る、香ばしい匂いがちょうど昼ごろのお腹を刺激してきた。
絶対今度ここに寄ろう……!
と心に固く決めてから後を追って歩いて行くと、一際大きな建物の前に到着した。
看板には剣と杖が交わった紋章が描かれており、横には大きく冒険者ギルドと書いてある。
「ここだ」
ギィッと扉をひらいて中に入ったので後に続く。
そこで僕の視界に入って来たのは予想外の光景だった。
外の喧騒と同じように正しく冒険者といった格好をした者たちが互いに酒を飲み、大声を撒き散らして喧嘩などは日常的に起こる。
……そんな光景を考えていた僕だったが、実際に入って見ると視界内に殆ど人は存在せず、左手にある受付では何かの事務仕事をこなす受付嬢が数名、奥にある依頼が貼ってあるのだろう依頼板に数名の冒険者らしき者たちがたむろしているのみだった。
「あ、ジャックさんどうしたの?」
受付が並んでいる中、一番手前の受付嬢がこちらに気付いたようで手を振って来た。
ここにたどり着くまでにもジャックさんmは度々都市の人に声をかけられているのを見て来たから、彼の人望がかなり厚いことが分かる。
「ああ、こいつらの冒険者登録を頼みたくてな」
「へえ、ジャックさんが出て来るなんて訳ありですか?」
「勝手なことを言うんじゃねえ。っと、聞いておきたいんだがそっちのチビ二人は奴隷解放した後どうするんだ?」
チビ二人というのは勿論サーシャにルドルだ。
「折角なので、一緒に冒険者パーティを組む予定になってますよ」
「ならついでに4人分やっておいたらいいと思うぞ」
「助言ありがとうございます。というわけで受付嬢さん、僕達四人の冒険者登録をお願いしたいのですが?」
「了解ですっ!あ、冒険者の登録に当たって一人あたり銀貨10枚が必要になりますが良いですか?」
その言葉に従って金貨一枚を渡す。
彼女は受け取ると、銀貨60枚を袋に入れて返して来た。
「はい、ありがとうございますっ!お釣り銀貨60枚はきちんと数えてくださいね。では冒険者登録に移りますので、皆さんこちらの紙に必要事項の記入をお願いします!」
僕はこの世界の文字は知らないのでそこはサーシャに書いてもらう。
意外だったのはヒルデがきちんと文字をかけたことだ。
聞けば、長い間生きてると暇だったからついでに覚えてみたということらしい。
僕も将来的には覚えようとは思っているものの、つい忘れてしまうのだ。
名前に年齢、レベル、特技などを記入したものを受付嬢に渡すと、十分ほどお待ちくださいと言って奥の方に消えていった。
彼女が再び戻って来た時、その手には4枚の鉄の板と、それを入れるためのものであろう腰につけるホルダーが握られていた。
それを一つずつ僕らの手に渡していく。
「それが皆さんの冒険者としての身分を証明するカードになります!冒険者にはランクがあり、最初はどのような人物であってもアイアンからのスタートとなっています。そこから順にブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ダイアモンドとランクが存在しますね。このランクは依頼の達成率や魔物の素材の売り上げによって上げることが出来ますので皆さん頑張ってランクを上げてくださいね!次に冒険者の説明をさせてもらいますね」
彼女は入り口から一番奥にある板を指差す。
「あそこにあるのがシルバーまでの依頼を貼る依頼板です。依頼には2種類あり、依頼の紙の右上に「常時」という判子が押されている場合は受付にわざわざ依頼を持ってこなくても大丈夫です!勿論判子が無い場合は受付にその依頼を持って来てくださいね」
「シルバーまでってことは、ゴールドからの依頼はどこにあるの?」
「ゴールド以上の依頼は2階にある依頼板に貼られていますので、その際は活用してください。また、依頼に関してですが個人で受ける場合自分のランクのもの、もしくはもう一つ下のランクのものしか受けることができないので注意して下さい!パーティなら一番ランクが高い人のランクの依頼まで受けることが出来ます」
他にも依頼の受け方や依頼金の話、ギルド内の施設の紹介などをされる。
魔物の素材が売れるらしいが、魔石は自分で持っておきたいし氾濫でヒルデが倒した魔物の素材は跡形も無くなっていたので今回売れるものは持っていなかった。
「あ、後依頼は朝6時に更新されるので割のいい依頼は取り合いになりますから頑張って下さいね!ついでに何か依頼を受けて行きますか?」
「今日は特にそのつもりはないからいいや」
「了解しましたっ!ではこれで冒険者ギルドの説明は終わらせてもらいますね。私たち冒険者ギルドは貴方達を歓迎致します!」
そう言われ、どこかむず痒く思いながら僕達は冒険者ギルドを後にした。
次の投稿は火曜日にゃ




