聖女になりました
降臨した聖女様の事情
生まれた時からほとんど病室で、病院の外は映像や写真で知っているだけで実感が湧かなかった。だから、今いる空間が死後の世界であるというのもぴんと来なかった。
ましてや、目の前にいる女性が人間ではなく【神】と呼ばれる存在であるなんて……。
――貴女に頼みたい事があります。貴女しかいないんです。
土下座でもしそうな勢いで、女神さまは頼みごとを言い出した。
――神の規定で名前を呼べないので失礼を承知で貴女呼びを続けますが、あまり、上下関係とか気にせずに話しやすい口調でお話ししてください。
私はこの女神さま曰く、聖女になれる魂らしく世界を救う力を持っているとのこと。
――魂というのはこのガラスのグラスだと思ってください。そこに善行を行えば行う程神格というものが溜まってきます。たとえて言えばこのグラスに水が注がれるようなもので、その神格……水を注ぎ続けていくと水が零れ出るようになります。こうやって零れるようになると魂は聖女。または聖人という神の代理人になるのですが……
目の前に実際にワイングラスを用意して水を注いで見せてくれる。うん、水が六〇のおいしい水のペットボトルなのは気にしないでおこう。
――貴女にはとある世界で魔王を倒す勇者と共に世界を救うお役目を伝えるつもりでした。本来なら
なんか、物騒な言葉だなと警戒するように見つめると。
――貴女と共に世界を救う勇者が……魔王の計略によって生まれなくなる可能性が生まれたのです
「えっ……!?」
どういうことだと意味が分からないでただ相槌を打つしかできないでいると。
――勇者になれる存在。その親に接触して子供が……勇者が生まれないように手を回しているのです
女神さまは詳しく説明してくれたことによると。
勇者の親になれるのは同じように神格が溜まっている魂を持つ両親で、その二人によってしか生まれない仕様なのだが、その母親に魔王の手のものが接触して子供が生めないように魔族特製の薬を飲ませて、その魂を歪めるように裏で手を回しているとの事。
――かの世界では父親の身分が高く、妻の座を手にしたい女性とか彼女を蹴落としたい輩が多かったから余計狙われやすかったのでしょう
と説明されて、
「じゃ、じゃあ……魔王を倒すと言うのは……」
私一人になるんじゃ………。
青ざめてしまうが無理もないだろう。魔王を倒すとか聖女とかいろんなことを言われて許容範囲ぎりぎりだったのに頼りになるはずの勇者が生まれなくなるなど……。
――そう。だから、予定よりも早くかの世界に降臨させて、勇者の両親を助けてほしいけど、今度は勇者が一人で魔王を倒すことになってしまうのよね~
どうしよう~と困っている。
「えっ? 何でですか?」
何か問題でもあるんでしょうか。と分からなくて首を傾げると。
――聖女。または聖人は同じ時に重複できないから貴女が生きている間は降臨させられないのです。だからと言って次の聖女が降臨するために貴方を殺すのもおかしな話ですし
今まさに病気で亡くなったばかりで次の人生をあっという間に消されたら許せないなと頷く。
「じゃ、じゃあ……私がどちらもやるとしたら……」
妥協案を告げてみると。
――年齢的に負担が大きいのではないでしょうか。……あっ、そうか
年齢と言われると確かにそうだと思っていたら何かに気付いた女神がポンッと手を叩き。
――一つだけいい方法がありますが、その方法を頼んでも大丈夫でしょうか?
と言われて教えてもらった方法はよくあるファンタジー物のお約束だったのですんなり受け入れられた。それどころか。
「ずっと病気で、病院にいたから憧れていたんですよっ!! 嬉しい!!」
願いを叶える何かが手に入ったようだと喜ぶと女神さまはずっと申し訳なさそうにしていた顔を安心したようにほころばせて、
――では、お願いします
「任せてください!!」
胸を張って叩くと力を入れ過ぎて咽てしまう。
――では、気を付けて
と送り込まれた世界は、中世ヨーロッパのような世界で、勇者の両親は王太子夫妻だった。
そして、魔族特製の薬という名の毒を盛られ続けて子供が出来ないようにさせられているのに、子供が出来ないと責められ続けて精神的に参っている女性がそこにいた。