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第1話:皇女救出作戦 -3

「感謝します... 本当に、心より感謝いたします...」


聖騎士のリーダーと思われる30歳くらいの男性騎士は、震える声で礼を述べた。

彼の顔には深い傷があり、鎧は何箇所も破損していた。それでも彼の瞳には、騎士としての誇りが健在だった。


「皇女殿下は無事なのですか?」


ダイチは核心を突く質問をした。

彼の声は冷静さを保っていたが、内心の焦りが滲み出ていた。無理もないダイチはまだ戦闘の実戦経験が少ないのだ。


聖騎士リーダーは一瞬言葉に詰まり、苦しそうに息を吸った。


「皇女殿下は...奥の祭壇に」


聖騎士リーダーは言葉を詰まらせ、祭壇の方角を示した。彼の腕は震え、指す方向には長い通路の先に広がる大きな空間があった。


「魔族の目的は、殿下によるオーパーツの再起動阻止。我々は時間を稼ぐために...」



祭壇、オーパーツ、再起動。聖騎士団からの通信の内容が、ここで繋がった。

皇女は魔族の脅威に対抗するため、危険を承知でオーパーツを起動させようとしているのだ。


クォーツと弥生に手当てを任せ、ダイチたちは聖騎士に導かれ、祭壇へと急いだ。


ある程度回復したら、クォーツと弥生も後から追いかけてくるはずだ。念のため、レオンがジェネシスのうち二体を護衛に残した。



石造りの通路は冷たく、壁に掲げられた松明の光が彼らの影を長く伸ばしていた。

天井は高く、柱には神殿を建てた古代人の信仰を表す彫刻が刻まれていた。歩くたびに靴音が反響し、緊張感を高めていた。



祭壇へと続く通路を進む。

空気が、再び張り詰まっていった。

重く、濃密な穢れ。


下級魔族程度のそれとは比較にならない悪意を感じる。


通路の壁には、かつては美しかったであろう壁画が描かれていたが、今は黒い汚れに覆われ、その姿はほとんど見えなくなっていた。

床には血の跡が点々と続き、聖騎士たちが命を懸けて守ってきた道筋だと分かった。



通路を抜けると、そこは中庭よりも広い空間だった。


大理石の床、高い天井を支える巨大な柱、そして中央に鎮座する古代の儀式場のような雰囲気を持つ祭壇。天井には巨大なステンドグラスが嵌められ、月明かりがその色鮮やかな図柄を通して床に映し出していた。


かつてはこの空間で神聖な儀式が行われていたのだろうこの神殿の中心にあたる場所である。

今はその神聖さが魔族の穢れによって汚されていた。


祭壇にたどり着くと、そこには皇女セレフィアと、彼女を守る騎士エリナの姿があった。

そして、その周りには力尽きた聖騎士たちと魔物たちの亡骸が…


ダイチは状況を素早く把握した。彼の鋭い観察眼は、戦場の全体像を瞬時に捉えていた。


祭壇の傍らでは、細身で気品のある体型の皇女セレフィアが何かに触れながら祈るように立っていた。


ブルーを基調とした神官服に王家の紋章が施された格式ばった装束は血で汚れているが、その美しさは損なわれていない。

銀灰色のセミロングの髪は優雅に流れ、ブルーと紫のオッドアイが神秘的な輝きを放っている。

その顔立ちには揺るぎない気品と優雅さが宿り、見る者を惹きつけるほどの美しさを湛えていた。


隣には満身創痍の聖騎士エリナ。

騎士らしい鍛え上げられた体型に、アニメの典型的な聖騎士のような騎士鎧は他の騎士と同じくところどころ砕け、


聖なる魔法剣ブロードソードは折れている。ブロンドの髪は乱れていたが、その目には決して諦めない決意の火が灯っていた。

腕など身体の一部はサイボーグ化されているが、その外見はあまり機械的ではない。その顔立ちは真面目で凛々しい。


彼女たちの周囲には傷つき倒れた聖騎士たちの姿があった。

彼らの多くは息絶えており、残された者も満足に動けない状態だった。


祭壇の中央にある鈍く光る物体...オーパーツに、皇女が触れるたび、強いエネルギーが発せられていた。その光は青白く、空間を満たす魔族の穢れを押し返すようだった。


オーパーツは古代の金属でできているようで、表面には複雑な模様が刻まれていた。それはかつて神殿を守護していた力の源であるらしい。



「エネルギー反応、急上昇。オーパーツの再起動プロセス、最終段階を確認」


シャルマがインカム越しに報告してきた。彼女の声は冷静だったが、その背後でアークの警報音が鳴っているのが聞こえた。


パーティ専属の技術者であるシュミットの声もインカム越しに続いた。


細身だが器用そうな体型に、茶色の短髪はやや癖がある。機能的な作業服に身を包み、その指先は細かい作業が得意そうな手つきをしている。彼の腕部などには収納式の工具が常に携帯されており、技術者としてのプロ意識を感じさせる。


「魔族のエネルギーパターンと激しく干渉...再起動が完了すれば、魔族の活動に影響が出るでしょう。急いでください...時間がありません。レーダーにこの神殿に向かう新たな移動物体を検知しています」


