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8.魔法少女の弟はメイドカフェを潰す

「初デートの行先で普通こんなとこ選択するかあ?どっちが言い出したのかわかんないけど」

「そうね、まず行かないわよね、ここは」


 凛と亜央の視線の先には1件の家が建っていた。新築であろうことは生垣として植えられいる針葉樹がまだ小さいことから容易に推測される。ただその新築の家には他の家にはないものが立てられていた。のぼりである。その家の施工をした住宅販売会社の名前がでかでかと書かれていた。

 そう、ここはモデルルームである。


「私がもし初デートでここに連れてこられたらドン引きよ」

「私も」


 凛の発言に亜央も同意する。

 華夜子と影親はどういうわけか、デートの最初の行先にモデルルーム見学会を選んだらしかった。いろいろ順番がおかしい。

 凛と亜央は今朝早く駅で待ち合わせて、影親の住んでいるマンションに向かった。もちろん影親と華夜子のデートを尾行するためだ。途中で尾行の対象人物と目的については説明しておいた。ただし、影親のことは凛の兄ということにした。亜央は年頃の女の子らしく、話を聞いたら好奇心全開でのってきた。色恋沙汰、特に大人のそれは大好物らしい。


「それにしても凛のお兄さん、すごいイケメンね。ほら、営業の女の人完全に見惚れちゃってる」

「総合スペックは無駄に高いからね」


 その女の人は案内の仕事も忘れてぽーっとしている。


「亜央……お姉ちゃんはああいうのタイプじゃないの?」


 亜央のことを「お姉ちゃん」と呼ぶという設定を忘れかけていた凛が、亜央に影親について聞いてみた。


「私?私はもっと筋骨隆々とした男の人が好き。凛のお兄さんはその点で惜しいわね。あと3か月くらい本気でトレーニングしたらきっと素敵な………えへ」

「よだれよだれ」


 亜央の口の端からよだれがつつっと落ちた。


「おっと、私としたことがはしたない」


 照れた様子でよだれをハンカチでさっと拭きとった。そんな仕草でもどことなく品がある。

 ちなみに2人は今変身していない。場合によっては建物の中まで尾行することを考えると変身した格好は目立つからだ。念のために凛は魔法の武器としてSP2022ハンドガンを持ってきているが、亜央は魔法の武器はあのでっかい杖しか所持していなくてさすがに持ってこれないので、今日は完全に一般人だ。


「しっかし2人、何話してんのかな。中に入るわけにはいかないし」


 外からでは2人が窓際にいる時くらいにしか様子がわからない。


「ちょっと2人の唇読んで通訳してみる。ただし妄想90%以上入ってるけど」

「いやそれもう通訳とは言わないし」


 携帯端末のカメラ機能で影親と華夜子をズームで見ながら凛が語りだした。



『どうだい?将来君と住むならこういう家がいいと思うんだ』

『素敵ね。でもまだ私、結婚とか考えられない。だって付き合って1週間よ?お互いのこと何も知らないじゃない』

『これから知っていけばいいさ。俺は君の全てが知りたい』

『そう、なら教えてあげる。……実は私のお腹には赤ちゃんがいるの』

『何だと……?それはもしかして元彼のか?』

『ええそうよ。あなたは血の繋がりのないこの子を父親として愛せるかしら?』

『う、それは………』

『……なーんてね冗談よ冗談。からかってみただけ』

『なんだ、冗談か。ははは』

『ふふ冗談よ。………………冗談……なんだから………』



「何その切ない話ー!?」


 凛の妄想通訳に亜央は瞳を潤ませていた。





 一方、凛に勝手に妄想通訳をされた当の2人といえば。


「確かにこのベッド小さいな。他の家具も小さめみたいだ」

「でしょ?部屋を大きく見せる為に視覚効果を狙ってるらしいよ」


 影親が実際にベッドに寝てみて、その大きさを測っていた。影親の高身長もあり、ベッドから足がはみ出している。


「姉貴ならこれでも大きいくらいだけどな」

「あははっ、凛ちゃんが聞いたら怒るよー?」


 モデルハウスの中を散策している影親と華夜子は仲の良い新婚夫婦に見えた。2人の会話の内容は必然的に共通項である凛の話題になることが多かった。


「しかし、モデルルームというのは初めて来たがなかなか興味深いな。華夜子さんはよく来ているのか?」

「うん、お菓子とかジュースが無料で飲み食いできるところに限るけどね。あ、もし今度影親君がモデルルームに行くなら一つアドバイス。アンケートは拒否するか、適当に濁して書くこと。じゃないとダイレクトメールがバンバンくるから」


