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ブラック企業奴隷の俺は異世界転生して奴隷を解放してみた  作者: ヒゲ博士
第3章 経営難と世界危機

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突然の来訪

 迷い森に帰った後、すぐさま取り掛かったのはメンバーの選出だ。

 食卓を囲んでいたポコ、黒フード、俺は食事を取りながら警護について会合をしている。


「黒フードはこういう警護の仕事とかやったことないのか?」

「ない。……ていうかコンクエスタ、そろそろ名前覚えてくれよ。」

「あーなんだっけかー。」

「棒読みとかフザケた事抜かしやがって!!ちくしょーー!!」


 やる気と言うかもはや抜け殻のような言葉で飾ると、黒フードはいきり立って叫んだ。



 人型呪力顕現事件と呼ばれたあの日、根無し草となった黒フードを俺達は引き取った。

 ひきとったはいいが、やはり信用ができないでいる。扱う魔法の性質的に罠を仕掛けることが多い彼を、俺はどうにも信用できないでいるからだ。

 なのに引き取ったのは、自分の罪悪感を軽減するためでもある。


「…まぁいい。その仕事、俺にもやらせろよ。」


 得意げに喋る。確かに彼の罠魔法は今回の仕事にはかなり向いている。だが連れてはいけない。何故なら仕事をする上での信用度が足りないからだ。


「実際人手的にはそうしたいんだけど、こだわりたいとこではあるんだよな。国交インフラの事業に信頼を置ける人じゃないと」

「…なるほどなぁ。」


 するとヨシッと呟いて黒フードは席を立ち、俺の目を見ながら宣誓した。


「なら魔法契約書を作ってやる。そこに筆記すれば、お前は俺と対等な位置で契約をかわせるぞ。」 


 奴隷や契約や、この世界の魔法は人を縛り付けるものが多い。ほとほと人に信用がないようだ。


「なんだそれ。」

「契約魔法だからペナルティもお前が決められる。あーこれはケンがよく言ってた…パートナーシップ!そうだ!パートナーシップだ!」


 相棒として雇え、と言いたいんだろう。それなら俺としても安心して仕事を任せられそうだ。魔法による強制力が働くなら、それはそれでありだしな。


「わかったよ。」

「おっし!なら早速、魔法契約書の作成を…」

「まてまて。仕事にはあと3人必要なんだ。一緒に考えてくれ。」


 意気揚揚と部屋を出ようとするのを止めたせいで、黒フードは少しだけ機嫌を損ねた。だがこんなことで怒ってもらっても困る。


「あと3人か…。」


 細々と呟いたつもりだが、それが聞こえたのかポコが会話に入ってきた。


「ご主人さま。戦闘に向いている子たちは私がピックアップしておきます。でも恐らく2人程が限度ではないかと。」


 ポコが統括しているのは我らが労働力。こちらで受け持った保護獣人の子供たちだ。

 その中で、現状の手空き人員の割り振り、戦闘に対して怯まない子供を選抜するとなると、やはり2人が限度だろうと理解はしていた。


 何故なら生産量と受注が競合し始めたからだ。


 どう言うことかと言えば、要求される量が生産される量に対して追いつき始めたのだ。


 生産、品質確認、収穫、そして発送。主にこの4工程をするにはそれなりの人員を割く。

そこに向き不向きもあるため、そこから人員を取るとなると、作物納品の品質にも影響がでかねない。

 農業指南の依頼もそれなりに出てき始めているため、出向する人員を考えるとなお厳しいと言うのが嬉しい悲鳴だ。

 現在では人員不足なのもあり、テレサが農業指南役として出向している。


 雁字搦めの打開策を考えていると、ポコがある提案をした。


「ご主人さま。2つ程、案があるのですが…」

「言ってみなさい。」

「まず1つ目なんですが、モノさんはどこに?」





















 俺たちの家は迷い森の中央に敷地を置いている。その広さは東京ドーム程。かなり広大だ。

 中央にある大きな3階建ての木製の家、これが俺達が寝食する建物になる。

 そこから少しだけ離れた所に、石とレンガで出来た大きめの倉庫が鎮座している。それがモノの研究所だ。


