05 その後
「マリア、行ってきます」
ロイはマリアにキスをする。
元人形なので戸籍は無いが、二人はとても幸せだ。
マリアは箒を握り、外をはく。
マリアが人間になった後、ロイはマリアと共に引っ越した。
思い出の町の近く、小高い丘に広い敷地を買い、家を建てた。
ロイはそれだけ画家として有名になったのだ。
「マリアちゃん!お帰り!」
久しぶりに商店街へ行くと歓迎される。
仲のよかった果物屋の女の子は、少し大人びていた。
「マリアちゃんは変わらないね!でも少しふっくらした?」
「そうかしら?」
マリアがその後彼女の成長を誉めると、子供が出来た事を知らせた。
「マリアちゃんだって、そのうち年とって子供出来るよ!」
彼女は明るく言った。
町の人々は少し面子が変わったり成長していたけど変わらない、それがマリアの感想だった。
町をマリアが見回っていると、ロイが現れる。
「マリア!」
約束の時間より少し遅れてロイはやって来た。
橋の上、近くには公園の時計がありそれがわかる。
マリアはロイが合流すると再び歩き出す。
マリアは歩きながらその日あった事を話した。
夕刻、一度行った商店街へ今度はロイと共に向かう。
思い出ではなく、今度は未来へ。
という言い方はオーバーだが、要は夕食の買い出しだ。
家の場所が変わっても、やる事は変わらない。
どんなに環境が変わっても変わらない事がマリアには嬉しかった。
こうして、マリアは人として幸せを手につかんだのだった。




