第三章
廃墟の冷たい空気は、俺の胸を締め付けるようだった。
この場所に足を踏み入れるたび、過去の記憶がじわじわと蘇る。
俺の復讐の対象、3人目は田島剛。無神経で傲慢な男だった。
大学時代、彼は仲間内で「無敵の暴君」と呼ばれ、いじめの中心人物の一人だった。
人の痛みを知らず、何かにつけて弱い者を攻撃していた。
だが、その無頓着さが彼の最大の弱点でもあった。
田島は今回、サークルの後輩として入ってきた女性を狙っていた。
俺は彼女から証言を取り付けていた。目撃証言、暴言の録音、複数の証拠が揃っている。
俺の計画は周到だ。感情に流されることなく、淡々と遂行される。
部屋の扉の前で、俺は深呼吸をした。心臓は乱れていない。冷静だ。
ノックはしない。彼が部屋の中にいることは確実だ。外には誰もいない。
ドアをゆっくりと開けた。
田島はソファに腰掛け、スマホをいじっている。俺の姿に気づくと、眉をひそめた。
「おい、なんだよ。こんなとこで何してんだ?」
声に威圧感はなく、むしろ苛立ちが滲む。
俺は無言でバッグから鉄パイプを取り出した。握りしめる手に力が入る。
「話は聞いた。お前が何をしてきたか、すべて知っている」
田島は嘲笑した。
「はあ? お前誰だよ。勘違いも甚だしいな」
だが、俺には言葉は必要なかった。
計画通りに進めるだけだ。
鉄パイプを振りかぶり、俺は一撃を加えた。
鈍い音とともに、田島の身体が崩れ落ちる。
苦しみもがく彼の目は、最後まで俺を理解しなかった。
それが何よりも心をえぐった。
倒れた田島の周囲に散らばる紙切れ。
それは彼の言い訳と自己正当化の言葉のメモだった。
「俺は悪くない」「あいつらが先に……」
虚しい言葉の羅列。
俺は吐き捨てるように言った。
「お前の罪は、俺が代わりに背負う」
次の相手はすぐ近くだ。時間は限られている。
だが、俺の心は冷たい計算と熱い復讐心の狭間で揺れていた。