 家宅よりも広いし天井も高いが、生活感はないワークスペース。その真ん中でモノは腕組みしながら不機嫌そうな顔色だった。


「それで、俺のとこにお越しになられたのですか。」


 白衣をはためかせて話すゴリラは、俺達に背を向けて、ナックルウォークをする。


「そんな他人行儀みたいな言い方するなよ。最近忙しかったんだ。許してくれ。」

「ふん!知るもんか!」


 二人を置いてきた事は正解だった。何故なら森の賢者、喋るゴリラのモノは完全に拗ねているからだ。

 筋肉質な肉体と黒い体毛を隠すような白衣は小汚くなっている所を考えると、どうやらずっと研究に取り組んでいたようだ。


「そう怒るなよ。忘れたわけじゃないし、寧ろ邪魔をしたくなかったんだよ。それで何作ってるんだ。結構籠ってたろ?」

「…GPS」

「なんて言った今。」

「GPS。」

「____」


 間を繋ぐために放った話題だが、なんとも言えない単語が返ってきた。

 じーびーえす。彼の言うGPSとはあのGPSだろうか。人工衛星を使い、位置情報を割り出す、あのGPSなんだろうか。


「これでその…俺達がどこにいるのか現在地を出せる。」


 想像していたGPSそのもののようだ。モノの左脇にある作業台の上には、林檎程の大きさの球体が一つとさくらんぼ程度の大きさのバッチが6個置かれていた。

 そのどれもが綺麗な銀色の鉄でできており、どう考えてもこの世界に不釣り合いなほどに近代的だった。


「…まじか。」

「その大きいのがマザーサテライトボール。人工衛星の代わりをしている。常に電波を吸収、放出することで信号の位置を検索、信号をシームレスにマッピングしてくれる。」


 テーブルに近づいて、モノが言うマザーサテライトボールにふれると青白い光を放ち、ホログラムを形成した。

 向こうの世界でもなかなかお目にかかることがないAR技術。投射しているのは現地を中心にした迷い森の地図だ。


「すごすぎだ。」


 地図には一つだけの星型のマークを中心に6個の点が表示されている。

 おそらくこの星が、マザーサテライトボールの所在なのだろう。すると突然、触ってもいないのに画面がスライドを始めた。


「まぁまだ調整中だし、ベースは私のいた世界の技術使っている。材料も足りなかったから誤作動だっておきやすい。」


 スライドが止まった場所は、この迷い森から数キロ離れた場所を映し出している。そこにもまた、点が一つだけあった。

 明らかにおかしい。ここにバッチがあるので、こんなところに存在するはずが無い。俺は正直に壊れたのだと思った。


「なぁモノ。」

「まだまだ調整中ではあるが、これを使えばマサヨシの瞬間移動の一助に____」

「モノ!!」

「なんだ?!大きな声出すな!ビビってドラミングする所だったぞ!」

「そんなことよりこれ見ろ!これ!」


 ホログラムの地図を指で示してやると、モノは黙ったまま、駆け寄ってきた。


「因みに言うが俺が壊した訳じゃ___」

「少し待て…。位置座標は割り出せないが…この信号のプロパティはなんだ。」


 モノは慣れた手つきでホログラムに表示された点を毛むくじゃらでゴツい指を使いタッチした。

 すると点の横に吹き出しが現れて、name、Timeの二項目が表示される。

 時間は現出してから信号をキャッチしている間の秒間を表しているようだ。名前はそのままの意味であり、項目の右側にDaisukeと書かれている。

 その名前を見るや否や、モノは腰を折って尻もちをついた。そしてわなわなと身体を震わせて顎を開く。


「そんな…あ、あり得ない。」

「どうした。何があり得ないんだ。」

「いいかマサヨシ。こ、このデバイスはまだ6個しか作ってない。加えてこの世界には衛星はないから、このマザーサテライトボールが電波を吸収するためにある程度のきょ、距離が必要だ。」

「そうだな。それはわかるぞ。」

「で、でもだ。技術的にはおかしいことはない。ここに表示されている信号は次元振動を受信している。」


 次元信号とはまた新しい単語だ。


「私特有の技術だ。私の技術による信号がタイムパラドックスを防いでくれる。時空移動をする生物は観測されていないと時空連続体を壊すか、存在をなかった事にされるからだ。」

