エンドロール
街の闇が深く沈み込む中、薄暗い部屋で一台のテレビが無機質に光を放っている。
ニュースキャスターの声は無感情で、ただ事実だけを淡々と伝えた。
「山中の廃墟で五人の遺体が発見されました。
警察は現在、犯人の行方を追っていますが、依然として逃走中です。
犯人は計画的かつ冷酷な手口で被害者を葬り去り、未曾有の事件となりました。」
映し出される被害者たちの顔。
笑顔も、苦悩も、何もかもが凍りついたまま、そこにある。
しかし、画面の隅にひっそりと映るものがあった。
テレビの前で、ゆっくりと背を向けていた男が振り返る。
その瞳は虚ろで、闇の底から這い上がった何かを秘めているようだった。
彼の手には、小さな写真が握られていた。
「終わったわけじゃない――まだ、終わらせてはいけない。」
その囁きは、部屋の静寂を切り裂いた。
絶望と狂気の境界を彷徨いながら、彼は暗闇に沈む。
画面のニュースが続く。
だが、その声は遠く、意味を失っていく。
犯人は逃げ切った。
復讐の連鎖は終わらない。
闇の中に残されたのは、消えない痕跡だけだった。
画面はぼやけ、ゆっくりと暗転し、静寂が支配する。
この物語を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
復讐というテーマは、いつの時代も人間の深い闇を映し出します。
正義と狂気、その境界線はあいまいで、時に読者の心に鋭く突き刺さることでしょう。
本作では、犯人視点で語られる叙述トリックを用い、読者の視線をあえて一方向に誘導しました。
そこに潜む欺瞞と真実の交錯を楽しんでいただければ幸いです。
誰もが持つ「復讐心」という名の火種は、決して消えることはありません。
それを静かに見つめ、受け止めることができるかどうかが、この物語の問いかけでもあります。
最後に、親友の優しさと、彼を奪った理不尽さに思いを馳せていただければ、
この物語の意味が少しは伝わるのではないかと思います。
また別の物語でお会いできることを楽しみにしております。