魔法の検証
三度目のレベルアップの朝も、快調な目覚めだった、記憶も混乱はない。
習得した魔法はフレイムサークルとイリュージョン、待望の攻撃魔法を覚えた、
それでもまずは簡単な魔法から試してみよう、コンテニュアルライトの魔法だ。
暗闇のなかペンロッドで魔法陣を描いていく、魔法陣は複雑で繊細だから、
細心の注意力と集中力で魔力を込て描写する。戦闘中にはとても無理な作業だ
10分ほどかけてようやく書き上がると、魔法陣の中心部が光輝いた成功だ。
これがエンチャント魔法か初めての実践だが、できて当然と言う実感がある。
描いてみて実感したが、魔法陣は電子回路に似ている、電子回路にモーターや
ライトが一体化した様な物だ、改良には高度な数学の知識が必要になる。
今のレベルでは本来、魔法陣の改良は不可能だが、俺には日本で習った数学の
知識がある、コンピューターオタクとして、電子回路が好きだった俺には
レベルアップの知識も相まって、魔法陣の仕組みを読み解くことができそうだ。
なんだか楽しくなってきたが、場所を移動しないと、神殿には居すわれない。
本格的な検証は合宿所に戻ってからだな、扉を開けて神殿をあとにする。
今日は街を見て回る時間もあるが、今は魔法陣の仕組みを検証したい。
寄り道はせずに合宿所にたどり着いた、教官に個室を手配してもらう。
個室は料金が割高だと言われたが、検証にはスペースがいる未来への投資だ。
どのみち料金を払うのは一人前になったあとだし、今けちっても意味がない。
今度はフロートマテリアルの魔法を試してみる、物体の重量を軽減する魔法だ。
レベル1で重量操作なんて、物理法則を無視した現象をおこせるとは、
さすが魔法だと感じるが、さっそく試してみよう木製のベッドに使ってみるか。
ベッドから布団を外して魔法陣を描写していく、二回なのでスムーズにだが、
時間はかかる、書き終わるのに20分もかかった、早速持ち上げてみるが確かに
軽いだがこの軽さは?一定の高さまで持ち上げると重みが増していく
高さが増すほど重くなる、これは重量を軽減してる訳ではないな、リニアや
ホバークラフトの様に、不可視の力場で物体を浮かせてるだけだ重量操作ではない。
やはり魔法と言えども物理法則には縛られてる様だ、不可視の力場が地面を支え
浮力を得る簡単な仕組みだが効果的だ、そういえば馬車にも、この魔法が
使われていた、物を運ぶ分には重量操作でも浮力を得るのでも効果は同じだ。
これも使える魔法だな魔法陣を解析してみよう、解析には幾何学的知識が
必要になるようだ、座標指定はこの曲線の集合体か、出力はこの部位の構造か?
効果時間は外周部の縁取りのようなこれか、効果範囲はこの記号の大きさで、
オンオフはここを消したり繋げたりで操作できそうだな、大体わかってきた。
エンチャント魔法とは魔法陣を流れる魔力が、様々な作用を及ぼし効果が発動する
仕組みなようだ、電気が流れると磁力でモーターが回ったり光がついたり
熱を発するのに似ている、魔力は魔法陣によって様々な力に変化し魔法になる。
電気でできる事は大体、魔力でもできそうだ、この世界は電気製品のかわりに
マジックアイテムがある、利便性を考えればエンチャンターが儲かる職業なのは
間違いないらしい、レベルさえあがれば良い生活ができそうだけど、問題は
どうやってレベルアップするかなんだよな、当面のスライム狩りを安定して
こなせるか、方法は二つ考えられるフレイムサークルの魔法を剣に付加して、
斬りつける方法と、巨大なハンマーをフロートマテリアルの魔法で持ち上げて
解除し大質量で押し潰す方法、いっそのこと二つ組み合わせてみるのが良いか。
部屋の外に出て教官をさがす、まずはハンマーを借りなければいけない。
「あっ見つけたイグナスさん、ハンマーを借して欲しいんですが、普通じゃ
振れないくらい大きくて重い方がいいです、スライムが一撃で潰せるような」
「スライムを一撃で倒せるハンマーか、あるにはあるが余程の力自慢でないと
使いこなせんぞ、まあ貸すだけなら貸してやるが使えるか保証はしないぞ」
二人で連れだって武器庫に向かう、大量の武器の山から目的のハンマーを探す。
「これがうちで一番大きなハンマーだ、最もお前では持ち上げられんだろうが」
「鉄製の巨大な鉄塊で大きさも申し分ない、こういうのが欲しかったんですよ」
ハンマーの上側に魔法陣を描写する、なるべく出力を増やして効果時間も多目に
導線を手元まで伸ばして、オンオフ切り替えられるようにする、出来た!!
25分程かかったが、教官も珍しげに作業を見守っていた。