かみのみそしる
アストライアは頭を抱えていた。
「むぅ〜。」
何時もならマサヨシの旅路を眺めている所だが、今日は違っていた。
白い空間の真ん中に穿つ、黒色の丸い穴を眺めていたのだ。
「なんなのこれは…ブラックホールじゃないのは確かね。次元を隔てる壁に穴が空いた…というより空けられたって感じね。」
異世界転生者派遣機構「天秤」の女神として捨て置けない事態に、どうしていいか分からず首をかしげている。
「この穴。世界同士をつなげているのね。だとしたら…私の世界に異物が入り込んだ可能性がある…と、言うことは…」
突然、思い出したようにアストライアは本を呼び出し、ページをめくり始めた。
「緊急対応マニュアルには…………あった!!世界に異物が入り込んだ場合、神の座を降りて、世界に顕現する事を赦す____________きたーーーーー!!!」
両手を上げて笑顔を咲かせると、アストライアは躊躇いなく、穴に飛び込んだ。
「待ってなさい!私が異物を見つけてしまうんだからーーーー!」
アストライアは久しぶりの下界を楽しめると、神の座を降りた。これが罠とも知らずに。
太陽の恵みをすべて受ける大きなトウモロコシ畑が青々と広がっている。あの日救った子供たちは必死に頑張っていた。その成果を目に入れて、感涙する日が来ようとは。
「ご主人殿!」
「その意味わからん日本語__」
若く青い声に振り向けば、トウモロコシ畑のカーテンから犬族の少年が、飛び出した。
「太郎。楽しそうだな。」
彼はこの広大なトウモロコシ畑を担当しているリーダーだ。犬族らしく言いつけを守るいい子で、本当によく仕事をしてくれている。
太郎は円らな瞳を向けて、まっすぐ俺を見て、楽しそうに話す。
「当たり前ですぞ!!みなご主人殿のお陰で仕事に、自由に、お腹も満たせております!テレサ殿も悪くありませんでしたが___」
楽しそうに話してくれてる様子が可愛らしい。だが彼は知らない。俺が柴犬のような耳で判別をしていることを知らない。この子たちの顔を見るたびに、罪悪感が淀んでいることを知らない。
「わかったわかったって。あんまりそれ以上言うと、テレサが拗ねるぞ。」
「ふむ。それもそうですな!」
その感情を向けられるに値しない。
「・・・みんな、ご主人殿に感謝しております。それだけはわかってください。」
違う。もっと早く行動すれば、もっと助けられたんだ。
「ありがとな!!今日もアキナイに行くから、あとは頼むな。」
「任せてください!!お気をつけて!!」
言葉だけ置いて、その場から立ち去るが、嫌な思考が気持ちを心から引き釣りだそうと漂ってくる。
こうやって毎日畑に顔を出すのも、現状を維持するため。子供に仕事を押し付けて、奴隷と何が違うんだろうか。
疑念と後悔が背中を見ている気がして、まるで逃げるようにその場から逃げ出した。