 営業の人に聞こえないように小声で影親に話す。


「なんか逞しいな華夜子さんは」

「女も29歳になると図太くなちゃうのよ。精神的な意味でよ?」


 誤解されないように念を押す。これでも華夜子は20歳の頃からベスト体重を維持しているのだ。


「ねえお腹すかない?いい店知ってるの」

「そうだな、移動しようか」


 2人はモデルルームを出て駅に向かった。





「まさかこの話でそんなに泣くとは……」

「うう、だってその女の人不憫じゃない!本当はお腹に赤ちゃんいるのに、彼氏の態度が優柔不断だったから冗談ってことにして隠したんでしょ?きっとその後、彼と別れて独りで生むんだわ……」


 亜央がこんなに涙もろいとは思わなかった凛は困惑していた。実はその女の人は妊娠してたんじゃなくてただの食べ過ぎでした、っていうオチを言うに言えなくなってしまった。


「あ、2人移動するみたい。急いで!置いてかれるよ!」

「ぐすっ、うぅ、わかった……」


 2人に見つからないようにあとを追いかけて電車に乗った。





「初デートで連れてこられたらドン引きする場所、パート2」

「まさかメイドカフェとは………」


 駅を出て徒歩5分の飲み屋街、そのさらに奥の雑居ビルの3階の窓に、明らかに周囲とは異質な萌えキャラが描かれ、店名だろうか「メイドカフェ『じゅぴたー』」の文字がカラフルに踊っている。


「というか、こんな地方都市にメイドカフェがあったことにまず驚いた。そのチャレンジ精神は褒めてあげたい」

「どっかの金持ちの道楽じゃないかしら?こんなとこで客がそんなに入るとは思えないし」


 大都市圏に住んでる人にはわからないだろうが、弱小地方都市にメイドカフェはほとんどない。あってもすぐ潰れてしまう。客が来ないからだ。オープンした当初こそ物珍しさから客が訪れるが、半年も経てば存在を忘れられ、2年後にはあら不思議「テナント募集」の広告が貼り出されることもしばしば。これは何もメイドカフェに限ったことではない。ラーメン屋だろうが回転ずしだろうが同じこと。人口が少ないので飽きられたらそれで終わりなのだ。


「でも一度は入ってみたいかも。『おかえりなさいませ、お嬢様~』って言われたい」

「私はいつも言われてるから別に」

「何ですと!?ということは本物のメイドさんがいらっしゃる!?」

「いるわね。メイド服を着て、一目でメイドだってわかるメイドが」

「まさかそんな家が現代日本に存在するとは………」

「動きやすさとかの観点から言えばそんなひらひらしたのは非効率だから、おじいさんの趣味なんじゃない?」

「いい趣味してるわー」


 ここも店内に入れば見つかってしまうので入るわけにいかず、2人は外で待つことにした。





「おかりなさいませぇ、ご主人様、お嬢様ぁ」


(ふわぁ~、何この2人。背がめっちゃ高いんだけど。しかも彼氏?のほうは超イケメンだし!やばっ、こっちが緊張しちゃう!)


 入店時に対応したのはちょっと背の低い(凛よりは高い)目のくりっとしたメイドだった。


「2人だけど席は空いてる?」

「はい、こちらの席にどうぞ~」


 影親と華夜子は窓際の席に通された。窓から見える風景は決して良くない。窓に描かれた絵や文字で外の景色が全然見えなかった。例え見えたとしても、飲み屋やスナックの看板しかないから面白くもなんともない。それが売りの店ではないので誰も文句は言わないが。

