私の夫はお寝坊さん
私の夫はお寝坊さんでした。
私の夫は朝がとっても苦手のようでした。
今日もいつもと同じ朝が来ました。
雲ひとつない気持ちのいい晴れでした。
いつものように、私は太陽さんと目覚ましさんに起こされました。
私は横で寝ている夫の寝顔を見ました。
いつもと変わらず、気持ち良さそうな顔をしていました。
私は朝ごはんの支度を始めました。
それが終わると、私は着替えをして、髪を梳かして一つに束ねました。
テレビの電源をつけて、それから夫を起こしにいきました。
「ほら、早く起きないと遅れちゃうよ?」
夫はあと五分とただを捏ねました。
私はそれがたまらなく可愛くてしょうがありませんでした。
私はいつもと同じように続けました。
「早くしないと、間に合わなくなっちゃうよ?」
すると、夫は時計を見てから一度固まって、いつもと同じように飛び起きました。
夫はいつもと同じように、
「なんで早く起こしてくれないんだよ〜」
と、私に文句を言いました。
私はいつもと同じように、
「ちゃんと起こしました」
と、言いました。
夫は私が作った朝食を急いでお腹に詰めました。
夫は私がアイロンをかけた黒いスーツを着てくれました。
仕上げに私はネクタイをきちっと締めてあげました。
夫はいつもと同じように、
「ありがとう」
と、言いました。
私がいってらっしゃいを言うと、夫はいってきますと返してくれました。
私はいつものようにニコッと笑顔になりました。
いつもそんな朝を過ごしていました。
今日、夫は私を置いて旅立ちました。
なんでも車に轢かれたそうでした。
私の前にはお坊さんがいました。
その前では夫が笑っていました。
夫は白い大きな箱に入っていました。
私は目の前で寝ている夫の寝顔を見ました。
いつもと変わらず、気持ち良さそうな顔をしていました。
私は喪服を持っていなかったので、何年かぶりに着た黒いスーツを着ていました。
ピッタリでした。
私は髪を梳かして一つに束ねていました。
皆はシクシク泣いていました。
火葬場に着きました。
皆は最後のお別れを言っていました。
私は一番最後に夫に寄り添って、箱の中の夫の寝顔を見ました。
いつもと同じように幸せそうでした。
私はいつものように言いました。
「ほら、早く起きないと遅れちゃうよ?」
夫は何も言ってくれませんでした。
私はそれがたまらなく悲しくてしょうがありませんでした。
私はいつもと同じように続けました。
「早くしないと、間に合わなくなっちゃうよ?」
夫は寝過ごしてしまいました。
私は夫から引き離されてしまいました。
私はいつもと違って笑顔になりませんでした。
今朝の天気はいつもように晴れでした………