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第15話


「へぇ、俺にそんな事があったのかぁ」

「ずいぶん他人事みたいな反応ね、無理もないけど」


 普通に信じられないけどロベリアの目を見る限り真実なんだろう。記憶もないからなんの実感もわかないけど。


「お金を持ってこれたらよかったんだけど……一文無しじゃ生きていけないわ」

「まぁまぁ、俺すごい魔法使ってたんだろ?モンスター倒しまくって金稼ぎすれば金なんてすぐに貯まるって!」

「使ってすぐに倒れちゃってたけど」

「えっ、燃費悪いの?」


 加減は出来ないのか、いや出来ないからこその高火力なんだろうな。それに俺の年齢で魔法使える時点でかなりの贅沢だし、いや……それでも融通は利いてほしい。


「ていうか荷物なしのガキ二人って野垂れ死ぬしかなくねーか」

「そうね」

「あー自由ってある意味不自由ー!」


 ギルドがどうたらって言うけど、そもそもそこに辿り着けるかすら怪しいことに気づいてしまった。ていうかこんな子供じみた計画によくアツくなれたものだ。

 別に後悔はないけど、ある意味呆れのような感情が湧き出てくる。


「そうだ、瞬間移動魔法とかあるだろ!やり方知ってるか!?」

「知ってるけど……出来るの?」

「出来るよ、だって炎出したんだろ!こうドーンって感じでさ!」


 あまりにも子供じみた物言いにロベリアも苦い顔を隠せていない。だがここでローテンションに振る舞うのは絶対に良くない。それだけは理解している。


「一度行った場所にしか行けないけど大丈夫なの?」

「大丈夫だろ。タビダチ王国には何回か行ってるしな」

「そうね、なら大丈夫……のはずだわ」


 はずって何?


 いやそもそも使ったことのない魔法をこんな状況で初めて使うという状況なら不安にもなるか。


「まず行きたい場所の風景をイメージして」

「あぁ、うん……」


 ダメだ、市のど真ん中の印象しか残っていない。ドレスを着た彼女がそんな場所にいたら絶対に困惑されるだろう。でも背に腹は代えられない、ここはもう黙っていよう。


「そして脚に力を込めて跳ぶ!」

「はいっ!!」


 思わずロベリアの声に対して反射的に跳んでしまった。その瞬間、目の前の光景が一瞬にして切り替わる。

 どうやら成功はしたらしい、したらしいけど人が大勢行き交う大通りのど真ん中だと、ボロボロの俺もドレスを身にまとったロベリアもとても浮いている。


「来れたな、無事に」

「……昼市がやってるということは私たちどんだけ無駄に歩いてたの?」

「わからん……」


 否、考えたくもない。しかしその後悔は魔法を素で使えたという喜びをかき消すほどに俺たちの心に暗雲として広がった。

 いや落ち込んでいても仕方がない。とりあえずこんな服装で普通に生活なんか出来っこないし、服屋にでも行って見繕ってもらおう。ちょうど近くに服屋もあるし。


「ロベリア、その服売ってとりあえず金手に入れよーぜ。いい生地使ってそうだし、結構いい値段にもなるだろ」

「結構汚れてるけど……まぁ大丈夫よね」

「大丈夫大丈夫!」

「ふーん……」


 根拠のない自信を振りまき続ける俺に冷たい視線が突き刺さってくる。

 ごめんって、たしかにポケットの中に最低限の小銭入れるとかそういう事ぐらいはしなきゃいけなかったって、自分でもじゅうぶん思ってるよ。


 謝罪もする間もなく彼女はさっさと服屋に入り、しばらくするといかにも平民ですというような服装でずかずかと店から出てきた。

 その歩き方は元お嬢様と説明されてもわからないぐらいにはやさぐれている。身分隠すにしてもそこまで徹底しなくてもいいんだけど……。


 チンピラ風に出てきたロベリアは店の扉の近くで待っていた俺に対し軽くなにか硬いものが入った小袋を投げ渡す。


「それ私たちの全財産だから」

「えーっと……何ブロンズぐらいですかね?」

「リンゴ10個ぶん」


 リンゴは一つ300ブロンズのはずだから……3000ブロンズか。買えるとしたらリンゴ10個ぐらい。

 っておい、こんな少ないわけないだろ!汚れてるにしても限度ってのがあるぞ!


「めっちゃ足元見られてない!?」

「店の中からあなたと一緒にいるのを見られてたみたいね。私たち相当汚れてたし、だとしても腹立たしいけど」

「うひー……」


 さっき機嫌悪そうに出てきたのは本当にイラついてたのか。それにしても足元見られすぎだろ、子ども二人組というのも足を引っ張ったか。


 早くも前途多難が確定した旅路に不安が隠せない。もう冒険しながら生きていくとかそんなぜいたく言わない。今は仕事が欲しい、何でもするからとにかく誰か仕事をくれ。


 悲痛な心の叫びは誰に届くのか、このときの俺はまだわからないでいた。

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