起きた私を待っていたのは
今回初の主人公以外の視点でお送りしてます!
これについても感想もらえると嬉しいな。
*サーシャ視点
ゆっくりと意識が浮上していく感覚に、自分が寝ていたのを自覚する。
ただ寝た記憶はなく、いつ私は布団に入ったんだろう?
そう思いながらもゆっくりと目を開けると、私の視界には茶色の天井が映っていた。
体を起こそうと動くと、右手に何かが当たった。
ゆっくりそっちを見ると、ルドルが一緒に横になっている。
あぁ……そうか。
私たちはあのよく分からない男と奴隷契約を結んだのだ。
あの時は、もう体力が限界でルドルと共に死を予感した。
だから急に出会った見ず知らずの男にいきなり奴隷契約を結ばせてしまったんだった。
それを思い出して私はため息をついた。
私たちは7日前、主人と移動していたところを魔物に襲われた。
護衛の人もいたが、主人が殺されてから私たちは直ぐタイミング良くに逃げ出した。
その時、ルドルは私を庇って負傷したのを無理矢理にでも引きずってでも移動してきた。
私には【直感】という特異能力がある。
別に特別なものではなく、ただ漠然とこっちの方がいい、なんていうのが分かったりするのだ。
それが、これまでとは違ってかなりハッキリとどっちに逃げたら良いのかを示してきた。
少し変に思ったけれどもう何も頼れるものがなかった私たちは【直感】に従うまま進んでいった。
3日目で携帯食料は尽きた。
そこからはただひたすらに水を飲んで無理やり身体を動かしていた。
魔力を足に纏っていたけどそれでもルドルの傷口はさらに悪化していく。
5日目の朝にはルドルの意識が無くなっていた。
そこからは私がルドルをおぶって少しずつ進んでいた。
森の中を移動するのはかなり足に負担がかかっていたが、遂に履いていた靴も破れてしまった。
ささくれては大変と靴を脱ぎ、裸足で石が飛び出たり刺々した草が生えた森の中を進んでいく。
この頃になると【直感】は更に強まって、ひたすらに森の奥へ奥へと指し示していた。
正直、私は諦めかけていた。
もう7日目、私たちが助かるためには新しい主人を見つけるしかない。
【直感】を信じてついてきたけど、よくよく考えてみると森の中で人と出会う確率は道を行くより更に低い。
魔物や動物と出会っていないだけでも運が良かったというものだ。
だから、私は信じられなかった。
7日目の日が中天に昇った頃。
私たちの前に姿を見せたこの男のことが。
【直感】がそのままこの男に向いてるのを感じ取り、この男が【直感】を惑わしていたのだと考えた。
男も私たちのことを警戒していたようだったけど、私たちが今にも倒れそうなのを知って、直ぐに駆け寄ってきて「大丈夫?」と心配された。
奴隷になってからは、いや奴隷になる前もかけられたことがないほど温かい言葉だった。
だから、気付かないうちに私は男に対して弱さを吐いてしまっていた。
何やってるんだろ私……
そこから何をいったかは覚えていない。
すでに意識が朦朧としていたし、身体を支えているのも限界だった。
覚えてるのは「分かった」という力強い言葉で奴隷契約をしてくれると言われたこと。
そして私は奴隷契約の痛みでどうにか持たせていた気力も尽きて倒れてしまったらしい。
「んしょっ」
ルドルを起こさないように静かにベッドから降りる。
そして私はこれまでの強行で軋むような痛みを発していた身体がカケラも痛みを感じないことに驚いた。
多分あの男が何かしたんだろうと思う。
部屋を出ると、廊下になっていた。
あ、いい匂い
部屋から出た私の鼻が廊下に広がる美味しそうな匂いを直ぐに感じ取った。
どうやらその匂いは1階から流れてきてるみたい。
グギュルルルル
この匂いを嗅いだら私は空腹だったことを思い出した。
それに呼応するようにお腹の底からも音がなる。
誰が聞いているというわけでもないけど恥ずかしく思い、少しずつ下に降りていった。
1階に降りると右の扉が微かに開いていて、中から光と食事の匂いが漏れ出している。
この匂いと食欲に耐えきれずに、私は扉を押した。
きぃ、と音を立てて扉が部屋の中に入って行く。
中ではあの男が、エプロンを身体に巻いて両手に厚手の手袋を付けた姿で部屋の真ん中にあるテーブルに鍋を運んでいた。
彼も扉の側に突っ立ってる私に気が付いたようで、柔らかく微笑んだ。
「ああ、起きたんだね。丁度良かった。たった今クリームシチューが出来たんだよ。君も食べるでしょ?」
私は何か言おうとしたが、それを遮るようにお腹が空腹を伝えるサインを出した。
私はお腹を急いで押さえて今度こそ恥ずかしげに彼を見る。
彼は黙って笑って、椅子をひとつ引いてくれた。
「さ、沢山あるからいっぱい食べなよ」
「……何も聞かないんですか?」
鍋から器に白色の液体をよそって入れる。
それを私から一番近いテーブルの席に置いて座るように促してくる。
直ぐにでも寄って何でもいいから口に入れたいという欲を抑えてそう聞いた。
彼は、ハハハと笑って言う。
「話を聞くにしても何にしても食事をしてからにしようか。僕も聞きたいことはあるけど君のお腹がそれを許さなさそうだしね」
「ーー〜〜っ!」
私は顔が熱くなって、黙って席に座った。
私が座ると、器の横にパンが入ったバケットを近づけてくれる。
「まだ起きたばっかりだろうからいきなり刺激の強いものは食べないほうが良さそうだからね。パンはシチューにつけて食べると美味しいから好みでどうぞ」
そして彼は私の方を黙って見つめている。
どうやら私は食べるまで黙っているらしい。
私は匙ですくった白い液体をじっと見る。
これまで生きてきて白いスープなんて見たこともない。
そしてこれ程にうまそうな匂いを放つ食べ物も。
にこにこと笑っている彼を見て観念して、その白いシチューというものを、口に入れた。
「美味しい」
口からこぼれ出たのはたった一言。
これだけで全てが伝わった。
私は直ぐにスープをかき込むようにして二口三口と匙を急ぐようにして運んで行く。
ゴホッゴホッ
く、苦しい
いっぺんに食べ物を呑み込んだから、喉をむせてしまった。
すると彼は黙って私のそばに寄ってきて、水をよそってくれる。
そして私が水を飲んで、咳き込んでる間背中をさすってくれていた。
「大丈夫?」
しゃがんで、心配そうな顔で私の顔を覗いている。
初めて会った時も聞かれた、私を心配してくれている言葉。
それを改めて認識して、私は目が熱くなった。
クリームシチューって美味しいですよね。
具にあるジャガイモとシチューをつけたパンは格別です。
次の投稿は明日の10時を予定してるよ(^^)
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