 影親はメイドカフェが初めてらしく、キョロキョロと首を動かしている。

 影親と華夜子の他は、カウンター席に1人とボックス席に4人いるだけだった。


「こちらがメニューで~す。本日のおすすめは『ふわっふわたまごのお布団でおやすみクマさんオムライス』と『愛が大噴火ミートソースボルケーノぱすた』になりまーす。ご注文がお決まりになりましたらお呼びくださいね。それではごゆっくりどうぞ~」


 メニューを影親に渡したメイドが下がろうとしたところで影親が声をかけた。


「あの、俺こういうところは初めてだから、もしルールとかあったら教えてくれ」

「あ、はい。こちらにも書いてありますけど、メイドさんのプライベートは秘密です。あとメイドさんに触るのもちょっと困ります。店内とメイドさんの無断撮影もお断りしてます」


 壁に貼ってあった「ルールを守って楽しくね!」を見ながら、メイドが影親に説明をした。


「基本的に一般的な飲食店と同じだな。常識の範囲内だ」

「そうですね。あとはご主人様に楽しんでもらうことが私たちメイドの喜びです。イベントもあるので思いっきり楽しんでいってくださいね」

「引き留めて悪かった。ありがとう」

「いえいえ」


 話をしたメイドが、客が帰ったテーブルの食器を片づけてバックヤードに下がっていった。


「衣装や内装が変わってるくらいで案外普通なんだな」

「そう思う?ここからがメイドカフェの本領よ」

「?」


 疑問符を浮かべる影親を見て華夜子が意地の悪そうな笑顔を浮かべた。





 メイドカフェのバックヤードでは。


「やばい、やばい、やばい、やばい~!」

「どしたの由香?また変態っぽいのでも来た?」


 由香と呼ばれたメイドが慌てた様子で戻ってきた。休憩していたメイドたちが何事かと集まってきた。


「そうじゃない!めちゃくちゃかっこいいお客が来てるの!私の今までの人生で一番かっこいい!いや、たぶんこれから先も絶対あんな人に出会えない!紳士的だし、あの低い声で『ありがとう』って言われた時に私恋に落ちた!」


 超ハイテンションで言葉をまくしたてる同僚に他のメイドは一体この子はどうしたんだ?という顔をしていた。


「恋に落ちたって、由香彼氏いるじゃん」

「あんなお子ちゃまとは次元が違うの!私、あのお客にならお持ち帰りされてもいい!」


 その由香の彼氏が割とイケメンなのを知っている同僚のメイドは、その彼氏より断然良いと由香が言う客のことが気になって、フロアのほうに入って様子を窺った。

 その客は探すまでもなく見つかった。明らかに他の客と違う。いや他の男と格が違った。オーラが見えた。アイドルになっていてもおかしくないどころか、アイドルじゃないとおかしいとさえ思わせるような風格。

 メイドが見惚れていたら、そのお客と目があった。それだけで心臓の鼓動が跳ね上がった。


「すまない、注文したいんだが」


 返事をしようとしたが声が出なかった。「はい、ただいまー」それだけなのに口から音が出なかった。お客に声をかけられたのに返事をしないなんてメイド失格であるが、できなかった。こんな極度に緊張したのは小学校で全校生徒の前で作文を発表した時と同じかそれ以上かもしれない。まだここで働き出して間もない由香がまともに対応できたのが信じられなかった。

 そのお客がもう一度、今度はさっきより大きめな声でメイドを呼んだ。聞こえなかったと思ったらしい。


「は、はい、ただいまー」


 今度は少し裏返ったがなんとか声がでた。急いでそのお客の席に行こうとした。しかし思考に体がついてこない。途中で足がもつれてしまって転びそうになった。


「大丈夫か?怪我はないか?」


 そのお客がさっと席を立ち、メイドの体を受け止めた。力強い腕が自分の肩と腰を支えている。その事実を頭が理解した瞬間顔がカーっと熱くなった。鏡で見なくてもわかった。今自分の顔が真っ赤になっているであろうことが。

