表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【タイトル】Dear My Alice【未定】  作者: 柿崎みー君
夢、或いは悪夢。
6/14

-4-

 

 ――昼休み。屋上に続く階段にて昼食タイム。




 「朝から担任の説教?」

 「担任の呼びかけに気付かなくて?」

 「「一体何に夢中になっていたんだい? ゼ~ロちゃん!」」

 「……うるさいんですよ。ちなみに説教はありませんでしたから」


 購買で買った学園人気No.1の、苺ショートプリンパンを口に頬張りながら、双子はにやにやと此方を見て笑っている。

 よくそんな甘いものが食べられるな……。


 「つーか流し目って何?」

 「とうとうゼロも自分の身体を売るようになったのか……」

 「身体を張る、の間違いかと」

 「言葉の文だよあーや」

 「怒っちゃヤッ☆」


 ぎゃははははと、仰け反りながら笑う双子に、零は溜息を吐いた。

 朝の説教事件は愚か、流し目までもがもう既に双子の耳に入っているとは……。


 『リラの奴、やることが早いんだよ……』


 今頃教室で、女子達と優雅にお弁当を囲むリラの姿が目に浮かんだ。


 「ゼロなんか朝から絶不調だなー」

 「いつものゼロらしくないなー」

 「本当ですよ。これも全て朝見た夢のせい……」

 

 はむっと、本日の昼食であるサンドイッチを、口に含む。

 う、マスタードを塗り過ぎた……。辛い。

 これも夢のせいだあーあーあー。

 

 「お、見ろよ相棒、ゼロ」

 「何だよ兄弟?」


 フォーンを見ていたディーが、画面を此方に見せてくる。

 どうやら臨時ニュースのようだ。アナウンサーが、何やら(せわ)しい様子で話をしている。


 「本日午前11時未明、和都・シラギク街にて、無差別に人が殺傷される事件が起こった」

 「凶器は包丁……しかも肉切り包丁? うわーこれは酷い」

 「犯人は未だ逃走中……人相などは解っていないって、見ていた人皆被害者ですか?」


 モニターが現場であるシラギク街へと映り替わる。

 シラギク街は、学園からバスで二つ行った先にあるショッピング街で、檻桜学園の生徒達が放課後などに立ち寄る場所でもある。

 そんなシラギク街が、今日起こった事件により、緊迫した雰囲気漂う警護隊や救護隊で色めき、人々が不安げな瞳で、好奇な瞳で現場を見ている。

 至る所にシートが張られ、被害者のものと思われる赤黒い染みが、地面にじっとりと、染み込んでいた。

 その血痕を見ていたら、朝の【桜の花片(はなびら)血飛沫事件】(自分で命名)を思い出してしまった。

 何だか気味が悪くなり、零はフォーンチャンネルを替えてみた(ディー先輩のフォーンなのだが・)

 しかし、どのチャンネルも、シラギク街で起こったニュースを、(せわ)しく報道していた。

 かなり被害者が出たのだろうか? 和都でこんな凄惨な事件が起きるだなんて、珍しい。


 「シラギク街って、よく放課後に立ち寄る奴らが多いよなー」

 「つーか犯人も犯人で、昼間から盛んだなー」

 「……まるで他人事のようにあんた等は」


 双子の自由さに、厭きれてものが言えなくなる。

 

 「てか、これ学園の近くだろ?」

 「しかも犯人未だ逃走中……てことはさ」

 「「臨時休校有りとか!?」」


 やっりー!! と両手を打ち合う双子。

 本当にこの双子は……。


 「先輩方解ってます? 確かに学園の近くで起こった事件ですけど、そう簡単に休校だなんて――」


 零の声を遮るかのように、チャイムが鳴り響いた。

 しかしそれは、予鈴のチャイムではなく、生徒や教師の呼び出しなどに使われる臨時のチャイムだった。そして切羽詰った声の放送が、廊下に、教室に、そして零達のいる屋上階段に響き渡った。


 『教室外にいる生徒は、速やかに自分のクラスへ戻ってください。繰り返します。教室外にいる生徒は、速やかに―――』


 「……………」

 「……………」

 「……………」

 「「休校、当たりだな」」


 双子がこちらを見て、嬉しそうに、にやりと笑った。


 「……えぇ」


 あぁ、何もかも、朝の夢のせいだ。

 零はがくりと、肩を落とした。






----------------------------------

-----------------------------

------------------------

-------------------

--------------

----------

------

--- 


 




 双子の予想した通り、警護隊は、シラギク街で起こった事件の二次被害を防ぐ為に、事件現場に近い学校一帯に、午後から臨時休校という処置を出した。

 担任が警護隊から出された資料を基に、シラギク街で起きた事件のことを、感情移入しながら話している(担任は国文担当なのだ)

 そんなところで感情移入しなくても良いのにと思いながら、窓の外に目を向けた。

 桜の花片が舞う中、自分の子供を迎えに来た親御達の車等が、校門の前に殺到している。


 『――お迎え、か』


 ちょっとだけ、羨ましい。本当に、ちょっとだけ。


 「……というわけで、明日の登校は、学園からの連絡が入るまで自宅待機だ。解ったなー?」


 「はーい」なんて、幼稚園か此処は? と言いたくなるような、クラスメイトの返事を聞き、委員長の指示で立ち上がり、担任に挨拶をする。

 先生さようなら。さ、帰りましょうかな。


 「おい、一色」

 「?」


 鞄を肩から担ぎ、教室を出て行こうとした零は、担任に呼び止められ、立ち止った。

 朝の説教を今此処でする気かこいつ?


 「一色、お前、親御さんは迎えに来るのか?」

 「いいえ」

 「殺傷犯がまだうろついているんだ。一人は危険だぞ?」

 「まあ、仕方ないでしょう。一人で帰らなきゃいけない状況なんで」


 珍しく心配する担任なぞお構いなく、零はぶっきらぼうに答えた。

 朝のことを忘れたと思うな。

 

 「親御さんが事情で迎えに来れない生徒は、担任が送っていくことになっているんだが、お前のことを家まで送ると、申し出た生徒がいてだな」

 「? (誰だ? リラ、は無いな。さっきメールで断ったから)」

 「ちょうど良いから、お前、送ってもらったらどうだ?」

 「………………」


 こいつ、ただ単に送るのが面倒くさいだけなんじゃないのか?


 「ありがたいですけど、迷惑じゃないですかね?」

 「いやぁ、あの様子は有無を言わさずというか、是非ともっていう感じだったなぁ…」

 「はあ。じゃあ、お言葉に甘えて……」

 「「ゼロー!」」


 零の言葉を遮るように、高等部の練の方からトウィードル兄弟が現れた。


 「あ、先輩」

 「迎えに来たぜー」

 「一緒に帰ろー」


 にこにこと笑いながら、悪気も無く、もとい純粋に空気を読まず、双子は零と教師の間に颯爽と割り込んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