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第六章

廃墟の奥深くに最後の標的がいる。

その男、藤原亮介は大学時代、最も狡猾で残忍な加害者だった。

彼の笑顔は親友の心を砕き、絶望の淵へと突き落とした。


俺はゆっくりと息を整え、最後の復讐を果たすために足を踏み入れる。

時間は刻々と過ぎ、外界との連絡は断たれたこの場所で、復讐は完成されなければならない。


藤原は薄暗い部屋で酒をあおっていた。

俺の影に気づくと、冷ややかな笑みを浮かべた。

「お前が来るとはな……」


俺は声を抑えながら言った。

「お前の罪は、必ず罰せられる」


藤原は嘲るように言い返した。

「俺が何をしたか、証拠はあるのか?」


俺はバッグから手製の銛を取り出す。

これはただの武器ではない。親友が最後に残した「正義」の象徴だ。

俺は冷静に、しかし決して躊躇せず藤原に向けて銛を放った。


彼の叫びは闇に溶け、静寂が戻る。


藤原亮介の冷たい視線が、やがて無に変わる瞬間を見届けた。

静かな廃墟に、彼の断末魔も、哀れな足掻きも、もう届かない。

その瞬間、胸の奥にこみ上げてくるものがあった。

怒り、憎しみ、それらを通り越した、冷たく硬質な決意――それが俺のすべてだった。


「これで終わった」

言葉にしなくとも、体中が知っていた。

長く暗い夜に火をつけた復讐劇は、今まさに幕を閉じたのだ。


しかし、心は晴れない。

勝利のはずなのに、どこか空虚で。

親友の笑顔も、遠慮がちだったその声も、消えることはない。

それは俺にとって、重すぎる記憶の棘。

胸の奥底で、静かに、しかし確実に痛み続けていた。


外からはかすかに、携帯電話の通知音が聞こえた。

誰かが通報したのだ。

これまでの平穏は、もう戻らない。

だが、振り返ることはできない。

一歩ずつ、冷たい夜の闇へと身を投じる。


逃走路は長く、孤独だった。

心の奥底で、復讐心はまだ燃え盛っている。

冷静な計算と狂気的な決意の狭間で揺れながら、俺は歩みを止めない。


この夜は、まだ終わっていないのだと知りながら。



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