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13/18

風の通る道の日

同じ場所でも、来るたびに少しずつ違って見える。

変わったのが景色なのか、自分なのかは分からない。

秋に入ったばかりの風は、まだ冷たくなりきっていなかった。


街道を外れた細い道には背の低い草が残っていて、歩くたびに乾いた葉が擦れる音がする。空は高く、雲の影がゆっくりと地面を横切っていた。


フィアは今日は外套を着ていなかった。


代わりに薄い布の上着を羽織っていて、風が吹くたびに袖がわずかに揺れる。歩く速度はいつもと同じなのに、裾が草に触れるたび、ほんの少しだけ足を止める癖があった。


カイルはそれを見ていたが、何も言わなかった。


「この道、前にも通ったよね」


フィアが言う。


「春だったな」


「あのとき、まだ暑くなかった」


それだけの会話だった。


けれど、同じ道には見えなかった。


道の先で、小さな荷車が止まっていた。


商人らしい男が、車輪を外して困ったように座り込んでいる。近くには誰もいない。


フィアが足を止める。


「大丈夫ですか?」


声をかけると、男は驚いたように顔を上げた。


「ああ、いや……車輪が外れてしまって」


カイルは無言でしゃがみ込み、歪んだ金具を元に戻す。力を入れた様子もなかったが、次の瞬間には車輪は元の位置に収まっていた。


「これで動く」


それだけ言って立ち上がる。


男は何度も礼を言ったが、二人はもう歩き出していた。


しばらく進んでから、フィアが小さく笑う。


「最近、よく誰かに会うね」


「そうか?」


「うん。でも、すぐ終わる」


言い方が少しだけ曖昧だった。


カイルは意味を聞かなかった。


風が抜ける。


フィアの髪が横に流れ、袖がカイルの腕にかすかに触れた。偶然だったのか、どちらも動かなかった。


遠くで鳥が鳴く。


道はまだ続いていた。


少し離れた場所で、商人の男が二人の背中を見送っていた。


車輪は確かに直っている。だが、どうやって直したのか思い出せなかった。ただ、気づいたときには終わっていた気がした。


「……冒険者、か?」


自分で言って、首を振る。


あんな静かな冒険者を見たことがなかった。


風がまた吹く。


二人の姿は、すぐに木々の間へ消えていった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


季節が変わると、同じ道でも少し違って見えます。

二人にとっても、きっと同じではない一日でした。


次回は、少しだけ遠くまで歩きます。

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