異世界で生きる覚悟を決める
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僕は封筒を片手にしばらく呆然としていた。
しっかりしなくちゃ。もう父さんは居ないんだ
一度緩んだ気持ちを再び締め、気持ちを固める。
そして冷静な状態でもう一度書いてあった内容を頭の中で思い返した。
……えっ?
さっき僕にとってとんでもないこと書いてなかったっけ?
急いで僕はしまった手紙を取り出し該当する箇所を探し出す。
これだ。
僕にも倒せる魔物がいる。
僕が……レベルアップ、出来る?
「ははっ」
乾いた声が漏れた。
それくらい僕は、すぐに信じる事ができなかった。
でも、父さんは間違った事がなかった。
「どうしよ」
僕は一人のときあまり声を出すタイプじゃないんだけど、今回ばかりは驚く事が多すぎる。
父さんが死んだばかりだっていうのに、僕は自分の手が震えているのを感じてしまった。
いいのかな……
何度も食いしばり、諦めた。
レベルアップの渇望だけなら、僕は誰にも負けてない。
そんな自負が、全く誇れないそれが僕にはあった。
いいんだよね?
急に開けた、自由という名の僕の視界。
雛は親が食糧を与えてくれる間は親の庇護下にあるが、自分で食糧を初めて取りに行く時迷ったようにその場を歩くという。
それと同じ状況が今の僕。
父さんが遺してくれた、プレゼントなんだ。
それを使わないなんて何より父さんが浮かばれない。
僕は、この夏休みでレベルアップするんだ
長いこと悩んで僕は決めた。決めてしまった。
「となると準備しないといけないよね」
今日は珍しく舌がよく回る。
準備って具体的には何を用意しようか。
下手な事をして殺されたら目も当てられないだろう。
じゃあ今日は探索はやめて準備をしよう。
冷静に、いきなり未知の世界に踏み込む事をやめるように判断する。
そして今度こそ封筒をポケットにしまった。
この夏休みはここが僕の拠点になるんだよね
そう思い先ほど軽く見回ったのを、今度はじっくりと家の構造を理解するために歩き回る。
リビングは大体50畳くらい。天井も4メートルはありそうだから背に高いものでも運びこめそう。
で、リビングに隣接してあるのがキッチンとベランダ。
キッチンは僕が知ってる地球の家と同じ型のだからここで料理もできる。
ベランダは上に屋根があって半室内って感じだけど開放感があってテーブルと椅子のセットも置いてあるから外での食事も楽しめそう。
で、2階はさっき見た通りのベッドルーム。
部屋は4つあったけど、使用感があったのは一つだけ。
4部屋ともにベッドは置いてあったからもし人が増えても使う事ができる。
まぁ、人を連れてくることなんて無いだろうけど。
あ、あとは廊下にトイレがあった。
とまあ家の中はこんな感じかな。
今更だけど、この家かなり大きい。
こんなところで一人って結構寂しいんじゃ……
あ、あと外に露天風呂があった。
ここは明日から使おうと楽しみにする。
家の構造を再確認した僕は父さんが書いていた倉庫に向かった。
倉庫は家の窓からも見えてたけど結構大きい。
外から見たら家と比べて一回り小さいくらいだから個人倉庫にしては相当でかいと思う。
倉庫の扉をゆっくり開ける。
「げほっげほっ」
ごおっと中から埃が一気に出てきて顔に直撃した。
かなりの量が目と口に入り、思い切りむせる。
どうやらかなり長い間使われてないみたいだ。
埃が入らないように、口と鼻にハンカチをまいてから中に入った。
すると僕の身体を冷気が包み込んだ。
入り口のスイッチのところに照明のボタンぽいのがあったのでそれを押してみる。
ヴォン、と天井についた照明が一斉に点灯し、暗かった倉庫の中が明るく照らされた。
「うわぁ」
中の様子を見て僕は思わず唸る。
想像しているより遥かに凄かった。
倉庫も1階と2階に分かれていた。
