知恵の輪からの
100均のオモチャも馬鹿にできませんよね。
100円ショップも馬鹿にしたものではないな。
と、思いながらみて歩いていた。食器、洗濯用品、洋裁小物類、文房具、工具、ガーデニング、アクセサリー、とにかくいろいろ...。
オモチャ。子供も大きくなってからみてないな。いや、そのわりにフィギュアは増えているか。あれは大人のオモチャか?エッチじゃないよ。
でも、このオモチャは幼児向きだよな。いまどきは小学生でも喜ばないかと、恐竜のソフビを見ていると、割りとけっこうな数のパズルが。
定番のジグソーパズル、小さなブロックを組み立てるやつ、段ボール?発泡スチロール?みたいな組み立てると家やクルマや飛行機になるやつとうとう。
知恵の輪。知恵の輪かぁ。なつかしいなぁ、昔やったわ。今風の?立体的なやつではなく、ただの針金を巻いたようなやつ。初級、中級、上級?よし、上級やったるか。と、思って上級を3種類とも買って帰ったのでした。
さて、やりますか。まずひとつめ。
これは、ここをくぐらして廻して、あれ?簡単にとけた?ヒントの紙をみてみれば、あぁこのわっかをとれればそれでいいのか。なんか簡単すぎるな。まぁ次やってみるか。
あれ?これも簡単?まぁ100均だからな。そう思ったのでしたが。
最後のが難関でした。わっかをはずせばいいのですが、これがなかなか。ヒントの紙をみてもだめ。なんでこれだけこんなに難しいの!
2時間経過。
すみませんでした。もう100均などと馬鹿にしません。と、あやまりつつ、youチューブを見るのでした。
次の日、また100均へ。また何かないかなぁとオモチャコーナーへ。
上級は全部やったし中級かな?とみてみれば、あれ?何か奥の方に。「超上級」
おぉ!これはやってみなければ。いそいそと買って家に帰ったのでした。
一般的に知恵の輪をとくとは、組合わさった一部分をはずすことを意味する。それが輪だったり、曲がった棒だったりするわけだが、この「超上級」は何だろう?
分からない?
これには「ヒント」がついていなかった。
入れ忘れか?とも思えるが、「超上級」ならそれもありかとも思える。
全体的な形は、螺旋をえがいた円盤状。それがふたつ組み合わさっている。
それをはずせばいいのだろうか?
ふたつの螺旋を組み合わせるか。いや、既にそうなっている。そもそもどの様にくっついているのかもよく分からない。よくよく見ると、めまいがしてくるような。
ガチャガチャとしているうちに、いつの間にか意識が飛んだような気がした。
はっと気がつくと、手のなかの知恵の輪が消えていた。何かカチャリと解けたような気がしたのだけれど。
あれと思い立ち上がり、あたりを見回すが、無い。ものすごく気になるけども、時計を見ると遅い時間。明日も仕事なので、寝ることにする。おやすみなさい。
目が覚める。いつものように、目覚まし時計の鳴る前に。勝った、と思いつつ新聞を取りに玄関へ。あれ、まだ来てない?休刊日だったかな?まぁいいかと、テレビをつける。ひとりぐらしも慣れたなぁ。
いつもの番組ではなく、臨時ニュースをやっていた。
時間は少しさかのぼります。午前2時、アマチュア天文家が天体観測をしています。新星、彗星、最初に発見できれば自分の名前がつくこともあります。その日は満月に近く、発見できる可能性は低いのですが、習慣になっています。ひさしぶりに月でも見るか。最初に望遠鏡でのぞいたのは月でした。クレーターを見て感動したのが天体観測のきっかけでした。月は明かりすぎるので、専用のレンズをつけて月に照準を合わせます。
満月を少し過ぎて、欠けた月の昼と夜との境目はクレーターがきれいに見えます。しばらく見ているとクレーターの一部が動くように見えます。いや、これは、何か物体が月の周りを回っている。それは夜の部分から昼の部分へ移動し、月にその影を落とします。地球から観測して影が見えるとは相当巨大な物体です。国立天文台へあわてて電話をします。
その日世界中の天文台は、ハッブル宇宙望遠鏡も含めて、月に向けられました。
臨時ニュースでは幾度となく月の望遠鏡での観測画像を流していた。その物体を仮に「月面飛翔体」と呼び映像から月の衛星軌道(地球から見れば孫衛星)を回っていると推測されるようだ。月の昼の面を横断している画像から、全長900メートル、幅80メートルの丸みを帯びた葉巻型。光の反射ぐあいから割とすべすべした表面で、あるいは金属かと思われるそうだ。
そのため、早速 宇宙船ではと大変な騒ぎとなっていた。今現在月の周りを回る人工衛星はなく、もっぱら地球からの観測のみとなっている。その物体からの電波等は観測されず、今は月の裏側を回っているそうだ。予想ではあと2時間後くらいにまた現れると予想されるそうだ。
「これは大変だな。あっ、仕事行く時間だな。」と、思っているとタイミングよくショートメールが。
なんか今日は仕事休みにするみたい。よかった。ゆっくりテレビ見よう。
「いやぁ、助かりました。本当にありがとう。」
