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10/13

夏の終わりの空の日

同じ道を歩いているはずなのに、ある日ふと、季節が変わったことに気づく。

理由は分からない。ただ、風の音だけが少し違っている。

夏の終わりは、気づかないうちに始まる。


昼間の陽射しはまだ強いのに、夕方になると急に風が軽くなる。熱を含んでいたはずの空気が、どこか遠くへ抜けてしまったようだった。


川沿いの道を歩きながら、フィアは何度か空を見上げていた。


雲の形が変わっている。


前よりも高く、ゆっくり流れている気がした。


「少し涼しくなったね」


言葉にすると、それがはっきりする。


カイルは頷くだけだった。


水の音は変わらない。


けれど、前に来たときよりも人の姿が少なかった。夏の盛りには子どもたちが遊んでいた場所も、今は静かで、石の上に残った水跡だけが光っている。


フィアは立ち止まり、しばらくその場所を見ていた。


何を思い出しているのかは、自分でも分からなかった。


ただ、同じ場所なのに少し違って見えることだけが、不思議だった。


歩き出すと、風が吹いた。


髪が揺れ、視界の端で光が揺れる。夏の匂いが、ほんの少しだけ薄くなっている。


「ね」


フィアが言う。


「なんだ」


「また、ここ来ようね」


何気ない言葉だった。


約束というほどの重さもない。ただ、思いついたことをそのまま口にしたような言い方だった。


「ああ」


カイルはそれ以上聞かなかった。


いつ来るのかも、なぜそう言ったのかも。


夕日が低くなり、影が長く伸びる。


歩く速度は変わらないのに、帰り道が少しだけ早く感じられた。


理由は分からない。


ただ、日が沈むのが前より早くなっている気がした。


橋の上で、フィアが立ち止まる。


川面は赤く染まり、流れが見えなくなるほど光を反射していた。しばらく二人で同じ方向を見る。


言葉はなかった。


けれど、急いで帰る必要もなかった。


やがて光が消え始める。


夜になる前の、短い時間だった。


「行こっか」


フィアが言う。


カイルは頷く。


橋を渡りながら、フィアは一度だけ後ろを振り返った。


川は変わらず流れている。


ただ、もう夏ではない気がした。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


今回は少しだけ、季節が進んだ日でした。

何も変わっていないようで、同じ時間は少しずつ過ぎていきます。


次回から、少しだけ空気が変わります。

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