 するとそのお客はメイドから手を離すと、腰を折って謝罪をした。


「申し訳ない。あなたがたには触れてはいけないことになっているのに。謝罪する」

「い、いえ、これは助けていただいたのでそのように謝られなくても。こちらこそありがとうございます。どうぞ顔を上げて席にお座りになってください」


 その言葉を聞きほっとしたように顔を上げたそのお客は、少しはにかんだ笑顔で「ありがとう」と言い、席にもどった。またメイドの心臓がトクンと音を立てた。


「ご、ご注文がお決まりですか?」

「この今日のオススメのオムライスとパスタを、あと飲みものはアイスコーヒーを2つ」

「かしこまりました、しばらくお待ちくださいね」


 注文を繰り返すというマニュアルも忘れて、調理担当に注文票を渡したらいそいそとバックヤードに下がっていった。

 ドアがバタンと閉まった瞬間、腰が抜けて床にペタリと座り込んだ。


「大丈夫、沙織?あの人見た?すごかったでしょー」

「何で由香が自慢げなのよ……。でも、うん」


 沙織と呼ばれたメイドはまだぼーっとしている。


「私もあの人に惚れた。転びそうになった私を支えてくれた腕、あの腕で抱きしめられたい。いえ、抱いてほしい。私の全てをあげたい」

「何言ってんの?私が最初に好きになったんだよ?後から出てきてそれはなくない?」

「はあ?あんたこそ何言ってるの?彼氏いるんでしょ?この浮気女!」

「彼氏?ああ、あの人見ちゃったら他の男は全部その他大勢でしょ。なんなら別れるから」


 すると由香がその場で電話をかけ始めた。


「あ、私。私たち別れよ。じゃあね。ばいばーい」


 電話を切った由香は電話帳から彼氏の番号まで消した。


「これで私にも権利あるんでしょ?」

「この女……」


 なにやら不穏な空気を漂わせ始めた2人のメイド。もう1人いたメイドはその場から逃げるようにフロアに戻った。





「紳士だね~。全部凛ちゃんに仕込まれたの?」

「姉貴には小さい頃から男ならこうあれってうるさく言われてたから」

「凛ちゃんは知らず知らずのうちに最強の生物を作り上げてしまったのだった」

「それって俺のことか?」

「影親君以外に誰がいるってのよ?自覚なしはこれだから怖いわー」


 影親が少し不快そうに顔を歪める。


「俺はそんなふうに思ったことは一度もない。姉貴には今でもダメだダメだと言われてる。姉貴に認めてもらえないなら俺はまだ人として男として半人前だ」

「ふ~ん、そういうことか」

「何だ?」

「別に~?」


 華夜子は1人で納得して、コップの水を飲み干し氷をがりがり食べていた。華夜子の態度が何を表しているのかわからない影親は、不服そうにこちらも水を飲んだ。

 影親は凛以外の他人に対して不快に思うことはほとんどない。自分を攻撃するような言動をする人物がいないからだ。だがこの華夜子という女性は遠慮なく自分に物を言ってくる。まるで姉と話しているようだと思った。背格好は全く違うのに姉に似ていると思った。


「お、おま、お待たせしました。『ふわっふわたまごのお布団でおやすみクマさんオムライス』と『愛が大噴火ミートソースボルケーノぱすた』です。あ、ああそれと、アイスコーヒーでしゅ!」


 料理を運んできたメイドがかわいそうなくらい緊張していた。料理名はなんとか噛まなかったが、話す言葉はたどたどしい。新人メイドなのかもしれない。それに加えて影親のイケメンオーラにあてられている。


「ああ、ありがとう」


 影親が礼を言うと益々顔を真っ赤にしてもう倒れそうだった。

 そこへ華夜子が追い打ちをかけるようにお願いをした。


「美味しくなるおまじない、かけてくれる?」

「おまじない?何だそれは?」

「いいからいいから。見てて」


 影親がメイドの目をじっと見つめる。赤かった顔がさらに赤くなる。


「しょ、少々お待ちくださいね」


 それだけ言い残してバックヤードに下がった。





「私もう無理です~。これ以上あの人に見つめられたら妊娠しちゃいます~」


 泣きながら新人のメイドが戻ってきた。

 泣いてると言っても悲痛な感じではなく、どこか恍惚とした表情で笑いながら涙を零していた。ある意味、幸せそうであった。

 そしてこんな爆弾を投下した。


「せんぱーい、美味しくなるおまじない代わってください~」


 もう店にいるメイド全員にそのお客のことは知れ渡っている。由香と沙織が言い争うほどのお客とはどんな人物なんだろうと、こっそり覗きにいっては魂を抜かれたようになって戻ってきた。つまり、メイド全員がそのお客に恋愛感情もしくはそれに近いものを持ってしまったのだ。