「??」

「シュレディンガーの猫と同じ。結果を見るまで結果が確定しないってことなんだ。」


 言ってることはよくわからないが、ブルジュワから子供たちをこちらに向けて移動させた時に起こった惨劇の事を言っているんだろうか。


「話はそ、逸れたが何が言いたいかと言えば___この信号は私が既に作った物から発しているということ。」


 モノが指で示す点を見ると、まだそれは移動を続けていた。


「転移者だ。私の世界からダイスケが転移してきた。友人だ。家族と言って良い。頼む!マサヨシ!ダイスケを探してくれ!!」


 これまで以上に慌てるモノの姿がとても弱々しく感じる。それまでに大切な人なのだろう。

 大切な人が消えてしまう絶望感を、俺は知っている。だから俺はモノの手を取り、つぶらで涙に濡れた瞳を見つめていった。


「任せろ。俺がなんとしてでも見つけてやる。所でソイツの特徴はなんだ?」

















 俺は一先ず、今度の警護にあたる面子を全員モノの研究所に呼んだ。

 モノ、俺、ポコ、黒フード、獣人の子供二人だ。アルマジロ種の女の子にドッグ種の男の子。二人共それぞれの種を表すような耳を頭に生やしていた。



 一頻りの自己紹介を終えて、みんなで球体GPSを囲み、モノと俺で経緯を説明をした。

 近代技術に触れていたポコは呑み込みが早かったが、ナチュラルな魔法使いの黒フードとこっちの世界で生まれた獣人の二人はとてもじゃないが理解をしたとは言えない。


「なんか…お前ら転生者って物騒だよな。」


 黒フードはGPSバッチをツマミ上げながら言った。また軽口を言うのかと突っ込もうとしたが、それより先にモノが食いついた。


「なぜそんな事言う?」

「オメェメッチャ強面だな…まぁいい。誰でも使える技術ってよ。資格がいらねぇってこったろ?取り扱う物の本質を掴む前に履行するとよ、大抵暴走するもんだ。」

「…。」


 いつも斜に構えている黒フードから出た発言は確かに的を得ていると思った。

 俺が扱っているスキルも、重なる部分がある。


「まぁいい。それで集めた理由はなんだよ大将。」

「とりあえず後1ヶ月後の仕事に備えて、今回は訓練も兼ねたダイスケ捜索をすることにした。」


 俺がモノに目配せをすると、マザーサテライトボールを操作する。

 空間にまたホログラムが投射され、ここを中心とした地図が現れた。


「これはこの土地の地図になる。この星型のマークが現在地で中心になり、点は黒フードが摘んで上げてるバッチだ。」


 事柄を考えるよりも事実を一旦受け入れてもらうため、技術的な話は省いて話を進める。


「ここよりさらに遠く、迷い森を抜け、歩くこと二夜三日の場所に、捜索対象のダイスケがいる場所だ。」

「ダイスケと言う人が、モノさんの知人ですね。」


 ポコが指摘すると、モノは大きく頷いた。


「そのとおり。私の命と引き換えにしても助けたい人。家族だ。」

「わかりました。特徴は…。」

「背格好は黒フードに近い。今の服装はわからない。細々としているが筋肉もあり、格闘技術はなかなかのものだ。応用化学、サバイバル力、特に弓矢に秀でている。」


 プロフィールだけ聞けば、本当に助けがいるのか懐疑的になる。そんな不安を途切れさせるように、黒フードが質問をした。


「そのダイスケがいるって場所はどこなんだ。」

「迷い森から抜けた所にある大きな田舎村だ。名前は確か……コリアンダとかなんとか。ダイスケは今はそこで留まっているが、偶に南西に向かって進行している。」


 俺が返事をすると黒フードは相槌をした。


「そうか。そりゃ不味いな。」

「何がだ?」

「は?お前らしらねーのか?てか知らずに慌ててたのか?」


 また新たな情報が湧き出るが、精査する時間はなさそうなので返答を待った。


「この南西にある土地はヤツの狩り場だ。泣く子も黙る伝説級の狩人にして極悪人、ヘルバーグの領地だ。」


 その言葉がでた瞬間に、俺とモノ以外の空気が固まった。


「ただ一本の槍で国に済む住人全員を狩り尽くしたって伝承だ。スキルも魔法も使わない。体一つと槍一本だけで大量殺人したってな。…てかダイスケってやつこんな所で何してんだ…。」

「まずい…。みんな夕暮れまでに準備してくれ、今から言うものだけを背嚢に入れるんだ。」


 こうしてタイムリミットが定められた俺達は、急ぎ足で捜索へと向かうことにした。

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