港町リゼレーンへ
後悔に苛まれたまま、倒れふしている俺に、老人が語りかけてくる。
「お前さんこれからどうするのじゃ、いやその前に自己紹介がまだじゃったのう、
ワシはゼルフロア・ヒルハイムじゃ、リゼレーンでプリーストをやっておる
これでも一流の術師として名が知られておる、気軽にゼル爺とでも呼ぶが良い」
「俺はアズベルド・ラカリュス、セラファム村で狩人をしていた、もう一つの魂は
日本のヒキニートで、コンピューターオタクだった」
「ヒキニート?聞いたことのない職業じゃが、いったいなにが出来るんじゃ?」
「コンピューター無しじゃ何もできないな、正直ただの穀潰しだろうな」
「日本と言う地名も聞いたことがない、未知の職業未知の言語を習得してるなら
無駄にはならんよ、知識は魔力の源じゃ希少な知識ほど価値が高い未知の言語なら
魔力の増加量はかなりの物じゃアズベルドからはレベル0とは思えん魔力を感じる」
「レベル0ってそうかサキュバスに吸い尽くされて、レベルが下がったのか
なんてこったレベルアップの加護をえるため、リゼレーンに向かっていたのに」
この世界じゃレベル10はないと、まともな生活ができない、レベルの差は
圧倒的な格差だ、普通の食生活じゃ一年で1レベルアップが精々この年で
レベル0から再出発なんて、まともな職業には就けないぞ。
「アズベルドお前さんその年でレベル0では、冒険者になってレベル上げするしか
ないじゃろうな、それだけの魔力があれば勝算は五分五分、分の良い賭けじゃ」
「冒険者なんてなったら、命がいくつあっても、足りないじゃないですか!?」
「じゃが他に方法がないのう、冒険者が嫌なら奴隷落ちすることになると思うぞ
せっかく助けた相手が奴隷落ちでは報われんし、レベルは戦って上げるのが
一番の近道じゃ冒険者ならレベル10までは、無税で色々育成の補助があるのじゃ
どちらにせよリゼレーンに向かうべきじゃ、そろそろ体調も回復したじゃろう」
「待ってくださいゼル爺、ついていく置いてかないで、冒険者やるしかないのか」
経験値を稼ぐには、殺すか食べるしか方法がないレベルとは、存在の力レベルを
上げるには知性ある存在や、長く生きた存在を殺すか食べる必要がある
殺して奪う生業の冒険者は、レベル上げにうってつけの職業だが殺すなら殺される
覚悟が必要になってくる、敵だって必死なんだ命懸けの覚悟がないと勤まらない。
「心配せんでもリゼレーンには、低レベル向けの狩場が整備されておる、
低レベルのスライムしか出ないよう、管理された場所があるんじゃ
スライムとは原始的な水の精霊のことじゃから、血も流れん楽な相手でな、
こちらが攻撃を仕掛けんかぎり、襲ってこない安全な相手じゃよ、
余計な手を出さねば、一対一で安全に狩れるのじゃ」
「スライムですか、その話が確かならスライム狩りまでなら俺でも出来そうです」
「スライム狩りが終われば、草原で草食獣狩りじゃ、これもさほどの危険はない
遠距離攻撃さえできれば、逃げる敵を追うだけじゃ狩人のアズベルドなら問題なく
こなせるじゃろう、肉食の獣もでるから完全に安全とは言えんが危険度は低い」
「草食獣狩りか弓の腕はそれなりにあるし、草食獣だけならなんとか狩れるかな」
「そこまでやれるならレベルアップの恩恵もあるし、レベル10はそう遠くないぞ
ワシが冒険者としてレベル68まで上げた、経験から言ってレベル10なんぞは
ただの通過点じゃよ、楽なもんじゃぞ心配せんでも、なるようになるわい」
レベル10までなら、なんとか上げられる気がしてきた、今まで狩人として生きて
きたんだ、今さら草食獣を恐れていられない、今までの狩りは大人達に見守られた
安全な狩りだったけど、身に付いた経験は裏切らないはずだ。
「俺、冒険者になってみます奴隷になるのは嫌だし、自分の力を試してみたい
一度死んで蘇生した身の上です、勝算が高いなら命懸けの冒険も悪くない」
「そうか冒険者になると決心したか、なら暫くの間ついて回ってサポートしよう
ワシも忙しいから二~三日の間だが、高レベルプリーストの支援は強力だぞ
そうと決まればリゼレーンに急がなくては、ペースを上げて夕食までに到達じゃ」
「ゼル爺足早いよ、老体とは思えん健脚ぶりだ」
「無駄口を叩かず走ることに専念するのじゃ、夕食時を逃すと大変な目にあうぞ」
まだ日は高い昼前だ、このペースで夕方まで走るなんて、辛いマラソンになりそうだ。