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18/26

18.日記

1日目

男もすなる日記といふものを女もしてみむとてするなり。

いや単に初日からものすんごい暇だったからなんだけど。

だって100年だよ?私の生きてきた人生の3倍以上だよ?退屈は死に至る病とはまさにこのことだよ。ここには肉体的な病はないけど精神的な病はあるね。私、もしかしたら発狂するかもしれない。だから自分が保てるように今までの思い出やらなんやらを書き綴っていくつもり。

あ、ちなみに1日目とか書いてるけどここには朝夜の概念もないから寝て起きたら1日経過ということにした。というかライブラリンと相談してそういうことにしてもらった。ただ眠くならないんだよね、ここ。疲れないし。お腹減らないし。ん?ここ、考えようによっては最高の場所じゃね?一人で自由に行き来できるようになれば無限の時間が手に入るんじゃね?方法を研究してみるか。

ところで私がここで任されたのは迷い人の案内。何らかの原因で時間を超えそうになった者を元の世界に戻す仕事。ライブラリンから説明を聞いた限りでは次のような感じだ。


1.迷い人を扉に誘導する

2.もし混乱していたら説明する

3.それでも納得しない奴は力尽くで扉に放り込む 以上


うーん、これだけ見ると完全にぼったくりの店の客引き。これ信じて素直に扉に入ってくれる人いるの?

その扉を出現させる能力はライブラリンが貸してくれた。帰りたければいつでも帰っていいぞ、という言葉とともに。だから帰らないって。

本当は帰って欲しくないんじゃないの?寂しいんじゃないの?ってなことを言ったら、絶対零度の視線が返ってきた。マジで凍るかと思った。

日記は基本毎日書くことにするけど、続けられるかどうかはわかんない。だって過去に1年書き続けられたことないし。ちなみにこの書いている紙は漂着したものを使ってる。人以外にもいろいろ流れ着くらしい。それを片づけるのも仕事だってさ。

今日は迷い人なし。




2日目

迷い人現る。

人……っていうかエイリアン?パニック映画なんかでよく見る、ぬちょーんと粘液を垂らして襲ってくるやつ。あれ。

そうだよね、地球人だけ来るわけないよね。でもあれは無理。生理的にあかん。生きたまま卵産みつけられるんでしょ?腹を裂いて小型のエイリアンがでてくるんでしょ?怖い!キモい!

と思ってたけど話してみると案外いい人だった。最近産まれた子供の為に食糧探しを頑張っていたけど気が付いたらここに来ていたらしい。奥さんに尻に敷かれているとか地域コミュニティにうまく馴染めないなどの愚痴を聞き役に徹して聞いてあげた。どこも同じような苦労があるんだなー。その扉から出ればすぐ元の世界元の場所に戻れるよと教えてあげたら、もう少しゆっくりしていきたいとか言っていた。

あ、言葉は勝手に翻訳されるみたいで、相手の言葉も普通に理解できたし向こうにも私の言葉がちゃんと伝わっていた。

まあ別にすぐ帰らなくても問題ないし私も暇だったからお互いの世界の身の上話なんかしてまったりと過ごしてたら、ライブラリンがふらっと姿を現して何も言わず顎で扉を指し示した。早く送り返せ、と。

あんた何様?

ナンバー2様でした。

仕方ないからそのエイリアンの彼を見送ることにして、別れのハグ……は抵抗あったから握手を求めた。ぬめっとしてた……。

今日の訪問はこの人だけだった。




3日目

いくらお腹が減らないと言っても口寂しくはある。

漂着した物の保管庫に食べ物があったことを思い出し、食べれそうなものがないか物色した。地球では見たこともないようないろんな食べ物があった。例え毒があっても傷んでいてもここでは体になんともない。というかここでは食べ物が傷まない。が、色とか形が全然食欲をそそらない。他にないか探していると、地球産というかメイドインジャパンのカップラーメンを発見!しかも各味揃い踏みである。

まずはみそ味でしょ!

