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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

洗濯機の蓋を開けたら異世界ですか?!

作者: 風見ミルク

美咲が買った洗濯機。中古ながらも結構綺麗だった。

これからは家でも洗濯ができる♪


ん?なに?なんで?

なんで戦ってるの!?

私が望んでいるのは ”戦場” ではありません! ”洗浄”なんです!!!

(ーーー私はいったい、なにを見ているんだろうーーー)




キンッーーー!


火花が散っていた。


バキン! ドン! ドガ!!


「くっ!待ち伏せか!!」


「囲まれるぞ!閣下を守れ!!」


甲高い怒号が飛ぶ!すでに土煙が舞い散り、砂利道の一角で火花が散る。

剣を振るう男たちが叫ぶ。

互いの剣がぶつかり合い、砂塵をまき散らしながら怒号が飛び交っている。


「貴様ら、ただの盗賊じゃないな!?狙いは閣下か!?」


襲っていると思われる男たちは、粗末な革の鎧とぼろ布を巻いたような恰好。

物語に出てくる「盗賊」みたいな身なりだ。

耳をつんざく金属音と、飛び散る火花。


「来るぞッ! 左右に展開している!囲まれる!」


「ーーー閣下を守れ!!」


スドォン!ガァン! 地面が揺れるほどの衝撃。

粉塵が舞い、視界が白く染まる中、剣と剣が火花を散らす。



「くそっ、数が多い……!」



剣と剣がぶつかるたびに、甲高い金属音が響く。


「ひるむな! われらの敵ではない! すべて殲滅せよ!」


閣下と呼ばれた30代前半に見える男が声を張り上げる。

盗賊風の男が一人倒れ、護衛の一人がそのすきをついて間合いを詰める。



「「うおぉぉぉぉッ!!」」


ガッ!!  キイン! ドガァン!!



剣と剣がぶつかり、火花が散り、砂利が跳ね上がる。

砂利道に響くのは、打撃音と怒号。




「……」


(…いや、あのこれ何??……)


目の前で命のやり取りが展開される。



「えっと……なんで?……。私…なにを見てんの…?」



ーー火花が飛び交う命がけの激しい戦闘をーー


ーー私は、…洗濯槽の奥で繰り広げられる戦闘を見つめていたーー




◇◇◇数日前◇◇◇



洗濯機と冷蔵庫を買うために、大き目な家電量販店に足を運んでいた。


「いろんなメーカーの洗濯機があるなぁ……高っ…!」


目についたのは、おしゃれで多機能な最新式ドラム式洗濯機。20万円越えの値札がまぶしい。

値札には「ご相談ください」の文字が入っている。


(自動洗剤投入……静音設計……、時短コース……柔らか乾燥……)


魅力的な機能が並んでいる。


(うわぁ、欲しいなぁ……。やっぱ値段が高いのは性能が良いって事なのよね…)


「…無理。予算オーバー……」


未練の視線を向けてから、店の隅に目をやると、そこに大き目な

「リユースコーナー」

の看板が目に入った。


「リユース…?って事は中古って事かな……」


気になって近くで見てみれば、綺麗に磨かれた洗濯機たちが並んでいた。

ちょっと傷があるものもあるが、中を覗けばとてもきれいな状態だった。


『内部クリーニング済み・作動確認済み』

とのPOPも張られている。


(え、普通にきれいじゃん。しかもドラム式もあるし。)


「すみません。

こちらのコーナーにあるのって、全部リユース品ですか?」


「はい。当社では資源循環の観点から、リユースの家電の取り扱いを強化しておりまして。

内部まで分解洗浄して点検済みです。」



「へぇ……そうなんだ……」


新品ではないけど、見た目とこの機能で、この価格なら有りかも。

そう思って、ほぼ即決で中古のドラム式洗濯機と小型の冷蔵庫を購入した。



祖母が残してくれた郊外の一軒家に引っ越してきて、そろそろ3か月。

エアコンはついていたけど、それ以外の家電は祖母が亡くなった時に処分済み。

冷蔵庫も洗濯機も無く、近所のコンビニ総菜とコインランドリーで何とかやってきた。


(ネットが有ればテレビはいらないし、スマホで動画も見られるし、情報系は何も困らなかったんだけど……)


