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取り敢えずぶっかけちゃえ

今回は途中でサーシャ視点に変わります。

わかりやすいと思うので、本文に注釈は入れてません。



二人を背負って何とか帰ってきた僕は急いで家の棚から消毒液と回復薬を持ってくる。

ごめん、と心の中で謝ってから二人の服を脱がせて身体中についた傷跡に消毒液をドバドバかけた。

特にルドル君の背中は酷かった。

肩甲骨のあたりから腰あたりまで3本線が走っている。

いずれの傷もかなり深く、皮膚の奥の肉が生々しく見えた状態で、虫も少し湧いていた。


水と消毒薬を交互にかけて傷跡を洗っていく。

先にルドル君の方を治療しないとヤバそうだと家にも10本しか置いてない上級回復薬を一本まるまる背中の傷跡に使った。


上級回復薬はかなり効果が高めで一本30万程度の高級品だ。

取り敢えずかければこれくらいの傷なら治るはずなので、背中の傷が開かないように包帯を何重にも巻いておく。

他は二人とも小さな傷ばかりだったので一般の回復薬を使っておいた。

これで数時間もしたら傷口はふさがっているはずだ。


サーシャちゃんには申し訳ないけど、二人とも僕の服に着替えさせておく。

もともと彼女たちが着ていた服は所々が破けて服の意味を失っていた。

傷口にさわらないように慎重に着替えを完了させて僕はようやく一息吐いた。


他人の怪我の介護なんてやったことなかったけど……薬が効いてくれることを祈るしかないよね


あとは安静にしておこうと2階のベッドに運んで行く。

二人一緒がいいだろうから、横に寝かせて布団を被せた。


下に降りて「疲れたー!」と短く叫んでリビングのソファに横になった。


うぅ、汗でベトベト……露天風呂のお湯は沸かしとくとして先にシャワーで汗は流しとこっかな


いつもと違う地形を走った事で疲労が溜まった足をお風呂場の方に動かす。

汗が染みこんだ服を全て洗濯機に放り込んで、鏡と向き合った僕は「うわっ!」と驚いた声をあげて尻餅をついた。

鏡には、黒い模様が浮かんだ僕の右腕が映っていた。


そこを恐る恐る擦ってみるけどインクのように落ちることはない。

僕は慌てて【鑑定】で存在を知ろうとした。

そして鑑定結果に『契約紋』と書いてあるのを見てようやく理解した。


そっか、そういえばあの子達と契約したんだった


理由がわかったので、一安心とお風呂場に入る。

そして軽くシャワーを浴びて着替えも済ませた。


うん、やっぱりシャワーを浴びといて正解だった


シャワーでこざっぱりとした僕は疲れも吹き飛んだようで、やる気が戻ってきた。

時計を見るとまだ2時を過ぎたあたり。


夜ご飯までもかなり時間があるしいつものトレーニングでもしとこうかな


そう思った僕は外に出ていつものメニューをこなした。

あの二人が今日中に起きるかわからないが、もし起きたときにお腹が空いているだろうと思い夜ご飯はシチューにする。

体が弱ってても食べられるものがいいかな、と思いついたのはクリームシチューだった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



うーん、どうしよう


目の前で突然泣き始めたサーシャちゃんを前に困惑する。

泣くほど旨かったのかな。それならいいんだけど。


僕は泣く彼女の頭に手を置いてよしよしと撫でることしかできなかった。

少しずつ息が落ち着いて着た頃、テーブルに置いてあるティッシュを数枚とって彼女に差し出す。

それを黙って受け取り、目の涙を拭き取った。


「すいません……」

「いや、これぐらい別に大丈夫だよ。どうしたんだい?」


彼女が傷つかないように優しい声で話しかける。

でも、彼女は涙が溜まった目で僕の後ろに目をやった。

その目は次第に大きくなって行く。


「どうしたの?」


と声をかけて僕は後ろを振り向こうとする。

しかしその前に、


「姉ちゃんを泣かすなー!」


と僕の頭越しに怒鳴る声が聞こえた。

そして振りこうとする頭に響く、鈍い痛み。


僕が最後に見たのは扉の近くに置いた箒を掴んだルドル君の起き上がった姿と、それを必死に止めるサーシャちゃんの姿だった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「何やってるの!」


私は目の前で倒れた彼を守るように立ってルドルを叱る。

彼はルドルの後ろからの攻撃で気絶したようで、ピクリとも動かない。

ルドルをキッと睨んだらルドルは言い訳するように言う。


「だって、姉ちゃん泣いてたし!」

「ルドルは起きてなかったから知らないかも知れないけれど、この人は私たちと奴隷契約を結び直してくれたんだよ!それを攻撃して、あまつさえ気絶させちゃうなんて……」


弟の短慮に頭が痛くなる。

絶対怒られて、殴られちゃうよ。

あー、どうしようどうしよう。


「で、でもそいつ悪いやつかも知れねえじゃん!」

「悪いやつも何も私たちを助けてくれたのはこの人なんだよ!傷も全て治してくれたみたいだし、見ず知らずの私たちにこんな手当てしてくれる人が悪いやつなの!?」


ルドルは私の言葉を聞いて慌てて背中をさすっている。

私を庇ったときに魔物につけられた傷で到底動くことは出来なかったルドルが今身体に不自由なく動けているのはこの人が私の擦り傷と同じように治してくれたんだと思う。

それは正しかったようで、しばらく背中をさすっていたルドルはしゅん、としょげた様子で「ごめんなさい」と謝った。


「ううん、私も言いすぎたわ。ルドルは私を心配してくれただけだしね。許してくれるかわからないけど後で一緒に謝ろ」

「うん」


素直に頷いて、私のところに来た。

それを優しく抱きしめ、温もりを感じる。


私たち生き残れたんだ

ああ、でも大丈夫かな……


私は今生きていることに感謝しながら、彼がどう怒鳴ってくるのか考えて彼がずっと起きるまで頭が痛くなった。





ウェブ利用制限を解いてもらった

いえい!


次回の投稿は明日の10時だよ〜(^^)


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