お湯はどうすんだ?と思ったそこの君、その点についても抜かりなし。携帯コンロとやかん、さらにミネラルウォーターも発見済み。

お湯を注いで待っているとライブラリンが疑問顔でこっちを見ていた。そこで私がラーメンができるまでの間、ラーメンというものを懇切丁寧に説明してあげると食してみたいとおっしゃったので献上した。表情こそ変わらなかったがその食べっぷりから大変満足しているのは想像に難くない。うむ、彼はラーメン道の一歩を踏み出したのかもしれない。

カップラーメンは期待を裏切らない想像通りの味でうまかった。うまかったんだけど……お腹に溜まる感覚がない。入ったそばから消えていく感じ。どうなってんだろ?

ラーメン以外にも食べたいものはたくさんある。食材は腐らないけど腐るほどあるから料理してみるのもいいかもしれない。




10日目

移動を楽にするために魔法を使って飛行していたらライブラリンに睨まれた。なんだろうと思ったら、『お主らの時代にそぐわぬ超越技術だ』って言われた。超自然的な能力ではなく技術と断言した。詳しくは説明してくれなかったけど、どうやら私の時代より遙かに進んだ文明の技術みたい。

ここで疑問。じゃあその技術はどこから?未来からではないことはライブラリンとこの場所が証明してくれる。となると地球外からもたらされたか、あるいは……過去の置き土産。時間移動ができるようになるまで文明を発達させ、その結果ライブラリンに滅ぼされてしまった先人類の遺産が残っていて誰かがそれを利用した。

うん、この説がしっくりくる。

その誰かというのが今なお生きているかはわからないけど、カッピーたち使い魔も元を正せばその誰かによってつくられたのかもしれない。

とか考えてたけどぶっちゃけ私にはどうでもいいっす。使えるものは使う、それだけ。

あ、そうそう、私が見ようとしても見れなかったここの本、暇だから見たいとライブラリンに言ったら、こんな反応が。

『お主は暇つぶしで他人の一生を覗き見るのか?あまり褒められた趣味とは言えぬが、個人の嗜好に口を出すつもりはない。だが…………まあよい、開けるようにした。手近なものを開いてみるがよい』

開けてみた。

閉じた。

ごめんなさい。

もう二度と見たいなんて言いません。




365日目

今日でここに来てから丸1年になる。

みんな元気かなぁ。って元気に決まってるか。元の世界に戻ったら1秒も経ってないんだから。亜央とか千鶴から見たら、私が消えたと思ったらまたすぐポンと現れたように見えるはず。

それはそれとして、危惧すべき事態が。千鶴の顔が思い出せない。会っていたのが30分にも満たないからそれも仕方ないのかもしれないが、少し怖い。いずれ大切な人の顔すら忘れてしまうんじゃないかって。

……なーんてね。携帯端末に近しい人の写真は収められてるからそれは大丈夫なのだ。バッテリーの充電?魔法でちょちょいよ。

そんなこんなで1年も経てば保管庫は私専用快適空間に様変わり。自分のアパートの部屋よりセレブ感溢れるラグジュアリーな調度品で埋め尽くされている。どれもこれもこの空間に流れ着いていた品物だ。これ、持って帰れないかな?




1088日目

辛い。ただただ辛い。

生活自体は何の不満もない。だけど会いたい人に会えないのは苦しい。諦めて帰ってしまおうかという考えが何度も頭をよぎる。

でも帰ってどうする?チカは記憶を失くしたまま。周囲の発言などから私の存在に違和感を覚えるに違いない。

あれはお前の姉だと言われる。だが記憶にない。周りが嘘を言っているのか自分がおかしいのか。次第に人間不信に陥り……。

だめだ。やはり今帰るわけにはいかない。帰っても心穏やかに過ごせるとは思えない。これはチカの為でもあるのだ。




7430日目

あー。




11509日目

有り余る時間を利用して空間転移魔法の研究をしている。

実は地球にいたころにも何度かチャレンジしてみたんだけど、その結果は成功とは到底言えないものだった。魔法が不発ならまだいい。練習に使ったリンゴがあらぬ場所に転移したり、酷い時は搾りたてジュース状態になったりもした。自分の身体で試さないで本当によかった。