なぜか、いきなり感謝されることに。
「どうなることかと思いましたが、あなた様のおかげです。」
いつのまにか、真っ白な空間にいて、誰かに頭?をさげられています。正確には誰?とも頭とも分からない?のですが、なんとなく。ここは夢かな?ただ感謝されていることは分かります。夢とはいえ、気分はいいね。
「この世界に流れ着いてから、なんとか帰ろうと何千通りもの手段をこうじてきたのですが、だめで、いよいよあきらめてきたところ、まさかあの方程式を解いてくれるとは...」
話を聞いてみると、ほとんど理解できない所も多いのですが、あの知恵の輪はこの世界から脱出するのに必要な、重要な方程式を現していたようで、知恵の輪に限らず、あらゆる方法で解法を求めていたそうです。それをどうやら自分が偶然にも解いたみたいで? 彼?は めでたく自分の世界に帰れるそうです。
「いや、なんといって感謝したらよいか!」
「いえいえ、たいしたこともしておりませんので、無事に帰れることになって良かったですね。どうぞお気をつけてお帰りください。」
よく分からないけど、機嫌のいいうちにお帰りいただいた方がいいように思って話を合わせる。こういうところが、小心者だなぁ。
「何か差し上げられれば。そうだ!この世界に流れ着いた時に使った緊急用のボートを差し上げます。私にはもう不用ですが、まだまだ使えますし、使わない時に放置しても自立型のAIが内蔵されてますから...」
長々とした説明をはしょると、そのボートは普段は亜空間に収容されていて、リンクされた持ち主の意志で、出し入れ自由だそうだ。AIによる自動操縦、メンテナンスもフリーで、燃料?もまだまだいっぱいで、なにもしなくてもあと百年くらいもつそうだ。
「でも危なくないですか?」
「安全基準は満たされてますから、誰が使っても大丈夫ですよ。」
某自動車メーカーのセールスマンのようだが、悪気はまったくないのがなんとなくわかるので、ありがたく貰うことにした。
そのあと、ボートとのリンクやら、持ち主としての登録やらして。
「あとはボートのAIに聞いてください。」と、言い残して、謎の彼?(あっ名前も聞かなかった)は何処かの世界に帰っていった。さようなら~お元気で~。
気がつくと自分の部屋。なんか疲れたな、すこし休もう。
その頃、某国では、緊急の会議が開かれていた。
「○○3号はどうだ?」
「すでに活動期限は過ぎていますが、短時間ならいけます。」
「そうか。では、軌道をあわせて、少しでも情報を集めろ。場合によっては接触したい。」
同じように宇宙技術を持つ大国では、さまざまな活動がとられていた。謎の月面飛翔体に対して。
起きると昼過ぎになっていた。思ったより時間が経っていた。
「そう言えば、臨時ニュースはどうなった?」
月面飛翔体は、いつのまにか「オウムアムアⅡ」と呼ばれていた。なんでも以前、異星人の偵察機の疑いがあった太陽系外から来た天体の名前にちなんだそうだ。物体は、月の北極から見て時計回りの周回軌道をとっており、約18時間かけて一周しているそうだ。今は地球から見える位置にあり、天文台からのリアルタイム映像が流されている。
「最大拡大映像から見ると、宇宙船に見えなくもないかな?」映像は、月面をバックに、物体はわずかに回転しているのか、キラキラと光を反射していた。
「いやぁ、まさかこんなに大きいとはなぁ」
謎の彼?からもらったボートに乗り込んだ。リンクとは、テレパシー的なもののようで、ようは携帯電話ですな、繋ごうとするとすぐにAIから返答があった。
「もしもし、初めまして。AIさんですか?」
「あっどうも、AIです。よろしくお願いいたします。」
思っていたよりも腰が低いAIさんでよかった。なんとなく機械音声の冷たい感じだとイヤだなと思っていたので、助かった。
その後の話し合いで、「AIさん」だと言いにくいので、船の名前の「アルデバラン」(僕がつけた、なんとなく)から、「アル」と呼ぶようにした。ボートより船の方がかっこいいよね。
「アル、船に乗りたいんだけど、どうしたらいいの?」
「では、転送します。」....はぃ?
次の瞬間、なんの衝撃もなしに僕は船の中にいた。
で、先ほどのセリフ。本当に大きい。今いるところはブリッジか?漁船の操縦席を想像していたのだけれど、はるかに大きい。僕の家がスッポリ入るくらい。もちろん豪邸じゃないけどね。これでも25年ローンやっと払い終わったんだ。
正面にスクリーン。特に空中に浮いているわけではない。ちょっと期待してしまった。
「何だろう?夜?」星が見える。きれいだけど。
「アル。ここはどこなの?日本近海じゃないよね。」今は午後4時くらいのはず、夜にはまだ早い。
「ここは...」
アルがなにか言っているが、耳にはいってはこなかった。夜空がわずかずつ動き、新たなものが目に入ってきた。
「あれ、地球だよな。」
とんでもないものを、貰ってしまったようだった。
おわり
できれば、続きも書きたいですよね。