第四章
廃墟の影が長く伸びる。
俺は次の標的の部屋へと足を運ぶ。目の前の壁にかかる薄汚れたポスターは、昔のサークルの思い出を無残にも映し出す。そんなものはもういらない。今、俺の胸の中にあるのはただひとつ、復讐の炎だけだ。
次の相手は松岡健太。
彼は大学時代、俺の親友に対して暴力だけでなく、嘲笑と侮辱を何度も浴びせていた。優しく遠慮がちだった彼女は、松岡の言葉の刃で心を何度も切り裂かれていたのだ。
俺はその場面を何度も想像し、胸を締め付けられた。
部屋の前に立ち、ゆっくりと息を吐く。静寂の中に潜む殺意が、俺の鼓動を早める。松岡の部屋の扉は、ほのかな明かりを漏らしている。中から聞こえる彼の話し声は、どこか軽薄で、油断に満ちている。
俺はドアを押し開けた。
「おい、なんだよ、こんな時間に」
松岡は驚きの色もなく、ただ少し眉を寄せるだけだった。俺はバッグから取り出したロープを握り締める。
「君の罪、覚えているか?」
俺の声は冷たく、平坦で、しかし背筋を凍らせるような威圧を帯びていた。
彼は軽く笑いながら答える。
「誰だよ、お前。そんなに怒ってるなら、警察にでも言えば?」
その無神経さに、俺の中の復讐心が燃え盛る。
しかし、今回は暴力だけでは終わらせない。
俺は彼の首にロープを巻きつけ、じわりと締め上げた。
松岡の抵抗は激しかったが、冷静に力を入れ続ける。彼の目が最後に見せた恐怖が、俺の胸を深く刺す。
「な、何だよ……勘弁してくれ……」
そんな言葉を聞きながら、俺は静かに呟いた。
「今度こそ、罪を償え」
そのまま息絶えた彼の体を床に倒す。
心の奥で、少しだけ、親友が安らぐのを感じた気がした。
次の標的はまだ二人いる。
夜は深まっている。時間は刻一刻と過ぎていく。
俺は廃墟の闇に溶け込みながら、次の復讐の舞台へと足を運んだ。
狂気と冷静、憎悪と計算が入り混じる復讐の夜はまだ終わらない。