プロローグ 引きこもりヲタク、事故死。
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「うっひょ~! 魔法少女リリルカの新作フィギュア、想像以上の完成度! フルプライスも納得の出来なら、もはや買うしかあるまいて!!」
ボクの名前は斉藤真琴。
日々をゲームとアニメのために費やし、二次元と美少女を愛する戦士。今日も効率性を最大限まで高めた部屋で引きこもり、一心不乱にヲタ活に勤しんでいる。今年で32歳かつ独身である、という事実からは目を背けつつ、さてフィギュアの購入ページへ、と――。
「な、なんだとおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
その時だった。
ボクがサイトにアクセスすると、すでに売り切れの文字が。
そんなはずはない。このフィギュアの販売が始まったのはさっき、ものの十数分前でしかないはずだった。元々がメジャーとまではいかない作品故、ホームページで鑑賞する時間があると踏んでいたが、その見通しが甘かったのか……?
「いいや、これは違う。まさか――や、やはりぃぃぃぃぃ!?」
まさかと思って、とあるフリマサイトを検索してみる。
すると、そこには転売の山、山、山ァァァァァ!!
「おのれ、転売ヤーめ! マイナーとはいえ数量限定のマニア垂涎の品、嗅ぎつけてきおったか!! 許さん、許さんぞおおおおおおおおおおおお!!」
ボクは力任せにデスクに拳を叩きつけた。
なにやら食べていたカップ麺が倒れたような気がしたが、そのようなことを気にしている場合ではない。どうにかして、正規のルートで手に入れる方法を探さなければ……!
「ぐ、ぐぬぬ……ぬ?」
などと考えていたら、何やらバチバチという音が聞こえた。
どうやら足元からするようだけど、いったい――。
「なにが起きて――――あばばばばばばばばばばばばばばば!?」
その時だった。
まさしく全身に電流が駆け巡り、意識が遠退いていったのは。
ボクは力なく床の上に倒れ、天井を見上げることになった。これはよもや、死というものだろうか。それならいっそ、異世界転生とか、してみたいな。
――なんて。
そんな冗談めいたことを願いつつ、ボクはゆっくり瞼を閉じたのだった。
◆
――で、まさか本当に異世界転生するとは思わないじゃん。
あんなのただの冗談じゃん。
というか、死の間際に本気で願うやつなんておる? いたんだなぁ、ここに。その結果として、ボクはいま異世界にいるのだけど、どうしてそれが分かったのか。
だって、いわゆる世界の知識が詰め込まれていたから。
ご都合主義とかではなく、すなわち『そういう存在』に転生したのだった。
『いやぁ、魔法って本当にあるとこんな感じなのか……!』
最初はずいぶんと感心したものである。
だけども、誰とも意思疎通ができないまま一ヶ月が経過すると、さすがに精神的に参り始めてしまった。元々が引きこもりだったのは認めるけど、まさか『身動きも取れない』状態に転生するとは思わない。ボクは仕方なしに毎日、自身の声が聞こえる誰かが現れないかを試した。
だが、そんな人が現れるわけがない。
だって――。
『……本だもんなぁ、ボク』
そう、ボクが転生したのは異世界のとある本。
王都立魔法学園の秘密の図書館、そこの奥に置かれた『禁断の魔法書』だったのだ。まさか、そんなものに転生する未来があるなんて思わない。
ボクは悲しみを背負いながら、今日も今日とて何者もいない空間で声を上げた。
『誰かー! 誰か、ボクの声が聞こえる人はいませんかー?』
当然ながら、そんな者など現れない。
そう思っていた時だった。
「こ、ここどこぉ……? 誰か、いるんですか……?」
『え……!?』
一人の美しい少女が、おっかなびっくりに秘密図書館に現れたのは。
これがボクと、天才少女リリアナとの出会い。
この出会いが後に世界の命運を握るかは、正直まだ分からないままだった。
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