 そんなところにこの発言、どうなるかは推して知るべし。


「じゃあ私行ってくる!」

「あんた休憩中でしょ?私が行くわ」

「休憩中に仕事しちゃいけないって決まりはないでしょう?」

「普段は休憩時間終わってもだらだらしてるくせに、引っ込んでなさいよ!」

「はぁ?何その言い方!つーかあんたのこと前から気に入らなかったんだよ!何かっていや、ちくちく嫌味言いやがって!」

「このクソ女………」

「やめなさい2人とも、ここは先輩である私が行くから」

「「そんなん関係あるか!黙ってろ!」」

「あぁ?」


 3人のメイドが掴み合いの喧嘩になるまで、そう時間はかからなかった。その原因となった爆弾を投下した新人メイドはおろおろするばかりだった。

 店内にいる客は裏でこんなことになってるのを知らない。





「戻ってこないな」

「そうね。食べよっか、おまじないは後でもいいし」


 影親と華夜子はやたら凝った盛り付けのオムライスとパスタを2人で分けながら食べた。

 結局メイドは戻ってこなかった。

 店を出ることにして会計をお願いしたら影親が財布を取り出したので華夜子がそれを止めた。


「凛ちゃんには『男が払うもんだ』とか言われてるかもしれないけど、それは場合によるの。今日は私が誘った立場だし、それに社会人が学生にお代を払わせるわけにはいかんのよ。あ、ここで食い下がらないでね?素直にありがとうって言っとけばいいの」

「わかった。ありがとう、御馳走になった」

「よろしい」


 会計を済ませて影親と華夜子は店をあとにした。


「いってらっしゃいませ、ご主人様、お嬢様」





 バックヤードではまだ争いが続いていた。


「あの~」

「ふざけんな!この淫乱○○○がっ!」

「てめぇの○○○のほうが○○○で○○○だろうが!」

「そういうこと言うか!?さっさと帰って○○○してろ!」

「あのお客さん帰られましたけど」

「「「えっ?」」」


(ダメだなこの店)


 3か月後、「テナント募集中」の広告が萌えキャラの横に貼り出されていた。





「まさかうちの会社の系列店だったなんて………」


 ビル入り口の各階にどんな店や会社が入ってるか書かれている看板の「メイドカフェ『じゅぴたー』」のところに小さく「黒絵興産」と書かれていたのを見つけてしまった。


「おじいさん、いい趣味してるわ………」

「何も言わないで」


 凛が亜央の肩をポンと叩いた。

オーディオコメンタリー風なあとがき


凛「第8話!今回のゲストは……暇そうにしていた使い魔レオです!」

レ「ちょうぃーっす!お待たせい!みんなのために1年前からこの時間を予約してたんだぜ」

凛「いや、1年前はこの作品自体存在してないから」

レ「じゃあまずは俺の縄張りの紹介から行くぜ!」

凛「待て、ここはそんなコーナーじゃ……」

レ「あ、そこのお姉さん俺とデートしない?いいサンライトスポットがあるんだ」

凛「私一人じゃ無理ー!制御できない!助けて亜央ーん」

亜「だから言ったのに。あとはまかせて」

レ「いい感じで木漏れ日ててさ、1分で夢の世界に行け……ん?おわっ!」

亜「これでよしっと。こっちでも夢の世界?いけるわよ」

凛「それ夢の世界っていうかあっちの世界いっちゃうからー!戻ってこれないからー!」

亜「大丈夫。少し大人しくなったら出すから」

凛「あ、動かなくなった」

亜「さてこの第8話、私達が二人のデートをこっそり見守ってる話」

凛「これは普通、デートとは呼ばないね。亜央だったら初デートどこ行きたい?」

亜「行きたいんじゃなくて、うちに来てほしいかな」

凛「おぉ!いきなりお部屋デート?へぇ、そう、なるほどねぇ。亜央ったら大胆」

亜「ううん、まずおじいさんと面談」

凛「重いよ!」

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