でも、やっぱり毎日の洗濯はコインランドリーにもっていくのも結構ストレスだった。

料金も勿体ないので、数日分をまとめて持って行ってたけど、なにより……


(下着はさすがに家で洗いたいのよね……)


……それに毎回乾燥まですればお金もかかる。


そう思った私は家電量販店で、冷蔵庫と洗濯機を購入するに至ったのだった。



◇◇◇2時間前◇◇◇



ピンポーン♪


「ヤマバタケ電気です。

遠藤エンドウ 美咲ミサキ様で宜しかったでしょうか。洗濯機と冷蔵庫の設置に参りました。」


「はーい!今開けまーす!」


(やっと来た~。これでようやく家で洗濯できる…!)


扉を開けると、作業服姿の男性が二人。どちらも無駄口はきかず、黙々と準備に取り掛かかっている。

一人はマットの様な物をサッと広げ、もう一人は冷蔵庫の段ボールを開けて運搬の準備を始めた。


(すごい…、無駄な動きが無い……さすがプロ)


玄関先で梱包を解かれた、真新しい冷蔵庫と簡易梱包の洗濯機が出てきた。

なんかワクワクする。


「……はい、設置完了しました。作動確認しますね」


作業員が洗濯機の電源を入れると、静かに回り始める音がする。


「冷蔵庫の方は電源を入れてからしばらく様子を見てください。

冷えるまで最初は時間がかかりますので」


「あ、はい。分かりました!」


なるほど。冷蔵庫は様子を見るっと。


「では、こちらにサインをお願いします。」


ここにチェックをいれて、と言う通りチェックをいれてサインを書いた。


「では、設置の事でなにが有りましたら、お店の方かこちらの名刺にご連絡ください」


「はい、ありがとうございました!」


作業員たちは敷いていたマットを回収し、あっという間に部屋御後にした。

日常の静けさが戻ってくる。



「……これでやっと、家で洗濯できるー!」


ーーーこうして念願の洗濯機の設置が完了したーーー


「とりあえず、タオルと下着を洗っとこ♪」


洗濯機のドアを開けて、洗濯ネットに入れた下着とタオル放り込む。


電源を入れて、デリケートコースを選択し「スタート」を押した。


洗濯槽がゆっくりと回り出した。


(最初に中の量を測って、水の量をきめるんだっけ)


しばらくすると、チョロチョロと水の入る音が聞こえてきて、そのまま洗い終わるまで、冷蔵庫に飲物を入れたりスマホを弄ったりしていた。


ーーー洗濯が始まって10分ほどたった頃ーーー


ウィーン……ガタッ、ドンッ!ドッドッドン!ドガン!


「…えっ? なにこの音。ちょっと、うるさーーー」

  

      ドンッ!!


「えっ、ちょ、やばっ!壊れた!?やっぱ中古ってダメだった!?いやでも試運転では普通だったし!」


慌てて洗濯機に駆け寄った。

ドラムが激しく揺れている様な音と振動。

焦ってとりあえずーーー


中の洗濯物を取り出すために、私は洗濯機の蓋を開けた。



…… そして冒頭のシーンになる ……



キンッ!

「囲め!抜けさせるなッ!!」

「させるかぁっ!」

「うわっ! くそ!!」


目の前で繰り広げられる、まさかの戦闘。

斜め上から見ている様な視点での光景が、洗濯槽の奥に映し出されている。


耳をつんざく金属音。

飛び散る火花、轟く怒号。


(いや…え?…ええ??)


洗濯槽の奥では激戦が繰り広げられている。


「全員、閣下を守れ!!!」

「囲まれるぞ!展開しろ!!!」

「退くな、押せ!!!」


全員、マジ命がけ。

だれもふざけていない。

いや、ふざけているのはこっちの現実の方だ。


(えっなにこれ??? VR? 最近のドラム洗濯機にはVR機能がある!?そんなわけないわ!!!)


一人突っ込む。


粉塵と金属音に包まれ、ドラム洗濯機の奥では激戦が繰り広げられる。


(ってか……てかさ……)


(わたし……の下着……)


(下着……)


(どこ!?)




時系列修正

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