使い魔協会と各地を結んでいる転移エレベーターがあるんだから転移自体は不可能ではないはずなんだけど、何が悪いのか何が足りないのかさっぱりだった。今までは。

研究の成果は徐々にあらわれている。転移魔法には2つの要素が重要だってことがわかった。

1つ目は転移元空間と転移先空間の情報統合。簡単に言えば気温とか湿度とか気体構成とかが類似してる程いい。これについてはそんなに難しいことじゃない。空間を限定して分子を操作すればいける。距離があるなら遠隔視してからね。

2つ目は瞬間魔法力量。ダムをイメージしてもらうとわかりやすいかも。ダム一杯に溜まった水を最大魔法力量だとすると、1秒間に放水できる水の量が瞬間魔法力量に相当する。空間転移魔法はこれが相当な量必要だ。私の場合はこれが微妙に足りないらしくてそれで失敗するみたい。これがなかなか曲者で、個人の資質に左右されると私はみている。例えば亜央はこの瞬間魔法力量が多い。規模のでかい魔法を使えるのはそのためだ。多いんだけど量の調節が下手。対する私は瞬間魔法力量が少ない。だけど量の調節は割と効く。

今まではこんな魔法を使おうと大雑把に頭で想像すれば、魔法の武器が私から魔法力を取り出してそれを発動していた。その過程に私の意思の介入は不要だった。それでも問題なかった。でもことハイレベルの魔法となるとオートでは非効率に過ぎる。

ではどうすればいいか。

マニュアルで徹底的に無駄を省き、私の瞬間魔法力量でも発動できるようにする。

と、口で言うのは簡単だけれどこれがまた難しい。ちょっと気を抜くとオートで発動しようとしやがる。意思の力で抑え込んで抑え込んでようやくといった感じ。何でこんなにマニュアル発動を阻害しようとするんだろう。

とりあえず小さい物体は問題なく転移できるようになった。




20000日目(たぶん)

今日はー何もーありませんでしたー。




30000日目(たぶん)

今日はー何かあったと思うけどー何もありませんでしたー。




35000日目(たぶん)

今日もー何もーありませんでしたー。

って私ダメ人間になりつつあるし!あと約4年だから頑張れよ!




36500日目(たぶん)

いよいよ明日帰る。

途中から日数のカウントがどんぶり勘定になったけど、ライブラリンにとって100年なんてあっという間だからまあ何も言うまい。誤差よ誤差。

しかし思い返すといろいろあったなぁ。半分、いや7割くらいぐーたら生活だった気もする……。

それはそれとして得たものもたくさんある。特に魔法技術は飛躍的に向上した。今では空間転移魔法すら呼吸するようにできる。さらにさらに、一時的にではあるが身長を伸ばせるようになった。物質変換の応用なんだけど物質変換と違って魔法力の供給をやめると元に戻っちゃうのが玉にきず。なんでやねん。

やはり人類身長統一計画はイロージョナー退治で地道にポイント貯めるしかないらしい。

さ、寝よう。そして明日、チカの記憶を取り戻そう。

オーディオコメンタリー風なあとがき


凛「今回は私の書いた日記を公開しようと思います!」

華「どれどれ。こ、これは……」

凛「いやー、日記って怖いね。後で読み返すとカオスなんだもん」

華「カオスっていうか、所々闇が顔を覗かせてるんだけど」

凛「ちらっ」

華「これは浄化が必要だね」

凛「ちょっとぉー!?何すんの!?」

華「ん?お焚き上げ」

凛「やめれ!100年もかかった大作なんだよ?いずれは出版して大ベストセラーも夢じゃないんだよ?」

華「ぽいっ」

凛「あ゛ーっ!!」

華「これは世に出てはならぬものなり」

凛「苦労して生んだ私の可愛い子供が……」

華「ほら見て。炎があんなに綺麗」

凛「本当だ……。オレンジの光に照らされて私の心からも邪気が祓われ……るわけねぇ!おのれ許すまじ。こうなったらあれをやるしか。覚醒せよ!私の内なる暗黒!」

華「ま、まさか!?私がやったことが裏目に!?私はとんでもないものを目覚めさせてしまったのかもしれない。次回へ続く!」

凛「続かないよ!」

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