彼の声には焦りが混じっていた。


皇女たちは、ダイチたちが到着するまでの間に、聖騎士たちに護られながら、ここまで再起動を進めていたのだ。

多くの犠牲者をだしながら、それでもやめるわけにはいかなかったのだ。

彼女の手からは血が流れ、顔は蒼白だったが、その瞳には強い意志が宿っていた。

あと少しで、再起動が完了する。



10分くらいは経っただろう。

その間に、クォーツと弥生がある程度力を回復させた聖騎士たちとともに祭壇の場に姿を現した。

念のために確認したが、生き残ったのは、彼らだけであろう、ということだった。


それでも、少しだけ空気が和らいだ感覚があった。

このオーパーツが再起動さえすれば、形勢は大きく変わる可能性があるのだ。




刹那。


祭壇とダイチたちの間に位置する空間が、大きく歪み始めた。

まるで空気そのものが引き裂かれるように、黒い裂け目が広がっていく。

重く、濃密な悪意が空間を満たす。その悪意は実体を持ったかのように、肌に触れるほどだった。弥生が息を呑んだ。


「この穢れ...!来ます!

 上位の魔族です!これまでの者とは比較にならない!!」


弥生はダイチの服の裾を掴むかのような仕草で、庇うように傍に立った。

彼女の顔は恐怖で青ざめ、体が小刻みに震えていた。

しかし、その目には敵に立ち向かう決意も見えた。そう彼女は一流の戦士でもあるのだ。


祭壇へと続く通路、広間の入り口...空間が裂けるように歪み、異形の者たちが姿を現した。


黒い鎧に赤い目を持つ堕落した騎士、影のような形をした司祭、血のように赤い鎧を着た武官。彼らはおそらく中級魔族で、下級魔族とは比較にならない力を持っていた。


数は少ないが、一人一人が圧倒的な力を持っている。


その中心に立つのは、黒き鎧の堕落した騎士だった。

きっと彼がこの群れのリーダーなのだろう。彼の鎧は漆黒で、時折赤い紋様が浮かび上がり、その手には人間の腕よりも太い巨大な剣を持っていた。


「忌々しい光だ。再起動はさせん。オーパーツは、我ら魔族が管理するべきものだ」


人の言葉を介するレベル。


それだけで高度な知能を持つ上位の魔族である証だ。


冷徹な視線が、祭壇の皇女に向けられた。

その声は低く、不気味な響きを持っていた。まるで複数の声が重なっているかのようだった。耐性のないものが聞けば、一瞬で意識を持っていかれる、そういう威圧を伴った声だ。


低く、重圧のある声が響いてきた。


魔族の目的は、オーパーツそのものだったようだ。


彼らはその力を自分たちのものにしようとしているのだろう。神殿内の空気がさらに重くなり、呼吸が困難になるほどの圧力が全体に広がった。


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ガイア物語は非常に多くの作品群で成り立っています。
それぞれの視点、文章のテイストを変えています。
この複雑なガイア物語を十二分に楽しんで読んでいただくためにぜひガイア物語の歩き方ガイドを参考にしてください!


中核シリーズ
● S-1 ガイア物語 ~星を紡ぐ者たち~ 普通の高校生、すべてを《コピペする能力》を駆使して異世界で世界最強パーティの最強サポート役に!(本編)
● S-3 ガイア物語 ~影の調律者~ 異世界でスパイに。未来の異世界人たち、最強デコボコチームが世界の調律の真実を暴く!
● S-5 ガイア物語 ~失われた虚構の千年史~ 美しく若き女王が暴く王国の光と影。オッドアイに映る、神と悪魔、過去と未来、すべての真実とは…

短期集中連載
● S-2 ガイア物語0 ~地球奪還作戦~ 奪われた大地を取り戻せ!
● S-4 ガイア物語  ~歴史の調律者の誕生~ シータの旅立ち
● S-6 ガイア物語 ~ガイアに刻まれた残響~ 名も無き彼らはガイアの礎になった…
● S-7 ガイア物語 ~大地を駆ける絆 〜 アークナイツ、旅立ちの足跡〜
● S-8 ガイア物語 ~星屑食堂の地球ごはん~ 異世界で記憶と努力で日本食づくり
● S-9 ガイア物語 ~ほころび日常~ 今日も世界の片隅で淡々と何とかクエストをこなしてます~
● S-10 ガイア物語 ~ほころび日常2~ 今日も世界の片隅でひたすらクエストをこなしてます
● S-11 ガイア物語 ~国造り神話~ 歴史の調律の始まり
● S-12 ガイア物語 ~技術者の攻防〜 技術の融合が最強の仲間と世界を変える
● S-13 ガイア物語 ~記憶の巫女~ 調律の歴史に抗う美しき巫女の一族の物語
● S-14 ガイア物語 ~アルテア通信~新人獣人記者ラナの王国取材日誌①


ショートストーリー
一話完結。本編などの補完のストーリーです。
騎士団長の秘められた夜会 ~赤魔導士と聖騎士、静かなる酒杯~
ツンデレ従姉妹は知っている
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