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「いってきまーす」
玄関を飛び出してふと立ち止まり空を見上げる。
青く澄んだ色をしている。
静かだな。
綺麗な空を見るといつもそう思うのに、今日はなんだか騒がしい。
「あぁそうか、もう花見の季節か」
途中にある公園を見ながら、騒がしいのは物理的な意味の方だと気づいた。
大学も春休み、というか私はもう卒業式まで何も予定がないので、ずっと引きこもっていた。
「いつも外出るのは夜コンビニ行くくらいだし、桜なんて気づかないもんね」
なんてブツブツ言いながら歩く。
しばらくして友人の美波と合流し、目的地のイタリアンレストランへ向かう。
いつもバイトで忙しい美波が珍しく出掛けようと誘ってきたのだ。
「どうしてもね、千尋に食べさせたいものがあるのよ」
そう言って連れてこられたのはわりと近所なのに初めて見るレストラン。
「いらっしゃいませ。2名様でよろしいでしょうか。あちらのお席へどうぞ」
見たこともない若い男の店員。
いや、来たことないんだから当たり前か。
だけど、どことなく違和感を感じる。
綺麗な色の眼…
思わず見つめてしまった。
…あれ?片眼だけカラコンしてる…?
「千尋どうしたの?まさか一目惚れ〜?」
なんて小声で茶化されながら席に着く。
「そんなのはないよ、彼氏いない歴イコール年齢なんだから」
笑いながらお決まりのセリフを言った。