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朝日

作者: 橘誠

朝日を拝むおばあちゃんのお話

彼女が目を醒ますと穏やかな朝日が窓から射し込んで来ていた。

光の中彼女は手を合わせた。そしてパンパンと柏手を打った。

ーーー今日も太陽を拝めた

彼女はほっと胸をなで下ろした。


「なにしてるんですか?」

いつから来ていたのだろう、ベッドの横に立っていた看護婦さんが話しかけてきた。

「あのね、今日もちゃんと目が醒めて、お日様が見れたから拝んでいたのよ」




これは私が看護師一年目の時の体験。

90歳を超え寝たきりになだった。口から食べられる量も少なくなり、彼女の栄養はほとんど点滴だよりだ。

認知症も進んでいた。未熟だった私にはその具代的な状態は把握出来なかった。自分の名前が言える、家族が分かるくらいは出来ていた方だった記憶している。

寝たきりと言われても一日中眠っているわけでは無い。

目が醒めている時には代わり映えのしない病室で何を思って過ぎされているのだろう。


夜勤の朝、彼女の言葉を聞いた時、私は「良かったですね」としか返せなかった。

きっと彼女は夜目を閉じるときに、自分は明日無事に目を醒ます事が出来るのだろうか···。

そんな不安の日々を過ごしていたのだろう。


寝たきりだから、認知症だから。何も感じない、分からない、考えてないなどという事は無い。


看護師として働いてきてそろそろ20年、それでも1年目に出会った彼女を忘れる事はない。そして、あの朝が私の原点である事は間違い無い。

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