鍵を壊そう
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ありがとうございます!
サーシャ達に言った僕の事情を改めてヒルデにも掻い摘んで教えた。
「成る程、この世界とは別の世界の住人とは恐れ入った。それなら私達竜族の秘術である人化の存在を知っているのも納得がいくな。少し待っておれ。取り敢えず人化しておかねばなるまいな」
広場で話し込んでいた僕らに、そう言ってヒルデの身体が光り始めた。
その光は次第に小さくなっていき、暫くして人の形をした光となる。
そして、その光が完全に解けたとき、ヒルデはそこに立っていた。
「どうだ?中々のモノであろう?」
「……って、え、女性!?」
一瞬前まで風竜として居たその場所に今いるのは端的に言えば女性だった。
しかも、当然のことではあるが竜である時には服など着ていないため、先ほどの傷口に巻いていた包帯だけが微かにその身体つきを隠しているが、それが逆にエロくする演出としか思えないほどにしか巻きつかれていない。
しかも見られる、じゃなくて逆に見せている、と言った感じで一切を隠す様子もなく堂々としている。
「なんだ、私は竜としても人としても女性だぞ?気付いてなかったのか」
「というかヒルデさん服を着てください!」
サーシャがそう言って、ヒルデを隠すように目の前に立つ。
「女性なら、妄りに裸体を見せるものじゃ有りません!」
「そうであるのか?割と自慢の身体なのだが」
「う……確かにこのボリュームは……ってそうじゃなくて!例えそうでもダメなものはダメです!ほらマヒロお兄さまにルドルはさっさと服を持って着てください!お兄さまのが一番大きいはずなのでそれを!」
「りょ、了解」
サーシャの言われた通り僕たちはそそくさと家の中に戻って、タンスから服を出した。
といっても僕のでさえ小さいから、見た感じ170センチは有りそうなあの凄い体に入るかは微妙なラインだけど……。
急いで持っていくと、服を奪うように取られ、ヒルデが着替えている間僕たちは後ろを向かされていた。
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「おお、これがはんばーぐと言うやつか!先程からかなり良い香りが漂っておったから気になっておったのだ!」
「保存用にいくつか用意しておいてよかったです」
うーん、ヒルデは結果的に服を着ることには成功したけど、やっぱり少し小さそうかな。
特に胸あたりの主張が激しい。
これはそろそろこの世界の街にも行っていい機会なのかもしれない。
そんな目に毒な環境で嬉しくもどうしよう、といった感じだった時、折角の夕食中だったので一緒に食事でも、となり今に至る。
サーシャがマメな性格で助かった。
いや、もしもの時は僕も新しく何かを作ってただろうけど今日はさすがに疲れたからね。
「じゃあヒルデも一緒に住むってことで良いんだよね?」
「うむ。ただ色々と用意するものがある故一度現在の住処に戻ろうとは思う。明日の朝にここを出て夜あたりに戻ってくるだろう」
「分かったよ。じゃあ寝室の準備だけはしておこうかな」
「あ、それなら私がしておきますよ?」
「じゃあサーシャ、右奥の空いてる部屋でお願いしても良い?」
「了解しました」
サーシャが上の布団を準備しに席を立った。
ついでに言っておくと、右手前が僕の寝室、左手前がルドルで左奥がサーシャの寝室になっている。
というかこれで寝室は全部埋まっちゃったんだよね。
まあむしろ今の状況は想像なんてかけらもしてなかったから、仕方ないよね。
「そう言えばマヒロ少年よ、先程魔力に鍵がかかっておるなどと言っておったか?」
ハンバーグを美味しそうに食べながら、ヒルデはそう聞いてきた。
「それは言ってたけど、どうしたの?」
「私なら解除できると思うが、どうする?」
「……え?」
「何を不思議そうな顔をしている。これでも千年生きた老竜だ。そこのルドル少年のように魔力が見える訳ではないが、人化も容易にできる程度には魔力操作は得意だぞ」
と、自慢げに言ってきた。
「勿論、最初は鍵を見つけるところから始めなければならんが、ルドル少年もいれば一瞬で見つけられるだろう。自分で言うのもなんだがかなりの魔力を持つ私が仮に解けなかったらそれは、もはや神器レベルの鍵と言ってもいいだろうな。で、どうする?」
必要な情報は全て教えた。あとはお前次第だ。
そのような視線を僕に向けてくる。
僕にもし本当に鍵が掛かっていたのなら
僕にもし、魔力があったなら
僕にもし、力があったなら
……僕は何故力を求める?
力など特に必要のない、平和な檻の世界で生きていればいいじゃないか
何故、僕はレベルアップを渇望したんだ
別にレベルが全ての世界じゃない
この世界でも生きていくことはできる
選択肢はこれまでとは比べ物にならないほどに増えた
そんな中で僕は何故、今までと変わらずに強くありたいと願ったんだ
そう考え、僕は思い出した。
何もできなかった、あの時の痛みを。
「鍵の破壊を、お願いします」
「ほう?良いだろう。ルドル少年、その眼でしっかり見て私に知らせよ。今からマヒロ少年の体内魔力に干渉する故、失敗せんよう私を導くのだ」
「わ、分かった!」
決意を伝えると、ヒルデはにやりと笑い、僕に横になるように伝えた。
横になると、傍らにルドルが魔眼を発動させたまま僕をじっと見つめている。
ヒルデは手から紐のような、細い緑の線を出し、ふわふわと浮遊させている。
「最後の確認となるが、本当に良いのだな?」
「勿論です」
「では力を抜いておれ。激痛が走るだろうが、それぐらいは我慢せいよ」
僕が答えると同時に、漂っていた緑の線は狙いを定めたようにピンと張り、一直線に僕の心臓に向かって刺さってきた。
刺さったのに痛みがないな、と思っていると急に心臓が締め付けられるように苦しくなり始める。
「ぐぅ……ぐぅあああああぁぁぁl!!」
「叫べ!ルドル少年、何処が鍵だ!」
「もう少し右手前……そこの平たい部分だよ!」
「よし!では魔力を注ぐぞ!」
痛い。
針で心臓全身を貫かれたより、ずっと酷い。
そんな状況が続く中で更にバキンッ、と重い衝撃が身体中に響き渡り、僕の意識はそこで途切れた。
もうすぐ5月も終わりですねぇ
6月は梅雨だから嫌だなぁと適当なことを書き連ねた後書きでございます。
次回の更新は明日の10時です。
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