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ブラック企業奴隷の俺は異世界転生して奴隷を解放してみた  作者: ヒゲ博士
第2章 企業への道

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8/22

森の中へ。

 雨が気温を容赦なく下げる、肌寒い夜の事だった。ある夫婦の団欒にノックが割り込む。


「こんな時間になんだ?回収業者でも呼んだか?」

「いやいや。いつも勝手に来るでしょ。神託でも降りたのよ。」

「そっか。まぁいいやろ。...はいはいどちらさ____」


夫が扉を開くと、雨に濡れた黒いコートの男が立っていた。

 目を細めてよく見るも表情まではわからない。すると夫は気がついた。


「そのコート...回収業者か。おい母さん、やっぱり回収業者だったぞ。」

「顔すら覚えてないんだな。」

「?」


ボソボソと小声で話す男はなんの躊躇いもなく、背中を見せた夫の首に縄をかけた。まるでアヒルのような声を上げる滑稽さに表情を和らげた。


「久しぶりだな。俺は八木元拓也だ。」

「八木元??…………お___お前!マサヨシだろ...なんでここに、ぐぇッ!」


 夫が声を上げようとする度に、キツく締め上げる。首に食い込む縄の感触を楽しみながら拓也は夫に耳打ちをした。


「声を上げたら殺すからな。」


















 2人を締め上げ椅子に縛り付けた拓也は、2人を眺めながらナイフを手にしていた。

 夫婦は常に縛り上げる側だったが、縛られたことは無い。命の取捨選択を握られた恐怖に抗えるわけもない。先に折れたのは夫だった。

 小便を流し、涙と鼻水で顔を汚しながら懇願する様を拓也は笑いを堪えていた。


「な、なんでもやる!なんでもやるからゆる____」

「黙れ。何度も同じ事を言うな。」


 拓也は苛立ちを載せてナイフを夫の胸目掛けて投げつける。命中。手加減も相まって、刃先が少し刺さる程度で収まった。


「ぁあ!!刺さった!!血が!!」


 対した痛みでもないだろうに、夫は苦悶の表情を浮かべる。

 隣で縛られた妻がそれを見て慄く。だが両者共に声をあげない。


「いい子だ。1人でも煩わしかったら殺す。いいな。」

「わか___」

「それではまず質問だ。奴隷を売っていたのはあそこだけか?」


夫は首を縦に大きく2回振った。だが妻は口を止めている。


「おい女。きこえてるか?」

「...ります。」

「あ?」

「他にもあります!うちは沢山の奴隷を、色んな所に売っ____」


妻が叫んだその瞬間。部屋の雰囲気が急に変わった。

人気がないというか、静けさが嫌に肌身に触れる。だが八木元は動いていない。否。動いてはいないが夫に向けて手をかざしていた。

 妻はゆっくりと手の方へと首を動かしてみる。するとほのかに鉄の匂いが鼻を掠めた。


「んっ!!!_______んんんんん!!!!!」


夫は縛られたまま頭が無くなっている。スッパリと消えていたのだ。

 切り口は綺麗に横一線され、まるで剣で斬首されたようだった。だがもちろんこの場に、これができる武器などない。拓也も丸腰だった。

 混乱が思考を乱す。無意識に声を上げる妻は、涙を零しながらも、拓也の機嫌を損ねないように口を閉ざして震えている。


「首だけ飛ばしたつもりだったが、あまり調整ができない。」

「んんんんぅううう!」

「うるせぇ女だな____まぁいい。今は許してやる。それで、どこにどれだけ奴隷を売ったか話してもらうぞ。」


 泣きながらも呼吸を整え、ゆっくりと言葉を並べていく。


「そ、それなら、そこの引き出しに入った地図に...」


拓也は反対側にある棚の引き出しを引く。そこには折りたたまれた地図が寝ていて、起こさないようにゆっくりと抜き取った。

 肌触りがザラつきが酷く、古い紙である事がわかる。


「そんなもの、どうする気よ...」


 上の面にはプリズンシックスティーンの所在と名前の列があった。列の中にマサヨシ、つまりは八木元拓也、そしてハーフキャットも書かれてある。


「仇討ちだよマヌケ。」

「なんだっての...」

























 雨音だけが聞こえる明かりの消えた部屋。暗闇の中で、窓から零れる雷光が血の池に浮かぶ女性を照らす。


「気になってるだろうから言ってやる。」


 マサヨシは眼下の女に跨り、返事もないのに話しかけていた。


「お前がプリズンシ...長い名前だな。あそこに送った奴隷は全員死んだ。俺以外は。」


 話しかけながら、動かない腕に向けて手をかざす。


「そこじゃあ失ってばかりだった。まぁいいんだ。元々持ち合わせは____」


 自傷を言い切れずにあふれ出る、瞼の裏に現れたのは記憶、そしてミコチの温もりだった。

 腕の中で細く息をしていた黒焦げのミコチ、もう表情なんて面影もない。泣いて喚くマサヨシの頬に手を触れて、息を引き取った。


「________なかったんだよ。クソが。」


マサヨシは再度集中した。女の遺体を見て、左手の甲が中心、そこから1本の線が伸びていき腕を通過するイメージを作る。

 それから線に触れた腕から縦幅を選定するイメージを持って、握り締める。


「せめて俺の役に立てよ。」


血が飛び散って顔にかかる。手を退けた光景には腕が消えた女の遺体があった。

 綺麗な輪切りとなって胴体から離れていたのだ。断面はかなり綺麗で、まるでMRIの写真のようだった。


「手に残った物もある。瞬間移動のスキル、コレは応用だ。」


  時間差で背後から肉が落ちた気持ちの悪い音がした。腕の10分の1だけを瞬間移動させ、切断したのだ。

これは、あの時ヒナギシ婆さんから送られた物。物体を転移させるスキルだった。


「……こんなものか。ご協力どうも。」


 再度稲光。右手、左足、右足を切断され、顔が顎から上がない女の遺体がマサヨシの目に入る。

 だが心は乱れない。ミコチが死んだ日にマサヨシも死んだのだから。


「あともうひとつある。俺の名前は八木元拓也だ。」


全てを思い出し、手に入ったのは、復讐に取り憑かれた鬼だった。

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