表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/25

追いかける影、知らないままの二人

気づかないまま近づくことがあります。

それは偶然のようで、どこか必然にも見えます。

森の奥は、明らかに空気が変わっていた。


冷たいというより、張りつめている。足音が吸われるように小さくなり、枝の揺れる音だけが遠くまで残る。風が止まる瞬間が増え、何かを待っているような静けさが続いていた。


レオンは立ち止まる。


「近い」


小さく言う。


ミリアが頷く。魔力の流れが不自然に歪んでいる。戦闘の残滓ではない。もっと新しい、もっと静かな痕跡だった。


ガルドは盾を握り直す。


セレスも笑っていなかった。


追っている対象が、敵ではない可能性を全員が理解し始めていた。


少し先で、魔物の咆哮が響く。


巨大だった。


これまで遭遇したどの個体よりも重い存在感が森を押し広げる。地面が震え、枝が落ち、空気そのものが歪む。


「来るぞ!」


戦闘が始まる。


レオンが斬り込み、ガルドが受け止め、ミリアの魔法が爆ぜる。セレスの光が重なる。連携は完璧だった。


それでも押し切れない。


魔物は確実に強かった。


そのときだった。


魔物が振り下ろした前足が、途中で止まる。


空間が歪む。


目には見えない圧力が一瞬だけ重なり、重さが抜ける。


「……まただ」


ミリアが呟く。


レオンは叫ぶ。


「合わせろ!」


剣が深く入る。


ガルドが押し込み、魔法が炸裂し、魔物は崩れ落ちる。今度は全員が分かっていた。


自分たちだけの勝利ではない。


戦闘が終わった直後、レオンは走り出す。


「向こうだ」


迷いはなかった。


痕跡は消えかけている。それでも追える距離だった。


その頃、森を抜ける手前でフィアが空を見上げていた。


今日は首元まで覆う軽い服を着ている。風が強く、布が何度も揺れる。髪を押さえながら、小さく息を吐く。


「さっき、ちょっと揺れたね」


「大きいのがいた」


カイルはそれだけ言う。


戦闘を見ていない二人にとっては、ただ遠くで何かが動いた程度の出来事だった。


フィアは少しだけ後ろを振り返る。


理由は分からなかった。


ただ、視線を感じた気がした。


森の奥からレオンたちが現れる。


距離はまだ遠い。だが、確かに見えた。


草を揺らしながら歩く二人の背中。


戦いの直後とは思えない歩き方。


「……あれか」


ガルドが低く言う。


ミリアは言葉を失っていた。


セレスも黙る。


レオンだけが目を離さなかった。


フィアは何も知らずに歩いている。


カイルも振り返らない。


距離は縮まっている。


だが、まだ交わらない。


風が強く吹く。


草が一斉に揺れ、視界が途切れる。


次の瞬間、二人の姿は木々の向こうへ消えていた。


レオンは立ち止まる。


追えたはずだった距離が、また遠くなる。


それでも確信だけが残った。


「いた」


初めて、名前のない存在が形を持った。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


ついに距離が一気に縮まりました。

まだ交わらないまま、物語のもう一つの軸が動き始めています。


次回は、さらに一段踏み込みます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