第五章
冷たい夜風が廃墟の窓から吹き込み、俺の背筋を震わせる。
残るはあと二人。
計画通りに全てを終わらせなければ、復讐は完遂しない。
俺の中に渦巻く狂気は、決して消えることはない。
静かに、しかし確実に。
次の標的は斉藤直樹。
彼は大学時代、親友の心を何度も踏みにじった男だった。
暴力こそ控えめだったが、陰湿ないじめと悪質な嘲笑で彼女を追い詰めていた。
俺は彼の罪を決して忘れない。
斉藤の部屋は二階の端にある。
廃墟の薄暗い階段を上りながら、俺は静かに息を整える。
計画は緻密に練られている。
感情は一切排除し、復讐のためだけに動く。
ドアの前に立ち、拳を軽く叩く。
返事はない。
俺はそっとドアノブを回し、中へ滑り込んだ。
斉藤はソファに沈み込み、スマホをいじっていた。
俺の姿に気づくと、一瞬戸惑いの表情を浮かべたが、すぐに薄笑いを浮かべる。
「何だよ、お前……」
俺は声を殺しながら部屋を見回す。
近くにあったナイフを手に取り、彼の背後に回る。
静かに、しかし確実に。
「親友のことを思い出せ」と囁きながら、ナイフを彼の背中に深く突き刺す。
斉藤の叫び声は俺の心を揺さぶる。
だが、それもまた復讐の証明だ。
彼が苦しむ間もなく、俺は冷静にナイフを抜き取り、止血を確認する。
そして、息絶えた彼の体を慎重に床に倒す。
復讐は半分終わった。
残るは最後の一人。
時計の針は深夜を指している。
時間はない。
しかし、俺の心は冷静だ。
最後の標的へ向かう途中、俺はふと親友の面影を思い出す。
彼女の優しい笑顔、遠慮がちな声。
その全てが、今の俺の行動の理由だ。
廃墟の闇の中で、俺は静かに息を吐く。
復讐の夜は、終わりに近づいている。