1階には入り口から20メートルほどのところまでは多分解体場として使ってたんだろう、そこらに血の跡が付いており壁には大小様々なナイフがかけられている。
解体場から奥は素材を入れておくのだろう、幅1メートルの通路以外には木箱が所狭しと置いてあった。
木箱の中身が気になったので近くにあった一つをそぉーっと開けて中を覗き込んだ。
中身を見て僕は仰天する。
そこには細長い白色の束が大量に置かれていた。
「嘘……アカネ草の根っこ!?じゃあこっちは……若睡蓮の花弁まであるの!?どれも地球じゃ準一級の高級素材なのにこんなに沢山!」
一人なのに、思わぬ素材の思わぬ量に叫んでしまう。
しかしそれも無理はなかった。
そこにあるのは地球では需要はあるが生産量が少ないため、その所持と使用は魔法政府に申請を出さなければいけないとされる程の貴重な素材。
それが目の前の木箱には山のように入っているのだ。
驚かないという方が無理があるだろう。
一通り木箱の中身を【鑑定】で調べ終えた僕は嘆息する。
中にあったのは最初に見た木箱の中身と同じような高級素材ばかりだった。
最初にこの倉庫に入った時に感じた冷気はこの素材の新鮮さを保つためだったのだと今更ながらに気づいた。
これは……どうしよう
目の前に金の山が積まれたのと同じ状況。
そこで僕は頭を抱えた。
こんなにたくさんの所持なんて魔法政府が認めるわけないじゃん。父さんどうしてこんなに……
魔法政府というのは、異世界から異種族が来て魔法が伝えられた時にできた、いくつもの世界の共通機関で、魔力、魔法、特異能力等の全ての技術に関するものを扱っている。
その業務は全知的生命体の戸籍を管理し、魔法や特異能力などの知識を集約している。
また、全国民がそこに登録すると同時に、戦闘能力が少しでもある者は序列何位という風に組み込まれることになっている。
その序列は明確なランク付けであり、上位層に地球人の名は殆ど載っていることはない。
そう考え、あれ?と思う。
よくよく考えてみればここは異世界、しかも魔法政府の管理下にはない異世界だ。
そんなところにある素材を一々届け出る必要などどこにも無い。
そう思い僕の気持ちは一気に軽くなった。
そして再度父さんの手紙を思い出す。
『今の地球からすれば魅力的なものが山ほどある』
確かそう書いてあったはずだ。
先ほど僕は気にも留めなかったが、こういう意味だったのかもしれない。
僕は軽い足取りで2階に上がった。
2階は1階と違って両側の壁にオープン型の棚が大量に置いてある。
その棚一段一段には多量の防具や武器が置いてあった。
防具の棚には皮鎧や金属鎧、鱗なんかで組み合わさった魔物の素材で出来たブーツやマントなんかが一つ一つ余裕を持って置いてある。
それぞれ手入れがきちんとされており、使用感はあるもののまだまだ壊れに繋がる傷なんかは付いていなかった。
武器の棚には見た目が控えめな、似た感じの剣が複数本立ててあった。
そのうちの一本を手にとってみる。
ズッシリとした重さだが、普段のトレーニングである程度は鍛えていたのでブレさせずに構えることができた。
とは言っても剣なんて実際に振るったことなんてないから振った瞬間に振り回される感覚にとらわれる。
「おっとっと」
不安定に暴れる剣についていくように身体がついていかず、踏ん張って剣を止めた。
これじゃダメだね。魔力なしでもっとちゃんと振れるように明日からのトレーニング気合い入れなきゃ。
僕は明日からのトレーニングを増やそうと心に決めた。
皆さん何か金属の棒持ったことってありますか?
あ、バットでもいいです。あれ重いですよね〜
明日は二話投稿する予定です!
一話は10時、二話目は16時に投稿します(^^)
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