5番目の勇者
勇者様だ!
沸き立つ人々の中で僕は目を覚ました。
どうぞこの世界をお救い下さい。
一際豪華な服を着た女性が歩み出る。
そう言われても、何がなんだか?
「あのぉ~、ここって?」
「ここは間もなく無くなる世界。
今まで勇者様が四名
立ち向かいましたが……あえなく」
「断わるって、できませんよね」
「先ほども申し上げましたとおり、
何もしなければ滅びるだけです」
やるしかないのかよ。
「では、聖剣とかあるんですか?」
「ありません。
と言うか、聖剣ってなんですか」
まったく、どうやって戦うんだよ。
「あっ!僕が魔法を使えるとか」
「おお!魔法をお使えに」
両手を胸の前で合わせて微笑む。
僕は空いている窓から腕を伸ばし叫んだ。
「エクスプロージョン!」
シーン
僕の心が爆発した。
真っ赤な顔で固まっていると
「あの、聖剣はございませんが
今までの勇者様が残された聖遺物でしたら宝物庫にございます」
宝物庫。
その名のとおり金ピカの品物やら、
宝石の数々はあるが武器が無い。
僕は聖遺物を探して歩いていると、
どこかで見たような麦わら帽子が見つかった。
フン
ガキの頃、近所の悪ガキ共と将来は海賊王になる
って本気で思っていたなぁ。
もう小さくて被れなくなった麦わら帽子を
首に引っ掛けて背中に背負った。
ふと足元を見るとサッカーボールが転がっている。
僕は手を使わず蹴り上げると、
二度三度リフティングした。
「懐っつう」
小学生時分は、ずっとボール蹴ってたっけ。
僕はドリブルしながら宝物庫を奥へと進む。
次に見つかったのはバットだ。
「コレは使えるか」
手にしっくりとくる感触は、中学で
大リーグの大谷選手になろうと
毎日素振りしてたあのバットじゃないか?
ちょっとまてよ。
コレ全部僕のじゃないのか。
バットを手に宝物庫の一番奥に目をやる。
そこには1台の自転車が停められていた。
コレは僕のじゃない。
小中高とずっと一緒だった。
いつもバカ話ばかりして、
周りから「また、夫婦漫才はじまったよ」
なんて言われて、
否定しながらもまんざらじゃなかった。
陽菜
高2になってお前が、先輩と付き合ってる
と聞いて胸が痛くなった。
何も言わなくても、ずっと一緒だと思ってた。
勝手に思っていた。
声がした。
「間もなく魔王がやってきます。
また、諦めますか」
豪華な服を着た女性の顔が陽菜に見えた。
「いや!
もう僕はもう僕を諦めない」
僕は、自転車に跨り外へ出た。
あっ!気が付いた。
真っ白な部屋
看護師がいて、隣で涙ぐむ陽菜が見えた。




